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Yamareco

記録ID: 5092373
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
塩見・赤石・聖

【南ア】冬の伝付峠越えから蝙蝠尾根へ(峰山尾根下山)

2023年01月07日(土) 〜 2023年01月09日(月)
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GPS
56:00
距離
41.6km
登り
4,463m
下り
4,478m

コースタイム

1日目
山行
8:20
休憩
0:00
合計
8:20
10:00
420
駐車地
17:00
17:00
80
2日目
山行
16:30
休憩
0:00
合計
16:30
3:30
3:30
280
8:10
8:10
150
10:40
10:40
100
12:20
12:20
190
P2845手前まで稜線をぶらぶら
15:30
15:30
180
18:30
18:30
30
3日目
山行
10:10
休憩
0:00
合計
10:10
6:20
140
8:40
8:40
190
11:50
11:50
180
14:50
14:50
60
導水管への下降点
15:50
15:50
40
田代川第二発電所
16:30
駐車地
・ 2日目は,二軒小屋から蝙蝠岳登山口まで1時間かかっていますが,携行していた地図が古かったことによるルートミス(橋が消失していた)によるもので,通常は20〜30分程度です。
・ また,2日目は16時間もかかってますが,これは蝙蝠岳周辺の稜線でぶらぶらしていたためで,単に二軒小屋〜蝙蝠岳を往復するだけなら12〜13時間ほど。ただし,ラッセル深さにより大きく変動します。
天候 3日間とも快晴
過去天気図(気象庁) 2023年01月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
山梨県道37号線(南アルプス公園線)の小之島トンネル北口(新倉断層の駐車場あり)から分岐する内河内川沿いの林道に入り,2kmほど進んだところで出てくる通行止めゲート手前のヘアピンの路肩に駐車。林道はリニア工事の関係でこの時期でも頻繁に工事車両が出入りしているため,邪魔にならないように注意。
コース状況/
危険箇所等
<積雪状況(あくまで今回の山行時点)>
・ 伝付峠越えの八丁峠(内河内のコル)を越えるまではほとんど積雪はなく,それ以降は伝付峠トップで50cmほど,二軒小屋で20cmほど,蝙蝠尾根の徳右衛門岳付近で50〜100cmほど。
・ 蝙蝠尾根の2300m付近までは約1名分の古いトレースがあったためツボ足で進めたが,それ以降はトレースが消え膝以上の沈み込みとなったため,スノーシューを履いた。P2721手前で森林限界を超えてからは強風で雪が飛ばされて地面が出ている箇所が多いが,雪がある箇所は意外にクラストしておらず,沈み込みが激しかった(森林限界に出てすぐにスノーシューをデポしてしまったため,ちょっと後悔しました)。

<ルートの状況>
・ 伝付峠越えの道は,特に峠の東側の内河内川沿いの道に関しては全体的に荒廃が進んでいる印象(西側の二軒小屋側はきれいです)。特に,八丁峠(内河内のコル)を越える箇所がかなり悪く,両側が切れ落ちた急峻な尾根に獣道のような薄い踏み跡が消え入るように続き,崩壊気味のザレ場も出てきて,少しでもスリップしたらアウトな場面が連続する。マーキングやフィックスロープは頻繁にあるのだが,それでも危険なことには変わりはなく,一般登山道というよりはバリエーションルートという認識で歩いたほうが丁度良いように思う。特に,今の時期は落ち葉や積雪・凍結で大変滑りやすいので注意。
・ 二軒小屋は今年度は営業しておらず,冬季小屋としての開放もしていない。テントも不可との張り紙があった(そのため,今回は軒先だけお借りしてゴロ寝しました。トイレは持ち帰り処分。)。水はホースから常時水が出ており,そこから汲める(めっちゃ氷が発達してますが)。なお,中央新幹線工事の関係者がこの時期でも隣接するプレハブ建物に滞在していて夜間も煌々と灯りがついており,雪深い無人境の二軒小屋を想像していた自分としては少なからず驚かされた。
