副題は「無人カメラがとらえた日本の自然」。自然界の報道写真家・宮崎学氏(1949年生まれ、長野県伊那谷出身)とその作品を紹介・解説した成書。キュレーターの小原(こはら)氏が宮崎氏にインタビュー取材して執筆した形式となっています。小原氏は1978年生まれなので、宮崎氏とは親子ほどの年の差ですが、自然と人間社会との関係に関してとても博識であることが分かります。宮崎氏については、雑誌(たとえば「岳人」2017年6月号の岳人プロファイル)などでもたびたび紹介されています。
本書の内容は幅広い話題を掘り下げていて密度も濃い。印象的な話題を列挙しておくと次の通り:スカベンジャー(掃除屋)の底辺に昆虫、日本では頂点に熊。加齢臭は死臭に準じるもの。仏教絵画の九相図。輪廻(「風雪のビヴァーク」で紹介されている松濤明の遺書を思い出す)。さまざまな動物がシナントロープ(人間社会と近いところで生息する動物)化してきている。「後は野となれ山となれ」は文字通り。戦時中に切り倒された山の緑は復活してきており、地方の衰退とともに里山はどんどんと自然の圧力に押されて野生動物が人間界に迫ってきている。等々。
エコサイクルを支える多様性のスケール、そして、人間活動と自然界の時間軸のギャップを意識しないといけないと痛感させられました。特に日本国民として原子力発電、かな。
【読了日:2017年10月19日】
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