ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 8137308
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
東北

丸山岳(伊南村大原起終点・火奴山経由)

2025年05月03日(土) 〜 2025年05月06日(火)
 - 拍手
体力度
10
2〜3泊以上が適当
GPS
72:27
距離
55.1km
登り
3,967m
下り
3,969m
歩くペース
ゆっくり
1.21.3
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
8:31
休憩
0:21
合計
8:52
距離 10.9km 登り 1,288m 下り 345m
8:34
302
スタート地点
13:36
13:38
86
15:04
15:22
118
17:20
17:21
5
17:26
宿泊地
2日目
山行
11:14
休憩
0:08
合計
11:22
距離 11.5km 登り 866m 下り 1,067m
5:20
68
宿泊地
6:28
6:35
566
16:01
16:02
40
16:42
宿泊地
3日目
山行
11:16
休憩
0:20
合計
11:36
距離 17.3km 登り 1,468m 下り 1,173m
4:02
246
宿泊地
8:08
8:21
111
10:12
10:14
80
11:34
11:39
231
15:30
8
15:38
宿泊地
4日目
山行
6:19
休憩
0:04
合計
6:23
距離 15.5km 登り 321m 下り 1,365m
2:38
113
宿泊地
4:31
61
5:32
5:33
50
6:23
6:24
49
7:13
7:15
106
9:01
ゴール地点
◯山毛欅沢山の手前の標高1100mくらいまでは、半分仕事で林分密度調査などしながらゆっくり登っている。
◯2日目は小手沢の渡渉でずぶ濡れになり、エマージェンシー焚火ブレイクで2時間まったりしてしまっている。どうせ靴は乾かないのだから、身体を温めたらさっさと出発すれば良かった。
◯3日目は坪入山の手前で天気が良いので靴を脱いで足を乾かしながら1時間ぐらい大休止している。
◯4日目は家向山・倉淵山と縦走して小立岩に直接降りる計画だったが、雨だし何より入山4日目の精神状態で下界に短絡する登山道の誘惑に勝てるはずもなく、車道歩きに変更した。
天候 3日 晴れ後曇り
4日 曇り時々雨 
5日 曇り後晴れ
6日 雨
過去天気図(気象庁) 2025年05月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
鳥井戸橋のたもと(林道大原線入口)に駐車
コース状況/
危険箇所等
稲子沢と小手沢は、地形図では黒谷林道(廃道)の橋が架かるが、稲子沢の方は消滅、小手沢の方は半壊していて使えない。黒谷川本流の橋はまだ当分保ちそうだった。
現在火奴山の尾根を使いたかったら恵羅窪山から広河原沢左岸尾根を橋目掛けて下ると美しい周回コースが描けるだろう。今回は稲子山と大内木山も目的地だったのでこんなコース。
城郭朝日の記録で良く見かける橋から入山
城郭朝日の記録で良く見かける橋から入山
鞍部に山の神の祠とキタゴヨウの巨木があり、赤岩橋方面へ下る踏跡があった。ブナの新緑が気持ちいい。この辺のブナは若齢の二次林だったり巨木でもアガリコだったり、ヒトの利用の痕跡が濃い。昭和年間のナタ目も多い。