・ 蝙蝠尾根は,蝙蝠岳までであれば特に大きな危険個所はない。出だしの急登で若干ルートがわかりにくい(マーキングはあるので迷うことはないと思うが)のと,尾根の下部でちょっとだけ痩せている箇所があり凍結もしているのでスリップ注意なくらい。なお,蝙蝠岳を越えて塩見岳まで進もうとすると,北俣岳から主稜線までの間が痩せた岩稜となっており,冬季はナイフリッジとなるそうです。
・ なお,二軒小屋から蝙蝠尾根取り付き(蝙蝠岳登山口)までの道は,古い地図やガイドブックからかなり様変わりしてしまっている。必ず最新の地図やガイドブックを参照のこと(古い地図やガイドブックには,大井川右岸の千枚岳登山口がある側に上流に向けて林道が伸びており,橋が架かっていて蝙蝠岳登山口に行けるように記載されているが,実際はこの橋は既に消失している。大井川左岸の道を行ったほうが良いです。)
内河内川沿いの林道は2kmほど進んだ地点に写真の車止めがあり,その手前のヘアピン路肩に車を停めた。真冬だというのに,林道は東電や中央新幹線工事の関係車両が頻繁に行き来する。
内河内川沿いの林道は2kmほど進んだ地点に写真の車止めがあり,その手前のヘアピン路肩に車を停めた。真冬だというのに,林道は東電や中央新幹線工事の関係車両が頻繁に行き来する。
路傍に佇む石仏に山行の安全を祈る。さすが伝付峠,歴史の深さを感じさせる(この石仏自体は昭和の銘があり,それほど古いものではないが)。
路傍に佇む石仏に山行の安全を祈る。さすが伝付峠,歴史の深さを感じさせる(この石仏自体は昭和の銘があり,それほど古いものではないが)。
田代川第二発電所を過ぎたあたりで林道が途切れ,堰堤が連続するガレた沢沿いに歩いて行く。最近は北陸の山ばかり歩いていたので,真冬なのに取りつきから雪がないのが不思議な感じがする。さすが南国の南アルプス。何となく晩秋のような雰囲気の中,頻繁に現れるピンクのマーキングを追っていく。
田代川第二発電所を過ぎたあたりで林道が途切れ,堰堤が連続するガレた沢沿いに歩いて行く。最近は北陸の山ばかり歩いていたので,真冬なのに取りつきから雪がないのが不思議な感じがする。さすが南国の南アルプス。何となく晩秋のような雰囲気の中,頻繁に現れるピンクのマーキングを追っていく。
雪が少ないとは言っても冷え込みは厳しく(出発時点で零下5℃),沢の流れは硬く凍り付き始めており,渡渉の際は気を遣う。
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雪が少ないとは言っても冷え込みは厳しく(出発時点で零下5℃),沢の流れは硬く凍り付き始めており,渡渉の際は気を遣う。
そして,道は沢から離れ,右手の小尾根に取りつく。八丁峠(内河内のコル)の登りだ。初めはちょっと急だな,くらいの軽い気持ちで登っていったのだが…
そして,道は沢から離れ,右手の小尾根に取りつく。八丁峠(内河内のコル)の登りだ。初めはちょっと急だな,くらいの軽い気持ちで登っていったのだが…
登るにつれて小尾根は急激に険しさを増し,気が付いたら左右が切れ落ち,足元はザレザレのやや危険な状況となっていた。悪路だとは聞いていたが,まさかこれほどまでに危うい道だと思っていなかったので意表を突かれた形。固定ロープは張ってあるものの,沢登りの高巻き道のような悪いトラバースが連続する。
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登るにつれて小尾根は急激に険しさを増し,気が付いたら左右が切れ落ち,足元はザレザレのやや危険な状況となっていた。悪路だとは聞いていたが,まさかこれほどまでに危うい道だと思っていなかったので意表を突かれた形。固定ロープは張ってあるものの,沢登りの高巻き道のような悪いトラバースが連続する。
軽快な夏の装備だったらそうでもなかっただろうが,冬の泊まり装備を背負い,足元は鈍重な冬靴を履いた状態ではあまり辿りたくない道だ。写真のように,あと一発崩れたら完全に通行不能になりそうな崩壊箇所もある。ここは本当に,かつて多くの人々が行き交った古い峠道なのか? 疑問を感じつつも慎重に登っていく。
軽快な夏の装備だったらそうでもなかっただろうが,冬の泊まり装備を背負い,足元は鈍重な冬靴を履いた状態ではあまり辿りたくない道だ。写真のように,あと一発崩れたら完全に通行不能になりそうな崩壊箇所もある。ここは本当に,かつて多くの人々が行き交った古い峠道なのか? 疑問を感じつつも慎重に登っていく。
