小淵沢駅〜権現岳〜赤岳〜美濃戸口


- GPS
- 32:00
- 距離
- 24.8km
- 登り
- 2,400m
- 下り
- 1,791m
コースタイム
小淵沢駅0:55―2:10標高1200mゲート付近2:20―3:50観音平4:00―(わかん装着)―5:10雲海5:20―7:15青年小屋7:45―8:40標高2500m付近8:50―(わかん→アイゼン)―11:10ギボシピーク付近―11:45権現小屋―12:50旭岳付近13:00―14:05キレット小屋(幕営)
1月3日(土)
キレット小屋(アイゼン装着)7:10―(雪洞もどきを作り1時間15分ほど停滞)―(ルンゼの突破に約1時間)―13:20赤岳13:45―14:30行者小屋(アイゼン→つぼ足)14:50―16:05赤岳山荘16:15―16:45美濃戸口
天候 | 1月2日:快晴→曇り 1月3日:地吹雪→快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
http://www.alpico.co.jp/access/suwa/#route |
コース状況/ 危険箇所等 |
小淵沢駅〜青年小屋: 今回は駅から歩きましたが、車で行ったとしても標高1200m地点のゲートで通行止めになります。ゲートからは雪道で、標高1400m付近から足首程度のラッセルでした。標高1400m付近から観音平までは登山道経由でも行けますが、今回は車道を忠実に辿りました。観音平からは山道ですが、トレースは概ね明瞭で危険個所はありません。ただし、青年小屋手前の緩斜面のトレースはほぼ消えており膝程度のラッセルとなりました。 青年小屋〜キレット小屋: 青年小屋から標高2500m付近までは危険個所こそあまり無いものの、トレースはほぼ無く、また樹林帯ということもありそこそこのラッセルになりました。ギボシの通過はルート取りを間違うと危険です。また権現岳の先の長いハシゴ及びそれに続く鎖場は要注意。さらに、旭岳は西側をトラバースしますがこちらも少々注意が必要です。なお、全体的にラッセルを交えます。 キレット小屋〜美濃戸口: 赤岳の登りの下部は樹林帯で若干のラッセルになります。標高2600m付近でルンゼ状の部分を登りますが、強風時は大変危険です(今回の核心部)。風さえなければ特段問題はないはずですが…。標高2700m付近から鎖や梯子が沢山出てきますが、大きな問題となる箇所はありません。赤岳からの下り(文三郎尾根)は大変歩きやすく、またこれ以降危険個所はありません。 |
写真
感想
元々年越しで八ヶ岳を縦走する予定であったが、発達しながら通過する低気圧の影響を避けるため、予定を短くし1泊2日もしくは2泊3日で南八ヶ岳を中心に縦走する計画に変更した。さて、どこまで行けるだろうか…
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1月2日(金)
小淵沢行きの最終電車に乗り込み、終点で下車。ここが本山行のスタート地点だ。
線路と中央道をくぐり北に向けて歩くが、住宅街を通る道が地形図と若干違うようだ。
北へ北へと進むとどんどん民家は少なくなり、広大な畑とカラマツ林を左右に見ながら進むようになる。月明りに浮かぶ八ヶ岳連峰は、山頂付近が雲で覆われているように見える。
まだ完全に下界だというのに風が強く、頻繁に針葉樹の幹がギシギシ音を立てている。晴れていれば風光明媚な場所なのだろうが、風の強い深夜とあっては、正直あまり気持ちの良いものではない。
標高1140mから一旦土の道になり、八ヶ岳公園道路を横切るとゲートに到着する。多くの記録ではここまで車で入っているようだ。今日は1台駐車していた。
雪に覆われた舗装路を黙々と進んでいく。西からは煌々と月明りが差し込み、頭上には北斗七星やカシオペア座が静かに浮かんでいる。
標高1400m地点からいったん登山道に入り観音平までショートカットすることが可能だが、取りつきが良く分からず踏み跡も錯綜気味だったので、安全を期して舗装路を忠実に辿ることにする。
徐々に徐々に雪が深くなるが、せいぜい足首か脛程度なので、つぼ足で進んでいく。
観音平手前に展望台のような場所があり、方位版が置いてあった。北杜市と思われる街の夜景が美しい。