鞍部に山の神の祠とキタゴヨウの巨木があり、赤岩橋方面へ下る踏跡があった。ブナの新緑が気持ちいい。この辺のブナは若齢の二次林だったり巨木でもアガリコだったり、ヒトの利用の痕跡が濃い。昭和年間のナタ目も多い。
城郭朝日の時に使った布引山の尾根。その手前の支尾根はやたらとキタゴヨウが目立つ。
城郭朝日の時に使った布引山の尾根。その手前の支尾根はやたらとキタゴヨウが目立つ。
城郭朝日の時の軌跡と繋げるためジャンクションピークまで寄り道し、古町丸山を見る。
城郭朝日の時の軌跡と繋げるためジャンクションピークまで寄り道し、古町丸山を見る。
山毛欅沢山のちょい先から小沢山を見る。標高差が小さくて距離を稼げる区間だが、見た目よりは雪堤が使えない箇所が多数現れる。
山毛欅沢山のちょい先から小沢山を見る。標高差が小さくて距離を稼げる区間だが、見た目よりは雪堤が使えない箇所が多数現れる。
山毛欅沢山を振り返る
山毛欅沢山を振り返る
稲子山を登る途中で振り返る山毛欅沢山〜小沢山。小沢山からの登り返しは地形図で知っているはずだけど実際見るとゲンナリ。真面目にキックステップしなきゃならん傾斜で、日も陰ってきたのでアイゼンに換装。
稲子山を登る途中で振り返る山毛欅沢山〜小沢山。小沢山からの登り返しは地形図で知っているはずだけど実際見るとゲンナリ。真面目にキックステップしなきゃならん傾斜で、日も陰ってきたのでアイゼンに換装。
小手沢源頭部はいわいわしている。
小手沢源頭部はいわいわしている。
稲子山山頂付近、丸山岳と火奴山の尾根と城郭朝日が良く見えるポイントで幕。夜は風が強く寒かった。
稲子山山頂付近、丸山岳と火奴山の尾根と城郭朝日が良く見えるポイントで幕。夜は風が強く寒かった。
大内木山への下り。視程は悪い時30mくらい。
大内木山への下り。視程は悪い時30mくらい。
大内木山前後は藪尾根だが、かなり明瞭な獣道が走る。
大内木山前後は藪尾根だが、かなり明瞭な獣道が走る。
視界ゼロの大内木山。せっかくのマイナーピークなのに、果たして再訪の機会あるや。
視界ゼロの大内木山。せっかくのマイナーピークなのに、果たして再訪の機会あるや。
大内木山からの大下り。やや雲が上がって正面に再び城郭朝日を認め、黒谷川も見えた。城郭朝日はお気に入りの良い山なのだが、高さが無いのでこっちから見るとしょぼい。
この辺り気候的に極相はブナの純林になるはずだが、若齢ダケカンバの純林地帯があり、拡大造林期の爪痕を疑う。
大内木山からの大下り。やや雲が上がって正面に再び城郭朝日を認め、黒谷川も見えた。城郭朝日はお気に入りの良い山なのだが、高さが無いのでこっちから見るとしょぼい。
この辺り気候的に極相はブナの純林になるはずだが、若齢ダケカンバの純林地帯があり、拡大造林期の爪痕を疑う。
やっぱり架線集材の跡があった(ワイヤー)。
やっぱり架線集材の跡があった(ワイヤー)。
稲子沢と黒谷川の出合。不届者がブルシをデポってた。
谷への下りは登り返しを思い憂鬱なのと、ブナの新緑地帯に突入する点が嬉しいのとがせめぎ合うが、陽射しが無く新緑が映えないので憂鬱に軍配。
稲子沢と黒谷川の出合。不届者がブルシをデポってた。
谷への下りは登り返しを思い憂鬱なのと、ブナの新緑地帯に突入する点が嬉しいのとがせめぎ合うが、陽射しが無く新緑が映えないので憂鬱に軍配。
黒谷林道。平成23年豪雨で壊滅。まかり間違って拡大造林政策が再発でもしない限り復旧はあり得ない。この写真はまだマシなエリア。デブリのトラバースは良いのだが、崩土のトラバースは怖い。