八丁峠(内河内のコル)に登り上げた。ここから再び道は北側斜面をトラバース気味に下り,内河内川へと降りていく。このあたりから,やっと積雪が目立ち始める。
八丁峠(内河内のコル)に登り上げた。ここから再び道は北側斜面をトラバース気味に下り,内河内川へと降りていく。このあたりから,やっと積雪が目立ち始める。
この辺りの道は,内河内川の両岸の岩壁をうまい具合に開削して作られた水平歩道で,さすが過去に伊那街道として整備されたこともある古峠の貫禄がにじみ出ている。やっと古道の雰囲気を感じることができ,楽しみながら歩ける。
この辺りの道は,内河内川の両岸の岩壁をうまい具合に開削して作られた水平歩道で,さすが過去に伊那街道として整備されたこともある古峠の貫禄がにじみ出ている。やっと古道の雰囲気を感じることができ,楽しみながら歩ける。
といっても,薄い積雪に加え,斜面から流れ落ちる水は悉く氷瀑と化してところどころで道を覆っており,下は内河内川の谷底まで切れ落ちているので,通過は慎重にならざるを得ない。一時的にアイゼンを履かされた箇所もあった。
といっても,薄い積雪に加え,斜面から流れ落ちる水は悉く氷瀑と化してところどころで道を覆っており,下は内河内川の谷底まで切れ落ちているので,通過は慎重にならざるを得ない。一時的にアイゼンを履かされた箇所もあった。
こんな風に崩壊間際の桟道が多く現れる。このほかにも斜面が崩壊して道が消えている箇所もあり,慎重に通過。
こんな風に崩壊間際の桟道が多く現れる。このほかにも斜面が崩壊して道が消えている箇所もあり,慎重に通過。
眼下の内河内川に落ちる連瀑は,滝壺に蒼氷が盛り上がって氷瀑と化しつつあり,凄愴だが美しい眺めだ。
眼下の内河内川に落ちる連瀑は,滝壺に蒼氷が盛り上がって氷瀑と化しつつあり,凄愴だが美しい眺めだ。
東電の保利沢小屋を通過。開けた場所なので幕営に最適。小屋自体は施錠されていて利用できない。
東電の保利沢小屋を通過。開けた場所なので幕営に最適。小屋自体は施錠されていて利用できない。
ようやく道は内河内川を離れ,伝付峠に向けて急斜面を這い上がっていく。カラマツ林の中に続くゆったりとしたジグザグ道に,古い峠道のしっとりした情緒を感じる。(古いトレースが一筋だけ残っていた。この時期に通る人はいないと思っていたのでちょっとびっくり。)
ようやく道は内河内川を離れ,伝付峠に向けて急斜面を這い上がっていく。カラマツ林の中に続くゆったりとしたジグザグ道に,古い峠道のしっとりした情緒を感じる。(古いトレースが一筋だけ残っていた。この時期に通る人はいないと思っていたのでちょっとびっくり。)
峠付近から見る,夕映えの富士山。
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峠付近から見る,夕映えの富士山。
伝付峠着。昔の山岳書ではよく目にしていた峠だったので,感無量。しかし,稜線には林道が走っており,意外に開けた印象。
伝付峠着。昔の山岳書ではよく目にしていた峠だったので,感無量。しかし,稜線には林道が走っており,意外に開けた印象。
東京電力関係者の銘がある「山神」の小さな祠。古くから発電所との関係が深い峠だったようだ。
東京電力関係者の銘がある「山神」の小さな祠。古くから発電所との関係が深い峠だったようだ。
昨夜は深夜まで仕事があり,出発が遅かったので,峠に着いた時点で既に夕闇が迫っている。急ぎ足で雪に埋もれた稜線林道を少し南へ辿ったあと,二軒小屋に向けて西側斜面を下っていく。
昨夜は深夜まで仕事があり,出発が遅かったので,峠に着いた時点で既に夕闇が迫っている。急ぎ足で雪に埋もれた稜線林道を少し南へ辿ったあと,二軒小屋に向けて西側斜面を下っていく。
ツガやトウヒの影絵の間から,荒川三山や赤石岳の白い峰々が残照に輝いているのが眺められた。
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ツガやトウヒの影絵の間から,荒川三山や赤石岳の白い峰々が残照に輝いているのが眺められた。
夕闇の峠道をヘッデン頼りに下り(積雪はそれほどでもなく道形が浮き出ており,1名分の古いトレースが残っていたので困難ではなかった),二軒小屋に到着。って,あれ? 灯りがついてる!
夕闇の峠道をヘッデン頼りに下り(積雪はそれほどでもなく道形が浮き出ており,1名分の古いトレースが残っていたので困難ではなかった),二軒小屋に到着。って,あれ? 灯りがついてる!
