根深氏の力作。同氏の著作はこれまでに2冊読んでいました(「風の瞑想ヒマラヤ(1989年6月)」「ヒマラヤのドン・キホーテ(2010年11月)」)。この本も読みごたえがあります。長期にわたって現地取材を重ね、ようやく上梓した苦労があとがきに記載されていますが、ヒマラヤの高嶺の初登頂時代に活躍したシェルパの方々が高齢になって存命の方が少なくなる中でこの本を残す意義はとても大きかったと思います。
シェルパというと、エヴェレスト初登頂者の1人であるテンジン・ノルゲイが有名ですが、この本では、その他にも有名なシェルパとして、アン・タルケー、ダキ・バブ、パサン・プタール、バルデン(英国隊のエヴェレスト初登頂を伝えたメールランナー)、ギャルツェン・ノルブ、ミンマ・ツェリン、プー・タルケイ(歴史上初の8000m峰登頂となったアンナプルナ・フランス隊のモーリス・エルゾーグ隊長の下山に貢献)などが登場します。すでに亡くなってしまっている人については、家族などから話を聞いています。また、参加した外国登山隊が出版した図書や記録の中でこれらのシェルパに言及している部分を引用するなどにより、丁寧な歴史検証も重ねています。すでに伝えられているような栄光の場面もいろいろと登場はしますが、根っこの部分では、貧困からやむにやまれずシェルパ(大英帝国時代の植民地・ダージリンで手配した体の良い奴隷のような身分)となって命の危険を冒してまで高山に登り、兄弟・夫や仲間の死と向き合ってきた人たちの生き様を史実としてストレートに伝えています。
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