黒谷林道。平成23年豪雨で壊滅。まかり間違って拡大造林政策が再発でもしない限り復旧はあり得ない。この写真はまだマシなエリア。デブリのトラバースは良いのだが、崩土のトラバースは怖い。
小手沢の橋は残っていたが…
小手沢の橋は残っていたが…
黒谷川本流の橋は残っていた。これが無かったら小手沢山に登り返してエスケープするしか無かった。スギ造林地が見えているが、もう放置するしか無いだろう。
ここで支流から水を汲んで4リットル満タンにし直す。雪融かすのは面倒だしゴミ混じりの水になるが、融雪期の沢水もゴミ混じりだった。
黒谷川本流の橋は残っていた。これが無かったら小手沢山に登り返してエスケープするしか無かった。スギ造林地が見えているが、もう放置するしか無いだろう。
ここで支流から水を汲んで4リットル満タンにし直す。雪融かすのは面倒だしゴミ混じりの水になるが、融雪期の沢水もゴミ混じりだった。
橋の先は完全に路体が崩落していてとてもじゃないがへつれないので、火奴山尾根の末端は目指さずに支尾根でも何でもない急斜面を無理矢理登る。ここはたぶん殆どヒトが入ったことの無いエリア。ナタ目の代わりにクマの爪痕ばっかり。老齢ブナもアガリコでなくて通直である。
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橋の先は完全に路体が崩落していてとてもじゃないがへつれないので、火奴山尾根の末端は目指さずに支尾根でも何でもない急斜面を無理矢理登る。ここはたぶん殆どヒトが入ったことの無いエリア。ナタ目の代わりにクマの爪痕ばっかり。老齢ブナもアガリコでなくて通直である。
地図に無い池とサワグルミ
地図に無い池とサワグルミ
尾根の突端に過ぎない火奴山も下から見ると山頂っぽい。それとクマ棚。
火奴山の尾根に乗るとヒトのナタ目を見るようになる。昭和30年代〜平成初期まで。
尾根の突端に過ぎない火奴山も下から見ると山頂っぽい。それとクマ棚。
火奴山の尾根に乗るとヒトのナタ目を見るようになる。昭和30年代〜平成初期まで。
火奴山の先の船窪地形。火奴山はヤマレコの地名登録ではヒヤッコ山になっているが、正しくはホド山だと思う。船窪地形を陰(ホト、女性器)に見立てた名だと誰かの記録で読んだが、本当だろうか。その船窪の中でテントを張ろうかと思ったが、入ってみると予想に反して全然風が凌げないのでもうちょい進む。
火奴山の先の船窪地形。火奴山はヤマレコの地名登録ではヒヤッコ山になっているが、正しくはホド山だと思う。船窪地形を陰(ホト、女性器)に見立てた名だと誰かの記録で読んだが、本当だろうか。その船窪の中でテントを張ろうかと思ったが、入ってみると予想に反して全然風が凌げないのでもうちょい進む。
1416高地の隣の1400ポコが不思議と無風なのでテン場とす。そこから黒谷川を隔てて大内木山を見返す。
1416高地の隣の1400ポコが不思議と無風なのでテン場とす。そこから黒谷川を隔てて大内木山を見返す。
テン場の先から坪入山(テン場からと見え方はほぼ同じ)。杉曽根沢の白さが目立つ。窓明を登る登山者のヘッデンも見えていた。
テン場の先から坪入山(テン場からと見え方はほぼ同じ)。杉曽根沢の白さが目立つ。窓明を登る登山者のヘッデンも見えていた。
朝は雪が堅いのでこの程度のクラックはあまり気にせず進む。以前は藪に逃げていたが、クマの新鮮な足跡が逆行しており、参考にする。クマは間違いなく地元民だが、単独のシカの足跡は他所者なのであんまり信用しない。