灯りがついていたのは,二軒小屋自体ではなく,隣接する中央新幹線工事関係の事務所でした。雪に埋もれて人っ子一人いない二軒小屋を楽しみにしていたので,真冬でも工事関係者が常駐しているのには驚いた(しかも大井川沿いの林道は除雪されていて,車まで入ってきてる!)。二軒小屋は冬季小屋の開放もしておらず,テント禁止の張り紙もあったため,軒先だけ拝借してシュラフでゴロ寝した(もちろん,テント自体は携行しているが)。厳冬期とは思えないほど無風なうえ,ラジオの予報でも天候が悪化する懸念は全くないので,星空を眺めながら安らかに眠りに落ちた。
灯りがついていたのは,二軒小屋自体ではなく,隣接する中央新幹線工事関係の事務所でした。雪に埋もれて人っ子一人いない二軒小屋を楽しみにしていたので,真冬でも工事関係者が常駐しているのには驚いた(しかも大井川沿いの林道は除雪されていて,車まで入ってきてる!)。二軒小屋は冬季小屋の開放もしておらず,テント禁止の張り紙もあったため,軒先だけ拝借してシュラフでゴロ寝した(もちろん,テント自体は携行しているが)。厳冬期とは思えないほど無風なうえ,ラジオの予報でも天候が悪化する懸念は全くないので,星空を眺めながら安らかに眠りに落ちた。
そして安らかに寝入りすぎて,予定より1時間寝坊(冬山ではよく寝坊する)。午前1時起床,2時半出発。しかも参照していた地形図が一世代古かったようで,渡る予定の橋が消失していたりして痛恨の小一時間ロス。写真は千枚岳の登山口に向かう吊橋。この橋を渡った時点で道を間違えてる…。
そして安らかに寝入りすぎて,予定より1時間寝坊(冬山ではよく寝坊する)。午前1時起床,2時半出発。しかも参照していた地形図が一世代古かったようで,渡る予定の橋が消失していたりして痛恨の小一時間ロス。写真は千枚岳の登山口に向かう吊橋。この橋を渡った時点で道を間違えてる…。
蝙蝠岳登山口着。積雪は30cm程度のため,ほぼ夏道通りに登っていく。真冬の蝙蝠尾根など誰も登ってないだろうと思っていたが,お正月に登られた方がいたようで,最初のパートは約1名分のトレースあり。ちょっとがっかり…いやいや,トレースありがとうございます。
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蝙蝠岳登山口着。積雪は30cm程度のため,ほぼ夏道通りに登っていく。真冬の蝙蝠尾根など誰も登ってないだろうと思っていたが,お正月に登られた方がいたようで,最初のパートは約1名分のトレースあり。ちょっとがっかり…いやいや,トレースありがとうございます。
深いモミやトウヒの森を黙々と登っていく。北陸のようなブナの純林がなく,針葉樹と混交して生えているのが南アルプスらしいところ。長い尾根の途中で朝日を迎えた。
深いモミやトウヒの森を黙々と登っていく。北陸のようなブナの純林がなく,針葉樹と混交して生えているのが南アルプスらしいところ。長い尾根の途中で朝日を迎えた。
徳右衛門岳を通過。深い樹林に囲まれ,展望のない静かな山頂。徳右衛門岳の手前でトレースが消えて雪も深くなったため,スノーシューを履いた。
徳右衛門岳を通過。深い樹林に囲まれ,展望のない静かな山頂。徳右衛門岳の手前でトレースが消えて雪も深くなったため,スノーシューを履いた。
しかし,とにかく長い尾根だ。そして樹林帯が長い。標高2500mを超えてもまだ樹林帯。北陸の山だったら,とうに森林限界を超えている高度だ。でもこの黒々としたモミやトウヒ,ツガの美しい森が,南アルプスらしくて何とも言えず良い。
しかし,とにかく長い尾根だ。そして樹林帯が長い。標高2500mを超えてもまだ樹林帯。北陸の山だったら,とうに森林限界を超えている高度だ。でもこの黒々としたモミやトウヒ,ツガの美しい森が,南アルプスらしくて何とも言えず良い。
P2721手前で,やっとダケカンバの疎林となり,深まる新雪をスノーシューで蹴散らしながら喘ぎ登っていく。
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P2721手前で,やっとダケカンバの疎林となり,深まる新雪をスノーシューで蹴散らしながら喘ぎ登っていく。
そして,やっと森林限界に到達。蝙蝠岳の大きな山体が見えた。雪は強風に飛ばされるためか,特に西側はあまり積もっていない。ていうか,昨日もそうだったけど,厳冬期なのに,こんなに晴れちゃっていいの? ってくらいの快晴。さすが太平洋側の南アルプス。
そして,やっと森林限界に到達。蝙蝠岳の大きな山体が見えた。雪は強風に飛ばされるためか,特に西側はあまり積もっていない。ていうか,昨日もそうだったけど,厳冬期なのに,こんなに晴れちゃっていいの? ってくらいの快晴。さすが太平洋側の南アルプス。
南西に峩々とした荒川三山。
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南西に峩々とした荒川三山。
西方に小河内岳や烏帽子岳にかけての雪稜。
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西方に小河内岳や烏帽子岳にかけての雪稜。
そして,来し方を振り返れば,富士山が大きく浮かぶ。
