山行記録: 主峰赤岳を踏む・文三郎尾根から地蔵尾根

記録ID: 182639

全員に公開

積雪期ピークハント／縦走

八ヶ岳・蓼科

主峰赤岳を踏む・文三郎尾根から地蔵尾根

2012年04月14日(土) ～ 2012年04月15日(日)

山梨県長野県

onenoboru

体力度

1泊以上が適当

体力度について

GPS: 10:26
距離: 14.0km
登り: 1,280m
下り: 1,278m

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歩くペース

標準

1.0～1.1

ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

☆14日(初日)　
雨の中、身支度を調え赤岳山荘駐車場を9:10分出発→美濃戸山荘9:28
→北沢堰堤工事場10:47→赤岳鉱泉(泊り)12:08到着

☆15日(二日目)
赤岳鉱泉を7:07出発→中山峠7:45→行者小屋(デポ)7:56
→文三郎尾根→分岐9:46→赤岳山頂10:41→北峰10:58→
赤岳展望荘11:30→地蔵の頭11:49→地蔵尾根→行者小屋12:39
→南沢下山→美濃戸山荘14:18→赤岳山荘駐車場14:37戻る

天候	14日雨から雪 15日微風快晴
過去天気図（気象庁）	2012年04月の天気図
アクセス	利用交通機関：自家用車雨の自宅を6:10分出発。雨の八ヶ岳山荘に8:40分に着いた。冬期は乗り入れが難しい赤岳山荘間は雪も消えノーマルタイヤで乗り入れが可能ですが、所処ぬかるみがあり運転は慎重に願います。一泊の駐車料金は2千円です。アクセスを調べる my出発地登録
コース状況／危険箇所等	☆14日(初日) 　雨なので傘をさし登ろうと思ったが、面倒なのでジャケットで歩き始める。美濃戸山荘から北沢の林道に進。林道もすっかり雪が解け春の気配を感じる。高度を上げるとみぞれ交じりに変わる。出来るだけ汗をかかずに登って来たのだが、雨と汗で下着が冷たく感じた。　北沢堰堤工事場に着いた。此処で休憩を入れたかったが、休むと寒いので橋を渡り鉱泉を目指す。間もなく雪に変わった。辺りはすっかり雪景色。1月の景色と大きく変わらぬが、今回はテントを背負っていない分楽に歩けた。それに1月の寒さと比較にならない程今日は暖かい。　やがてぼんやりとアイスキャンデー(人工の氷爆)が見えてきた。氷瀑も厳冬期と少し変わって、何だか迫力が無い様に思えた。鉱泉玄関で受付(一泊夕食・朝食付きで九千円)を済ませ大部屋に通された。3～4名のバックはあるが誰も居ないことを幸い濡れた下着を着替えた。ジャケット、グローブ等は乾燥室へ持ち込んだ。部屋はストーブが焚かれ暖かい。暫く布団に潜り冷えた体を温めた。雨のテント泊は大変だろうと思った。一月にテン泊でお世話になったが、夜は寒くて眠れなかったことを思い出す。　夕食は18時。待ち遠しかった。名物のステーキは切り身が厚く実に旨かった。明日の赤岳アタックのエネルギー源になるだろう。消灯は21時。部屋の電気は消えるが、廊下に出ると非常灯が灯りライトは不要だ。トイレも綺麗で暖房便座なので快適に用をたすことが出来る。手洗いの水は出ないが、水のいらない消毒液が備え付けてあるので安心です。大部屋の泊まり客は総勢15名程。皆さん常識ある登山者で静かな雰囲気で過ごせた。寝具は分厚い毛布と掛け布団寒さは全く感じない。お陰で快適な睡眠が取れた。 ☆15日(二日目)赤岳アタック　5時目が覚めた。昨日は朝から夕方までは雪が降っていたが、朝方急速に回復したのか廊下に出ると窓越しに月が青白い光を放って輝いていた。今日の登山を歓迎するかのように。6名の方が身支度を済ませ早々に部屋を後にした。　6時30分朝食の時間だ。夕食と違い皆早々と済ませ部屋を後にした。私も今回はピークを踏む目的で宿泊した。何としてもピークを踏みたい。気合いを入れて身支度を調えた。7:07分鉱泉を後にした。気温はマイナス6度それ程寒さを感じない。昨夜のステーキのお陰かな・・・・先ずは、中山峠から行者小屋でバックを軽くし小屋にデポ。周りを見渡すと結構デポしてあるのに驚いた。　サブバックを背負い惑わず文三郎尾根を目指す。昨日降った新雪が八ヶ岳連峰を一層白く輝かせていた。大迫力で迫る赤岳に威圧感さえ覚えた。あそこの峰に辿り着くのか不安になった。　やがて文三郎尾根に取り付く。