朝は雪が堅いのでこの程度のクラックはあまり気にせず進む。以前は藪に逃げていたが、クマの新鮮な足跡が逆行しており、参考にする。クマは間違いなく地元民だが、単独のシカの足跡は他所者なのであんまり信用しない。
大幽東の沢。デブリで茶色い。
大幽東の沢。デブリで茶色い。
振り返る。中央の高まりがテン場。奥のスカイラインは山毛欅沢山〜城郭朝日
振り返る。中央の高まりがテン場。奥のスカイラインは山毛欅沢山〜城郭朝日
旭光を受ける丸山岳。この先、コンター1600m辺りは黒谷川側の雪堤が切れ、大幽沢側をトラバース。ピッケルで止まれるか際どい傾斜と雪質なので、アイゼンワークに集中する。
旭光を受ける丸山岳。この先、コンター1600m辺りは黒谷川側の雪堤が切れ、大幽沢側をトラバース。ピッケルで止まれるか際どい傾斜と雪質なので、アイゼンワークに集中する。
高幽山はとりわけ白い。この方面、歩みを進めるごとに燧、至仏、平ヶ岳、利根源流域シリーズとどんどん展望が拡がってゆくのが愉しかった。
高幽山はとりわけ白い。この方面、歩みを進めるごとに燧、至仏、平ヶ岳、利根源流域シリーズとどんどん展望が拡がってゆくのが愉しかった。
丸山岳ピストンの途中、火奴山の尾根の1698三角点峰を見返す。あの全層雪崩のせいで藪漕ぎだった。獣道は無く、地に足が付かない率3割程度の本格的な藪漕ぎ。
丸山岳ピストンの途中、火奴山の尾根の1698三角点峰を見返す。あの全層雪崩のせいで藪漕ぎだった。獣道は無く、地に足が付かない率3割程度の本格的な藪漕ぎ。
丸山岳ピストンの途中で登り来る火奴山を見返す。長くて平らな尾根だ。平らな部分(コンター1400〜1700)は雪が締まってアイゼンが良く効いたのもあって体力的には楽勝、殆ど写っていないが前半のアルバイト(コンター700〜1400)が大内木山の下りをこなした後と言うこともあって大変だった。
丸山岳ピストンの途中で登り来る火奴山を見返す。長くて平らな尾根だ。平らな部分(コンター1400〜1700)は雪が締まってアイゼンが良く効いたのもあって体力的には楽勝、殆ど写っていないが前半のアルバイト(コンター700〜1400)が大内木山の下りをこなした後と言うこともあって大変だった。
丸山岳山頂より村杉半島方面。猿倉だけ黒い。猿倉はベイクラと読むらしいが手元の山名一覧ではサルクラになってる。只見ブナセンターの解説でサルの地方名をバイとしていたのでベイクラで良いと思うのだが。その方が格好いいし。
丸山岳山頂より村杉半島方面。猿倉だけ黒い。猿倉はベイクラと読むらしいが手元の山名一覧ではサルクラになってる。只見ブナセンターの解説でサルの地方名をバイとしていたのでベイクラで良いと思うのだが。その方が格好いいし。
坪入山の手前から来し方振り返る。疲れたしピーカンになって暑いので展望を言い訳にして立ち停まることが多い。
写真にすると周りの山の迫力に呑まれてしまうが、肉眼だと未丈ヶ岳の白銀に彩られた優美な両翼の存在感が凄い。
坪入山の手前から来し方振り返る。疲れたしピーカンになって暑いので展望を言い訳にして立ち停まることが多い。
写真にすると周りの山の迫力に呑まれてしまうが、肉眼だと未丈ヶ岳の白銀に彩られた優美な両翼の存在感が凄い。
坪入山から下り始めてすぐの台地で幕営し物干タイム。
坪入山から下り始めてすぐの台地で幕営し物干タイム。
車回収歩きの終盤、大原部落より序盤の山の神があった鞍部を見あげる。キタゴヨウの大木も識別できる。
車回収歩きの終盤、大原部落より序盤の山の神があった鞍部を見あげる。キタゴヨウの大木も識別できる。

