東日本大震災で大きな打撃を受けた東北地方のある都市に
一軒のお寿司屋さんがありました。
そのお寿司屋さんは隣近所に住んでいる独身サラリーマンの
引っ越し祝い(東京へ戻るときの餞別)にといなり寿司を
差し入れてくれました。
独身サラリーマンはとても喜び、また訪れる機会があれば
お店に立ち寄りますと心に誓っていました。
西暦2011年3月、日本全体を揺るがす大地震が発生してしまいました。
東京に住んでいた独身サラリーマンは大きな被害は無かったものの
地元栃木に住んでいる家族の身の上を案じておりました。
(数時間停電があったそうですが、全員無事でした。)
それからオイルショックやら計画停電やらがひと段落した後に
ゴールデンウィークを利用して、(自分が勝手にきめた)約束を果たそうと
東北地方のある都市まで出かけました。
約3年ぶりに訪れたお店で女将さんの最初の一言が
「あらお久しぶり。」
覚えていて下さった事に感激しました。
その後大将が登場し「何年ぶりだっけ」に再度感激しました。
お寿司を握ってもらいながら聞かせてもらえたのは
・震災から数日は店の食材を使って炊き出しをしていたそうです。
お寿司屋を営んでいておにぎりを握ったのは初めてだ。
とおっしゃっていました。
電気を使わなくても火を起こせる石油ストーブを使って
米を炊いたり暖をとったりしたそうです。
石油ストーブで沸かしたお湯を湯たんぽにしてコタツの中にいれ
寒さをしのいだそうです。
炊き出しには近所の方々が行列を作って並んでいたそうです。
その他、米や醤油などが足りなくなって困っている同業者にも
惜しみなく物資を分けていたそうです。
・水道が使えなくなったのが一番困った。
半月近く、近くの沢まで水汲みに行っていたとのこと。
その際、やはりガソリン不足が大きなかせになったとのこと。
洗濯機が使えず、真冬の寒い中に女将さんが悲鳴を上げながら
洗濯物を洗っていたという話を聞いていたときには
食べていたお寿司を飲み込めませんでした。
・ライフラインが復旧してからもしばらくは
お店のランチメニューを通常の半額以下で提供していたそうです。
自分が訪問したゴールデンウィークの頃には
近くの生活環境はほぼ復旧していて
依然住んでいたときと変わらないように見えました。
震災直後に近隣住民のために私財を投げ売って炊き出しをしたお寿司屋さんには
(自分が訪問した前日には)大行列ができていたそうです。
大将も女将さんも、とても気さくな方で、
食事の最中もとても親身に接して下さいました。
独身サラリーマンは、「今年の夏もまた行かねば」と思いました。
このお話の続きは夏休み以降になるでしょうか。
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