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そして,来し方を振り返れば,富士山が大きく浮かぶ。
伝付峠を越えて,はるばる来たもんだ。残念ながら,伝付峠は山影に隠れて見切れてますが…。
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伝付峠を越えて,はるばる来たもんだ。残念ながら,伝付峠は山影に隠れて見切れてますが…。
大きな風景の中を,蝙蝠岳へ向かう。雪が飛ばされている箇所が多かったため,スノーシューは森林限界に出てから早々にデポした(このあと,ちょっと後悔…)。
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大きな風景の中を,蝙蝠岳へ向かう。雪が飛ばされている箇所が多かったため,スノーシューは森林限界に出てから早々にデポした(このあと,ちょっと後悔…)。
もうすぐ山頂。
蝙蝠岳山頂に到着。山好きの親戚が「南アルプスで唯一登り残した」と言っていたのを聞いてから,ずっと来てみたかった山頂だったので,感慨深い。背景は富士山。
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蝙蝠岳山頂に到着。山好きの親戚が「南アルプスで唯一登り残した」と言っていたのを聞いてから,ずっと来てみたかった山頂だったので,感慨深い。背景は富士山。
堂々たる荒川三山が良く見える。
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堂々たる荒川三山が良く見える。
そして,足元からなおも延々と続く蝙蝠尾根の先には,
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そして,足元からなおも延々と続く蝙蝠尾根の先には,
ピラミダルな塩見岳が立派に聳えている。
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ピラミダルな塩見岳が立派に聳えている。
蝙蝠岳は静かで素晴らしい展望台だ。お気に入りの山となりました。
蝙蝠岳は静かで素晴らしい展望台だ。お気に入りの山となりました。
今回の目的地はあくまで蝙蝠岳で,塩見岳まで行く予定はなかった(塩見岳を目指すなら,一日目にもっと早出して蝙蝠尾根の途中まで入る必要があるだろう)のだが,目の前の絶景尾根を全く歩かないのももったいない。時間の許す限りぶらぶらすることにした。
今回の目的地はあくまで蝙蝠岳で,塩見岳まで行く予定はなかった(塩見岳を目指すなら,一日目にもっと早出して蝙蝠尾根の途中まで入る必要があるだろう)のだが,目の前の絶景尾根を全く歩かないのももったいない。時間の許す限りぶらぶらすることにした。
塩見岳にかけての険しくも美しい雪稜を眺めながら稜線漫歩。幸せな時間だ。
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塩見岳にかけての険しくも美しい雪稜を眺めながら稜線漫歩。幸せな時間だ。
ただ,途中の鞍部は雪が深く,スノーシューをデポしてきてしまったので,モモまでの踏み抜きが多発して難渋した。まだ積雪が不安定なうえ,クラストも進んでいないようだ。
ただ,途中の鞍部は雪が深く,スノーシューをデポしてきてしまったので,モモまでの踏み抜きが多発して難渋した。まだ積雪が不安定なうえ,クラストも進んでいないようだ。
塩見岳までの稜線で核心部になると思われる,北俣岳の先の岩稜地帯のアップ。この時期は積雪が中途半端で,逆にしっかり積もっているより難しいかもしれない。
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塩見岳までの稜線で核心部になると思われる,北俣岳の先の岩稜地帯のアップ。この時期は積雪が中途半端で,逆にしっかり積もっているより難しいかもしれない。
このあたりまでにしますか。美しい山岳風景を眺めながらお昼ご飯を食べ,雪の上に露出した岩の上で少しウトウトしたりして,時間の許す限りゆっくりした。
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このあたりまでにしますか。美しい山岳風景を眺めながらお昼ご飯を食べ,雪の上に露出した岩の上で少しウトウトしたりして,時間の許す限りゆっくりした。
南方には相変わらず立派な荒川三山。右肩に覗いているのは赤石岳かな?
南方には相変わらず立派な荒川三山。右肩に覗いているのは赤石岳かな?
さあ,戻ろう。中空に浮かぶ富士山を眺めながら,雪稜を引き返す。
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さあ,戻ろう。中空に浮かぶ富士山を眺めながら,雪稜を引き返す。
眼下に延々と連なる黒々とした蝙蝠尾根。帰路は自分のトレースを忠実に引き返した。
眼下に延々と連なる黒々とした蝙蝠尾根。帰路は自分のトレースを忠実に引き返した。
翌朝。2夜にわたって軒下をお借りした二軒小屋ともお別れ。朝の定番のお茶漬けをすすった後,少し軽くなったザックを背負って小屋を後にした。