観音平は風が強い。ワカンを装着し登山道を登っていく。幸いトレースは概ね明瞭。当たり前だが全く景色が無いので、ほとんど写真をとることもなくひたすら登っていく。雲海(←地名)を過ぎると一部トレースが埋まっている部分もあった。
押手川分岐を過ぎるとようやく空が白み始めた。長い夜だった。。。
編笠山の巻きで南東方向に視界が開け、黎明の空に見事な富士のシルエットを眺めることができた。俄然モチベーションが上がる。
青年小屋手前の樹林帯でトレースがほぼ無くなり、少しの間ラッセルとなるが、ほどなく青年小屋に到着。テントが1張り。
着いたはいいが風がとんでもなく冷たく強い。寒気が相当なものであることを実感する。「ここでこれだけ風が強いのに、この後危険地帯を通過できるのか?」と考え、この先本当に行くのかどうかしばし迷ったが、徐々に冬型は緩む見込みなので、様子を見つつ進むことにする。
なお、今回は縦走メインのため、編笠山はパスさせてもらった。
さて、権現岳方面一歩踏み出すといきなりラッセルとなる。暫く前につけられたようなトレースが散見されるが、基本的に不明瞭。
ときおり局所的な急斜面が出現し、雪を切り崩しながら登る箇所もあった。
標高2530m付近で一気に視界が開け、ピラミダルで迫力満点のギボシと奥に鎮座する権現岳を望むことが出来る。
ここでセルフで1枚写真を撮ったが、直後に、寒さのため早くもデジカメがバッテリー切れ…。そのため、これ以降は基本的に代替のスマホのカメラで写真を撮っているが、こちらは手袋を外して素手で操作しないと動かないため、限られた箇所でしか写真を撮ることができなかった。(それでも、結局スマホは最後まで生きていたので助かった!)
さて、最初の難所であるギボシの通過であるが、事前情報では南側から巻くということだったのでなるべく右側にルートをとるように努める。
しかし、これはあまりよろしくなかったようで、岩を巻く際に右にルートをとり、2回ほど際どい斜面をラッセルしながらじわじわ這い上がったところ、上部で左からより簡単そうなルートが合流してくる、という箇所が2箇所ほどあった。
また、ギボシピークを右から巻こうとしたところ、途中で詰まってしまい、一旦もとにもどって改めて稜線上から登ったところ、すんなり通過できた。(ただ、稜線は結構細いのでやはり注意は必要。)
この後、権現小屋まで特に問題となる箇所はないが、強風帯にも関わらずそれなりのラッセルとなりしんどかった。
雪で埋もれた権現小屋を見送ると噂の「長〜〜〜〜〜い梯子」が出現。万一落ちると命は無いので、スリングでセルフビレイをとりながら慎重に下った。
さらに、この後も一部の鎖が雪に埋もれた際どいトラバースが続き、あまり気が休まらない。
旭岳も引き続き西側をトラバース。そして、旭岳通過後は地形図から受ける印象以上にガンガン下っていく。
ツルネ付近は再び樹林帯が出現し、尾根の幅も広がるので比較的安心して通過できる。もちろん安心と引き換えにラッセルすることになるが…。
キレット小屋は稜線から20〜30メートルほど東に下ったところにあり、風を避けることが出来る。本日はここで幕営。予想以上に時間がかかり、実に13時間という冬山では通常あり得ない行動時間となった。
整地しテント設営。
夜は試しに冷凍野菜を使ったカレーを作ってみたが、野菜が大変不味く、frustrationのたまる夕飯となった。
携帯の電波が完璧に入ったので天気予報等をチェックすると、太平洋側に新たに発生した低気圧が元々の予想よりも発達するようだ。
昨夜は夜通し歩いたので、夕食後に即就寝。何度か目が覚めたような気がするが、意識が朦朧として良く覚えていない。
1月3日(土)
朝から風が強いようで、フライがバタバタと音を立てている。
外を眺めると残念ながら頭上は雲で覆われているが、低気圧は一時的なものでいずれにせよ天候は回復するはずである。
というわけで出発する。
稜線上までは距離は短いが結構深いラッセルとなる。稜線に出ようとするとかなりの地吹雪で暫く小屋周辺で停滞するかどうか迷ったが、何とか進めそうだったので、左から強風が吹き付ける中、赤岳の登りにかかる。