装備

個人装備
夏用長ズボン 長袖ウール混ジップネック 夏用化繊山シャツ 純毛山シャツ 化繊中綿入り上下 化繊中綿入り半袖 ワークマンカッパ 帽子 手ぬぐい 3シーズン用靴下 象足 寝袋モンベル3番 シュラフカバー テント 銀マ 50lザック エアマット ピッケル アイゼン 自作クソ重いワカン(未使用) グラサン 水4リットル スパッツ テルモス ゴム引き作業手袋 ピチピチ手袋 防寒じゃないテムレス いつもの小物類等
備考 ◯渡渉の装備(ビニール袋とか替えの靴下とか)を充実させるべきだった。
◯ストックとスコップは藪で邪魔になると思い持たなかった。欲しくなる場面もあったが、必須でもない(ピッケルで済ます)。
◯ワカンはこの時期毎回要らないだろうと思い実際使わないのに不安で持ってしまう。今回もいつも通りウエイトとして存分に働いてくれた。
◯ワークマンのカッパは基本性能十分だし藪でも気にせずガシガシ使えるが、いちいち靴を脱がないと脱着できない。

・初日晩飯 α米とレトルトカレー 約530kcal
・2日目朝飯 α米半分に乾燥味噌汁と乾物入れて雑炊 約180kcal
・2日目晩飯 早茹でパスタ100gとレトルトボロネーゼソース、ウインナー1袋 約750kcal
・3日目朝飯 インスタントラーメンと乾物 約230kcal
・3日目晩飯 α米とレトルト焼豚飯の素、ウインナー1袋 約700kcal
・4日目朝飯 2日目朝飯に同じ 
・行動食は柿の種、トレイルミックス、小魚アーモンド、チョコ、ブルボンしっとりソフトクッキー、しるこサンド、じゃり豆、チーズ、魚肉ソーセージ、サラダホープ、グミを1日1000kcalずつ用意し、900kcalぐらい食べた。

 調理の手間と重量を考えるとだいたいこれ以上持てないがいつも腹が減る。下界では毎日3000〜4000kcal食ってるが、山で再現しようとすると脂質偏重になって消化不良を起こす問題もあり、毎回試行錯誤している。今回はいつもほどの酷い空腹は無かった。タンパク質多めにしたのと、2日前から炭水化物を食い溜めしたのが上手く行ったかも知れない。
 朝飯は早茹でパスタがここ数年の定番だったが、昨年数回消化不良を起こしたのでラーメンと雑炊に変えてみた。総熱量は寧ろ減ったかも知れないが、乾燥ワカメが空腹を誤魔化してくれている気がする。

感想

 丸山岳は中学生の頃雑誌で「360°人工物が目に入らないピーク」と紹介されているのを読んで以来、ずっと憧れていた(この触れ込みはウソで、銀山湖が見える)。しかし何時の間にか丸山岳もマイナーピーク界のメジャーピークと化した感がある。GWの窓明〜丸山間では確実に人に会うだろう。そして長いピストンは嫌いだ。こうワガママを言っているからなかなか登れないでいた。
 以前窓明に登った際、家向山から木立越しに垣間見た稲子山が格好良さそうだったし、その奥にあるこれまたピストンが面倒そうな秘峰・大内木山も好展望地らしいと聞く。また黒谷の懐深くに名を記された火奴山、これら気になる3座をまとめて丸山岳に繋げるプランを思いつく。黒谷川の橋の状況が問題だが、行ってみないことには分からないので行く(もっと調べりゃ良かった)。
 黒谷林道健在なりし頃は火奴山から丸山岳に登る者もそこそこあったらしいが、近年この尾根に入ったヒトは珍しいのでは無いだろうか。

 途中で仔熊の死体を見た。ちょうど雪融けで出てきたらしく、綺麗な死体だった。貴重なものを見た。
 
 山毛欅沢山から大内木山まで、所々雪堤が切れて藪を歩くが、殆どヒトの道かと見まごう明瞭な獣道を利用できる。城郭朝日〜突滝沢山の稜線は完全な藪だったので、同じ山域でこの違いが何故生じるのか疑問だ。尾根上のキタゴヨウの大木は多くが根周りにウロを持ち、獣の寝床に良さそうで興味と警戒が入り混じる。
 大内木山から黒谷川へ降りる尾根の下部も獣道と、拡大造林期の歩道(伐根やワイヤーを見かける)を使える。
 火奴山の尾根への取付きは特徴の無い急斜面だが、藪はまだ薄く、潅木に掴まって無理矢理登る。傾斜が緩んでくると多数の地滑り跡が複合したような複雑な地形になり、池もあった。登りなので迷うことは無い。
 火奴山の尾根の1698三角点峰と、窓明山北側だけ本格的な藪漕ぎ。坪入山から丸山岳に至るメインルートも所々藪が出ているが、短いし殆ど漕がずに通過できる密度だった。
 
 黒谷川渡渉点の標高は入山口とあんまり変わらない。大内木山から見下ろすとこのコースを考えた奴に罰を与えたくなる。雪がある高さまではグリゼードを交え高速で下った。
 稲子沢の橋は跡形も無かったが、カッパとスパッツ着用のうえ浸水無しで渡渉。小手沢のラーメン橋は半分落ちていて、コンクリの橋脚が立ちはだかる。パーティーならショルダーで上がれるかも知れないが、浅瀬を探し渡渉。1歩目で浸水してしまったので強行突破。流芯は腿の深さで、流木の杖はあまり役に立たず、流されかけた。危ねえ。ハインリッヒの法則のヒヤリハットを1つ積んでしまった。以降ずっと濡れた靴で歩いていたので塹壕足になりそうだった。
 