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翌朝。2夜にわたって軒下をお借りした二軒小屋ともお別れ。朝の定番のお茶漬けをすすった後,少し軽くなったザックを背負って小屋を後にした。
再び伝付峠に向けて,つづら折れを登っていく。荒廃気味の東側斜面の道に対して,西側の二軒小屋側の道は状態が良い印象。大きなモミの木の間を抜けていく。
再び伝付峠に向けて,つづら折れを登っていく。荒廃気味の東側斜面の道に対して,西側の二軒小屋側の道は状態が良い印象。大きなモミの木の間を抜けていく。
深いモミやトウヒの森が暗く通奏低音を奏でる峠道を,黙々と登り返していく。
深いモミやトウヒの森が暗く通奏低音を奏でる峠道を,黙々と登り返していく。
再び伝付峠に立つ。この峠ともお別れだ。
再び伝付峠に立つ。この峠ともお別れだ。
峠の石碑。峠の標高や各方面の距離が彫りつけられており,古い道標のようだ。
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峠の石碑。峠の標高や各方面の距離が彫りつけられており,古い道標のようだ。
峠からの富士山の眺めも見納め。しかし,結局3日間とも快晴だったなぁ。真冬なのにこんなに晴れていいのだろうか…。
峠からの富士山の眺めも見納め。しかし,結局3日間とも快晴だったなぁ。真冬なのにこんなに晴れていいのだろうか…。
大井川奥山の真白き山々よ,さようなら。
大井川奥山の真白き山々よ,さようなら。
下山は,単純なピストンは面白くないので,内河内川沿いの峠道には下らず,保利沢山(P2379.8m)経由で峰山尾根を下ることにした。稜線西側を巻くように付いている廃林道を辿っていく。トレースはなく,スノーシューを履く。
下山は,単純なピストンは面白くないので,内河内川沿いの峠道には下らず,保利沢山(P2379.8m)経由で峰山尾根を下ることにした。稜線西側を巻くように付いている廃林道を辿っていく。トレースはなく,スノーシューを履く。
途中の崩壊地から,登ってきた蝙蝠尾根(手前の樹林の尾根)が大きく眺められた。右側の樹林のピークが徳右衛門岳,真ん中にちょこんと覗いている白いピークが蝙蝠岳,一番左のピークが塩見岳。
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途中の崩壊地から,登ってきた蝙蝠尾根(手前の樹林の尾根)が大きく眺められた。右側の樹林のピークが徳右衛門岳,真ん中にちょこんと覗いている白いピークが蝙蝠岳,一番左のピークが塩見岳。
3日間ずっと眺め続けた荒川三山。
3日間ずっと眺め続けた荒川三山。
保利沢山への登りは地味に急登でちょっと疲れた。林道が近いのに意外に森が美しいのが救い。
保利沢山への登りは地味に急登でちょっと疲れた。林道が近いのに意外に森が美しいのが救い。
で,このあたりが保利沢山山頂。意外なことにプレートの類は見当たらず,あまりピーク感のない山頂だった。
で,このあたりが保利沢山山頂。意外なことにプレートの類は見当たらず,あまりピーク感のない山頂だった。
そして,東に延びる峰山尾根を下っていく。峰山尾根についてはほとんど調べておらず(手抜きしてすみません…),どんな状態か少し不安。
そして,東に延びる峰山尾根を下っていく。峰山尾根についてはほとんど調べておらず(手抜きしてすみません…),どんな状態か少し不安。
下り初めに一箇所だけマーキングがあったが,見かけたマーキングはこの一箇所だけ。当然ノートレース。
下り初めに一箇所だけマーキングがあったが,見かけたマーキングはこの一箇所だけ。当然ノートレース。
そしてすぐにシャクナゲの藪が…。なるほど,普通に藪尾根でしたか…。でもそれほど藪は濃くなく,尾根芯を外して斜面をトラバースすれば大丈夫なレベル。
そしてすぐにシャクナゲの藪が…。なるほど,普通に藪尾根でしたか…。でもそれほど藪は濃くなく,尾根芯を外して斜面をトラバースすれば大丈夫なレベル。
シャクナゲはすぐに姿を見せなくなったが,この尾根,過去に皆伐されてその後放置されたらしく,針葉樹の若木が藪状に茂って進みにくいことこの上ない。展望があるわけでもなく,あまりお勧めできない尾根です。
シャクナゲはすぐに姿を見せなくなったが,この尾根,過去に皆伐されてその後放置されたらしく,針葉樹の若木が藪状に茂って進みにくいことこの上ない。展望があるわけでもなく,あまりお勧めできない尾根です。
P1823.2mを越えたあたりでようやくましになり,歩きやすくなった。
P1823.2mを越えたあたりでようやくましになり,歩きやすくなった。
基本的に危険個所はない尾根だが,一箇所だけ左右が切れ落ちて痩せた箇所があった。南側斜面を巻いて通過。
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基本的に危険個所はない尾根だが,一箇所だけ左右が切れ落ちて痩せた箇所があった。南側斜面を巻いて通過。
田代川第二発電所の導水管への下降地点には,ぽつんと写真のマーキングがあった。ここを見逃すと駐車地まで非常に遠回りになってしまうため,けっこう神経を張りつめて読図を続けてきたのだが,このマーキングを見てここが下降地点だと確信でき,助かった。