新雪は目測で15～20センチ。早出の方のトレースが何処までも延びる。ありがたい。申し訳ないがこの年でのラッセルは辛い。樹林帯を抜けると斜度が増す。一歩々ゆっくり登る。クサリが僅か出ている場所を登り上げると斜度が緩やかになった。此処で一呼吸入れる。眼下に行者小屋が小さく見えた。前方に目を転じれば分岐が目前に迫る。太陽が照りつけ斜面が異様な光を放っている。風が無いのがありがたい。　一息入れ更に高度を上げると雪は堅く締まり表面が、ウインドクラストしアイゼンがザクザクと音を立て確実に雪の表面に刺さり気持ち良い。直登すること30mから50m。やがて分岐に向かって長いトラバースの場所に着く。此処で弱気が出た。足が攣ったらどうしようと・・・・戻ろうかと悩んだ。そこに二人組が登って来た。訳を話すと此処まで来て戻るのは勿体ない、良かったら私がサポートしますよと言った。ありがたくお言葉に甘えた。細い(5㍉位)がアンザイレンしましょうと言って私の体にザイルを巻き付けた(ヨボヨボの老人に見えたのかな)。ザイルは不要と思ったが、ありがたく行為を受けた。　準備を整え分岐に向かってトラバース開始。此処は風当たりが強く雪が飛ばされ少ない。だが、斜度も緩く思った以上に歩き易い。それに風が無いのが何よりも助かる。難なく分岐に着いてひと休み。上から数名の登山者が下って来た。部屋を共にした方の顔も見えた。　呼吸を整え更に高度を上げると今度は雪が多くなった。気温が高いのか雪が腐りアイゼンの効きが悪く滑りやすい。体力を消耗する場所だ。数名の下山者はザイルを頼りに下ってきた。クサリの頭も僅かに出ているが、捕まれる状態では無い。　下山者をやり過ごし更に高度を上げるといよいよ核心部に突入。ルンゼ状の奥に竜頭峰の道標が見えると更に斜度が増す。此処は雪が比較的締まりピッケルとキックステップで高度を稼ぐ事が出来た。　頂上直下。数名の下山者がロープを頼りに下って来た(女性)。暫く待たされたが、リーダーから「時間が掛かるから先に登って下さい」と声がした。すかさずキックステップで登ると、山頂が目に飛び込んできた。ヤッター念願の山頂です。感無量。思わずサポートしてくれたSさんと後方のOさんに握手を交わした。文三郎尾根で二人に勇気づけられなければこの感動はなかった。本当にありがとう。どうしても雪のある時期赤岳山頂を踏みたかった。欲を言えば厳冬期に。だが、今日は厳冬期と変わらぬ雪の白さに満足だ。　暖かく無風の山頂で約15分絶景を楽しんだ。足元を覗けば文三郎尾根が一望だ。あそこから一歩一歩登って来たのだと思うと何とも言えない気分だ。暫くして山頂を後にした。数分で北峰、頂上山荘を通過し眼下の赤岳展望荘迄下り始める。途中、風の強い時はかなり神経を使う所だ。一歩一歩足元を確認しながら下る。気温が高いのか雪が少し腐り始めている場所がある。安全な所まで下り三人で滑落停止の練習を繰り返した。僅かな時間だが実に楽しかった。　やがて赤岳展望荘に着いた。発電用の風車に付着していたエビの尻尾はすっかり溶けていた。ひと休みし地蔵峠に向かうと4月の暖かい陽射しを浴びお地蔵様が鎮座していた。手を合わせ下山の安全祈願した。　いよいよ核心部のナイフリッジだが、距離が短いのに少し気が抜けた。だが、厳冬期、最初に付けた足跡は相当な勇気がいたに違いない。ナイフリッジを過ぎると所処クサリの頭が出ている斜面になった。此処もピッケルとアイゼンを駆使し一歩々慎重に下るが、アイゼンが利かない。先行の登山者が数メートル流される。その先のグループでも一人数メートル流された。冬山の基本が身についているか試される場所だ。　少し下ると今度はハシゴが雪に埋めれている。一月の時はむき出しのハシゴを登る事ができた。雪に埋もれたハシゴの上を下る。此処も傾斜がきつい。一歩々慎重だ。やがて少し斜度が緩むと尻セードで下り楽しんだ。　更に下ると最後のハシゴがある。此処も雪に埋まり下れない。ハシゴの脇に踏み跡がある。その踏み跡を頼りに慎重に下ると緊張も解けた。ホッとして樹林帯の中を暫く下る。やがて行者小屋に着いた。此処でサポートしてくれた二人と別れた。当然厚い御礼を言うと「当たり前のことをしたまでの事です」軽く流された。実に頼もしい方だ。本当にありがとうございました。又、どこかの山で会いましょう。私は小屋にデポしたバックを背負い赤岳に別れを告げ南沢ルートで戻る。南沢ルート標高2000m付近の樹林帯は凍結している。アイゼンを履くことをお勧めします。