しかし、これから樹林帯を抜け岩稜を進むにはやはりまだ少し天候が悪すぎると思い、かつ、待てば天候は回復する見込みのため、少しの間雪洞”もどき”を作り停滞することにした。
1時間余り経過した頃、予想通り日が差し始め、これなら何とか行けそうだと思い強風が吹き荒れるなか再出発。頭上の複雑な気流によって、雪煙が渦巻いているのが見える。
しかし、ここからが予想外であった。
標高2600m付近がルンゼ状を呈しているのだが、ここに取りつき暫く登っていくと、物凄い風が前方から断続的に吹き付けてくるようになる。通常であれば、いくら強風とはいえ、同一の方向からあまり変わらない強さで吹き付けてくるため、よほどでなければ対処はできる。しかしここの風は少し違っており、風がほぼなくなったかと思うと、突然体を殴られるような風が、ルンゼ上方から吹き降りてくるのだ。
この風により一度斜面から滑り落ちかけ、何とかピッケルを雪面に刺し踏みとどまったが、恐怖でそれ以上進めなくなってしまった。どこでもピッケルが刺さるなら良いのだが、あいにく雪がほとんど飛ばされており、まともに刺さる箇所はごく僅かしかないのも、前進を難しくする要因だ。
結局30分ほど耐風姿勢で耐えたが、このままいても体が冷えて体力を消耗するだけなので、風が弱まる僅かな時間を利用しながら、じりじりと前進することにした。こころもち、風が弱まってきている……が、そんな気がするだけかもしれない。恐怖で涙が出そうになった。
とにかく岩でも何でも利用できるものは使って体を支え、かろうじて這い上がる。わずか50mほどの区間を突破するのに1時間ほどもかかった。
ここを過ぎると一転して上昇気流に変化。これは単なる憶測だが、ここのルンゼは東側の側壁が発達していたため、西風が壁を直接乗り越えられず、ある点で上下に分流してルンゼに沿って流れるようなメカニズムになっているのかもしれない。
※ルンゼは風さえ無ければ特に問題ないと思われます。
この後は赤岳に近づくにつれ鎖場や梯子が随所に現れるようになるが、慎重に行けば特段問題となる箇所はない。
赤岳直前で、山頂に人がいるのが見えた。そういえば、なんと入山してから今まで1人の人間にも会わなかった。冬の八ヶ岳はメジャーだという印象があったのだが、赤岳以南はこうも入山者が少ないのかと今更ながら驚いた。
そんなこんなで何とか赤岳着。もう危険地帯は無いと思うと、一気に安堵が押し寄せた。それにしても見事な眺望だ。昨日から辿ってきた稜線を眺めると、とても通過できそうに思えない…(-_-;)
山頂にいた方と互いに写真を撮ったりして暫くゆっくりしたあと、文三郎尾根経由で下山にかかる。(一応この後の縦走路もルートには取っているが、もうお腹いっぱいです。。)
今までのコースのせいで完全に感覚が麻痺しており、文三郎尾根が遊歩道か何かに感じた…
行者小屋で一泊しようかどうか悩んだが、昨日のようなカレーをもう一度食べることは何としても避けたかったので、本日中に美濃戸口まで降りることにした。(バスは間に合わないのでタクシーを利用することにする。)
最後の林道はヘッドランプで行動することになるかと思ったが、サクサク下れたので、何とか日の入りジャストに美濃戸口に下山した。
タクシーの予約を入れた時間までまだしばらくあるので、八ヶ岳山荘でコーヒー注文し、硫黄岳に日帰りで登られた方と話をしながらゆっくりと待つ。(こちらの方とは茅野駅でも再びお会いしました。)
自分の予約したタクシーが先に来たので先に失礼し、タクシーの運転手さんと「御柱祭」の事など色々話しながら、夕闇に包まれる八ヶ岳高原を茅野駅へと下っていった。
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○反省点
風が強いことは予想していましたが、今回のルンゼで経験したような特殊な風の吹き方は想定できておらず、気象条件から強風が予想される場合の危険地帯の通過にはより慎重であるべきだと考えました。今後同様の箇所をルートに取る場合は、確実なエスケープルートを確保する、或いは冬型が予想される場合は当該ルートに入らないなど、対策をしたいと思います。
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