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田代川第二発電所の導水管への下降地点には,ぽつんと写真のマーキングがあった。ここを見逃すと駐車地まで非常に遠回りになってしまうため,けっこう神経を張りつめて読図を続けてきたのだが,このマーキングを見てここが下降地点だと確信でき,助かった。
マーキングのあった箇所から北北東の小尾根を急下降していく。けっこう急斜面で,特に右手が切れ落ちているため,慎重に下っていく。
マーキングのあった箇所から北北東の小尾根を急下降していく。けっこう急斜面で,特に右手が切れ落ちているため,慎重に下っていく。
導水管を見逃さないよう右手を注視しながら下っていくと,木々の間に導水管の建物を視認。これを見逃して斜面を下りすぎると大変なことになるため,ほっとした瞬間だった。まあ,結構でかい建物なので,見逃すことはないかもしれないが…。
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導水管を見逃さないよう右手を注視しながら下っていくと,木々の間に導水管の建物を視認。これを見逃して斜面を下りすぎると大変なことになるため,ほっとした瞬間だった。まあ,結構でかい建物なので,見逃すことはないかもしれないが…。
導水管上部の建物に降り立った。
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導水管上部の建物に降り立った。
導水管の右手に付けられた鉄製階段を下りていく。導水管が登山のルートになることは珍しくなく,例えば北部白山の導水管尾根や,笈ヶ岳の中宮発電所ルートで経験しているが,これほどまでに長くて急な導水管を下ったのは初めてだ。膝が持ってかれそう…。
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導水管の右手に付けられた鉄製階段を下りていく。導水管が登山のルートになることは珍しくなく,例えば北部白山の導水管尾根や,笈ヶ岳の中宮発電所ルートで経験しているが,これほどまでに長くて急な導水管を下ったのは初めてだ。膝が持ってかれそう…。
途中で階段を下るより,脇の雪斜面を下ったほうが早いことに気づき,グリセード気味に下っていく。
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途中で階段を下るより,脇の雪斜面を下ったほうが早いことに気づき,グリセード気味に下っていく。
延々と下り続けて,やっと田代川第二発電所が見えてきた。導水管の下部は軽い高度感があり,高所恐怖症の人は怖いかもしれない。
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延々と下り続けて,やっと田代川第二発電所が見えてきた。導水管の下部は軽い高度感があり,高所恐怖症の人は怖いかもしれない。
導水管は写真の暗渠に吸い込まれて行き止まりになっているため,ここで右手の急な斜面に付けられたジグザグ道を下る。
導水管は写真の暗渠に吸い込まれて行き止まりになっているため,ここで右手の急な斜面に付けられたジグザグ道を下る。
無事,発電所まで降りてきた。工事車両の行き交う林道を駐車地まで歩き,静かな3日間の山行を終えた。
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無事,発電所まで降りてきた。工事車両の行き交う林道を駐車地まで歩き,静かな3日間の山行を終えた。
【余談】導水管を下っている途中,対岸の斜面を駆け上がる一本の電線が見えた(写真)。あの電線に保線路があれば,伝付峠越えの八丁峠(内河内のコル)が崩れて通行不能になった際に,八丁峠まで尾根伝いの代替ルートになり得るかもしれない。
【余談】導水管を下っている途中,対岸の斜面を駆け上がる一本の電線が見えた(写真)。あの電線に保線路があれば,伝付峠越えの八丁峠(内河内のコル)が崩れて通行不能になった際に,八丁峠まで尾根伝いの代替ルートになり得るかもしれない。
【余談(つづき)】そう思って,保線路を探してみたところ,田代川第二発電所から少し林道を進んだところ(林道が途切れて河原に降りる地点の少し手前)の右手斜面に保線路らしきハシゴを発見。ピンクテープもあり,現役の様子。といっても,こちらの道も相当険しそうではありますが…。
【余談(つづき)】そう思って,保線路を探してみたところ,田代川第二発電所から少し林道を進んだところ(林道が途切れて河原に降りる地点の少し手前)の右手斜面に保線路らしきハシゴを発見。ピンクテープもあり,現役の様子。といっても,こちらの道も相当険しそうではありますが…。

装備

備考 ・スノーシューを携行。蝙蝠尾根の2300m付近以降と,下山時の峰山尾根上部で使用。
・アイゼンは伝付峠越えの道で凍結箇所をトラバースする際に1回使用したのみ。ピッケルは携行したが使用せず。

感想

 成人の日の三連休は,当初は白山に登るつもりだったのだが,あいにく北陸地方は3日間とも悪天候の予報。せっかくの連休を3日間ともホワイトアウトで棒に振るのは不本意なので,思い切って天気の良い南アルプスに足を延ばすことにした。