 梵天岳付近で主稜線に合流した時、高幽山を下って来る登山者が見えた。韋駄天の如く迫って来る。丸山岳山頂へザックの雨蓋だけ持ってピストン、遂に到達した丸山岳山頂は風が強く寒いので長居できず、戻り始めたところで単独日帰りの男性とすれ違う。
 高幽山の下りまでは天候も良くなり快調に縦走でき、このまま下山しちゃおうかとも思い始める。好き好んで奥山に入ってるクセに下界のメシが恋しくてたまらない。煙草も尽きそうだし。
 
 坪入山へ前衛峰を幾つか越える登りでは雪も腐ってきてペースダウン。大休止して後続の男性に抜かれる。彼はそのまま下山したようだ。日帰り装備とは言え見事なスタミナだ。
 頑張って今日中に下山したところで飯屋も風呂も閉店後になりそうだったので、結局予定通り3泊目。快晴の三岩岳を眺めながら最後の煙草をくゆらす。
 
 最終日は雨の中いそいそと撤収。やっぱり早く下界のメシを食いたいので早出した。昨日と違い朝から雪が腐っている。窓明山北側の雪庇は賞味期限ギリギリで、トレースを無視して藪を漕ぐ。所々トレースに浮気してしまったが、全部漕ぐべきだった。主稜線に出てからはトレースでだいぶ楽をさせて貰っていたが、先行者のルーファイが完璧とも限らないし、雪庇の状態は刻々と変化しているのだから。
 
 窓明を越えた後で夏道は家向山手前まで登り返す。トレースも夏道に従っていたが、巻けそうな所から巻いた。
 コンター1460の尾根の分岐で先行者のトレースが間違えていて、しかし歩きやすそうだったのでそっちからも行けるのかなと思い追って見たが、普通に修正して夏道に戻っただけだったのでちょっと損した。
 家向山〜巽沢山の区間は以前に登っているが記憶が無かった。巽沢山より下は記憶どおりの急坂で、一般ルートながら気を抜けない。

 登山口にザックをデポし車の鍵を持って車道歩き。今回財布を家に忘れたのだが、国道でなんと500円玉を拾ったので大桃の自販機でコーラを買えた。普段車で何十回と通過している道だが、改めて歩いてみると道祖神や、伊南川対岸に知らなかった滝を多数見つけ面白い。

 今回は里からの隔絶度では過去最高のコースだったが、渡渉の失敗を運でカバーしての踏破だから、画竜点睛を欠く感じで素直に喜べない。
 
 今回初めて雪上でエアマットを使ってみたら、以前使っていたクローズドセルマットとR値は同じはずだが、明らかに背中が冷たかった。「積雪期にはエアマットよりクローズドセルマットが向いている、エアマットは内部で対流が起こり冷気が伝わる」というような説明を見かける。マットの下部に雪が、上部に熱源が接している状態で何で対流が起こるのか理解出来ない。この説明が合っているのか疑問が残るままだが、実際冷たいことは分かった。普段足元に敷くザックを上半身側に持ってきたり、テント内一面に広げている銀マを折りたたんで身体の下に集中させる等して対応したが、結局あまり眠れなかった。

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コメント

火奴山を絡めて丸山岳へ向かう黒谷川横断ルートはかねてよりスキーで検討しておりました。当方夏の偵察をサボっており、黒谷川林道の橋の状態が分からず今シーズンの実施は諦めたところでしたので、こちらの記録を見て非常に感銘を受けております。3年前の溶岩台地縦走の記録をはじめ、南会津近辺の記録をいつも拝見し、参考にさせていただいております。今後のご活躍をお祈り申し上げます。
2025/5/7 21:42
今回のルートは実のところ着想したのは3年前です。やはり橋の状態がネックで実施せずにいたものを、転勤で南会津に戻って来てテンションが揚がり、ぶっつけ本番でやってしまいました。本来ならおっしゃる通り偵察を経るべきで、反省しております。
こちらこそ、いつも南会津ほかの独創的な記録を拝見させて頂いております。踏抜きに伴ってアイゼンで負傷する事故は私も何時しでかすか心配していますが、有効な予防策は思い当たりません。お早いご回復をお祈り致します。
2025/5/7 23:08
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