 選んだルートは伝付(でんつく)越えから蝙蝠(こうもり)尾根を登り詰めての蝙蝠岳。冬季はただでさえアプローチが長く人影が絶える南アルプス中部の中でも,ひときわマイナーなこの山・このルートであれば恐らく他に入山者はいないだろうし,トレースのない長大な尾根でひたすらラッセル行を楽しめると考えた。丸一日かけて「峠越え」「前山越え」をしないと尾根取り付きにさえ辿り着けないというアプローチの長さも,まるで戦前の山旅のようでワクワクするものがあった。それから,南アルプスの主だった山やルートはほとんど登り尽くしたという山好きの親戚が,「この山だけは登り残してしまった」と語っていたのが蝙蝠尾根からの蝙蝠岳だったので,どんなルートなのか気になっていた,という個人的な思い入れもあった。
 最近は風雪吹き荒れる北陸の山ばかり登っていたこともあり,信じられないような天気の良さや,真冬でもなお稜線間際まで黒々と覆い尽くしているモミやトウヒ,ツガなどの深い森林に,南アルプス独特の良さをしみじみと感じた(天気が良かったのはたまたまかもしれないが)。この時期でも伝付峠という谷沿いのルートをアプローチに利用できるのも,この山域の利点であり楽しみだろう。おかげで,これ以上にない快晴の下,蝙蝠岳まで往復して帰ってくることができた。蝙蝠尾根の途中まで一筋の古いトレースが残っていたこと(これはちょっと驚いた)を除けば,一人の登山者に会うこともなく,静かな山行を楽しむことができた。長大な雪の尾根の果てにたどり着いた蝙蝠岳は,見渡すどの主稜線からも程よく離れた孤独な高まりで,風だけが渺々と吹き渡るその山頂は,ひとりの山旅の終着点としてはふさわしい場所に思えた。

 ところで,今回アプローチに利用した伝付峠も,単なる経由地ではなく,越えるのを楽しみにしていた目的地の一つだった。伝付峠は古い峠で,特に大正〜昭和初期に現在の二軒小屋の位置に東京電力や東海紙料の事務所や井川橋本屋旅館が建ってからは,新倉からの物資の輸送ルートとして人々が足繁く行き交ったらしい。冠松次郎の「渓」に収録されている「大井川の冬」という小編にも,この伝付峠が二軒小屋と外界をつなぐ冬季唯一の交通路であったこと,大雪後は二軒小屋と東電保利沢小屋(当時から既に保利沢出合に小屋があったというのが面白い)の双方からワカンを履いた雪踏み隊が出て峠の通行を確保していたこと,などの話が出てくる(昭和5年の話)。日本アルプスの標高2000mを越える峠において,厳冬期でもこのような営為が行われ,登山家でもない普通の人々が行き交っていたというのは驚くべきことのように思える。
 このような由緒ある峠なので,(近年は崩壊などが進み悪路となっていると聞いてはいたが)基本的には普通に歩ける道だと思っていたのだが,実際に歩いてみると,特に八丁峠(内河内のコル)の東側の急登部分が意外に悪くて驚いた。少なくとも,古来から多くの人が歩いた道と言う割には悪すぎる気がする。崩壊気味の急峻な小尾根に無理やり急造されたような道だったため,過去にはもっと安定した道があったのだが,それが何かの理由で通れなくなり,代わりに付けられた道なのではないか,と疑ってしまったくらいだった。
 そのため,大正〜昭和初期の登山案内書をいくつかと,加えて念のため昭和50年代のガイドブックも当たってみたのだが,いずれも伝付峠越えの峠道(少なくとも八丁峠の前後の区間)はほぼ現在と同じルートで付けられていた(しかも,道の悪さを示唆するような記述はいずれの資料にも全く見られなかった)。新たに分かったのは,八丁峠(内河内のコル)にはかつて大山祇神の祠が建っていたということと,現在の峰山尾根(今回,下山に使ったルート)にも保利沢山を経由して伝付峠まで道が付けられていて,伝付峠越えの代替ルートとして機能していたらしいということくらい(「日本南アルプス」平賀文男著,博文館,昭和4年刊)。
 つまり,八丁峠(内河内のコル)の東側の区間も古来からの由緒正しき峠道なのだが,割と近年に崩壊が進んだことによって現在のような悪路となったのではないか,というのが一応の結論。道の素性はどうあれ,通行時はご注意ください。
 最後に,「風雪のビヴァーク」で有名な登山家・松濤明の「春の遠山入り」から一節を引用して終わりにしたい。彼は昭和15年3月の11日間にわたる山行で,若干18歳にして南アルプス南部の冬季初縦走を成し遂げているが,その下山時にやはり伝付峠を越えている。
「今日はもはや伝付を越えるばかり。昼食までご馳走になって,一時頃ゆっくり二軒小屋を発った。…あの白く輝く岳の奥から鄙びた不可思議な旋律が風に乗って伝わってくる。それが無性に私を引きつける。これを見,あれを聞くとき,山へ行くのが苦しいから山に行くのではなく,また楽しいから行くのでもない,純粋に『一つのものを作り上げること』のみを目指して山へ入れるような,氷のような山男になることのいかに困難であるかをしみじみと感ずるのだ。」
 私も,今回の山行で,何かしら「一つのものを作り上げること」ができただろうか。たとえそれがごくささやかで,自分の中だけのものであったとしても。伝付峠に立って,白く輝く南ア南部の山々を最後に振り返りながら,そう思った。

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