前の日記(最近読んだ本「初登攀行」)に続き、私がちょうど生まれたころに活躍されていたクライマーの代表作のようです。
ちなみに、吉井氏は昭和12年生まれで、同じ年生まれの登山家には、
森田勝氏、佐伯邦夫氏、石井光造氏、内田嘉弘氏
などがいらっしゃるようです。(前回の、松本竜雄氏は、昭和6年生まれで、同年生まれには、芳野満彦氏、中西章氏。)
全部で10編(最後の1編は後から追加されたもの:当初は「垂直に挑む男」のタイトルで山と渓谷社から出版されていたとのこと)から構成されていて年月順になっています。それぞれのタイトルは「ライバル」「トップ」「パートナー」「大氷柱」「初登攀争い」「ザイルの仲間」「墜落」「オーバーハング」「壁から壁へ」「再出発」でして、一話一話がひとつひとつの登攀行に対応した読み切りになっています。その特徴的な内容がタイトルに反映されているので、漫画「岳」のように読みやすいのが、「初登攀行」との大きな違いかと思います。(比較すべきものではなかったかも知れませんが・・・)
場所はもちろんのこと、登場人物も全部実名でして、しかもかなり辛辣な人物批評的な文章も含まれています。著者ご本人もあとがきのところで、
「私はこの本のなかに、いっしょに登った仲間のことをいろいろ書いた。中には気を悪くする人もあるかもしれないし、そのために摩擦のおこるかもしれないことも覚悟している」
と記し、さらに
「しかし、私の書いたことは登攀した当時の偽らざる気持だった。これを私一人の胸のなかにそっと収めておくのも一つの美徳かもしれないが、それでは自分の気持ちを偽ることになってしまう。・・・(中略)・・・個人攻撃や中小は私の本意ではないのだ。」
と続けています。
確かに上記のあとがきが必要なほどの赤裸々なかきっぷりのところもあっりましたが、これこそが著者の青春だったんだ、ということが最後の方ではなんとなく分かってきました。(それにしても、当時の初登攀争いは、社会的背景もあるのでしょうが、自然相手というよりも人間対人間の「争い」「競争」「戦い」の様相が濃いことを再認識した次第。)
純粋(率直)で、気取るとか、隠しだてなんて似合わない人だったようです。
著者はすでにお亡くなりになっているはずだったので、インターネット(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E5%B0%BE%E5%BC%98 )で確認してみると、63歳のお誕生日を一ヶ月後に控えた2000年3月に、谷川岳一ノ倉沢滝沢リッジを登攀中に滑落死されたようです。
しかも、次のような説明がありました:
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吉尾氏は、60歳近くなってからフリー・クライミングに取り組んでいた。ヨーロッパアルプスで、外国人クライマー達が、オーバーハングをフリーで登っているのも見て衝撃を受けたのだという。クライミングジムでトレーニングに打ち込む吉尾氏の姿をよく見かけたものだった。しかし、吉尾氏のような高名なクライマーが、こうした真摯な姿勢を見せることは極めて稀であったと思われる。古の名クライマーも、クライミングジムの極端な前掲壁には手も足も出ないらしく、人前では決して登ろうとしない人が多かったようだが、吉尾氏はそうではなかった。無名のクライマーを先生と崇めて教えを請い、初心者向けのルートから始めて着実にグレードを上げていった。吉尾氏の人柄を現していたと言えるだろう。その姿に、周囲の者はいよいよ吉尾氏に対する尊敬の念を持ったものだった。
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最後まで青春されていたようですよね。自分に真似できるかなぁ・・・
nomoshinさん本当にマジで読んでいただいているんですね、
この頃の先人の初登攀争いは凄みとか人間味が出ていましたよ、
今登っている山の初登攀者時代の苦労を少しでも知ってもらえればありがたいですね、
今は山の本もかなり整理しましたがそれでも当時の記録本などは捨て切れずにまだ持っています、
マナスル登頂や植村さんのエレベスト初登頂などは捨て切れずに時々若き頃を思い出すように出しては読んでいます、
吉尾弘氏のは私の持っているのは初期の「垂直に挑む男」の方で「壁から壁へ」で終わりでしたよ、
この本は何度読んでも飽きないですね、今は冬のの一ノ倉沢は規制されていますが、当時は自由に出入りできましたよ、
>naiden46さん
前回分も含めて、コメントありがとうございました。
ヤマレコのお陰で、山書の蔵書が多い方が結構いらっしゃることが分かり、心強い限りです。
古典(?)を読んで、「温故知新」を感じています。歴史を知っていると、次にそばを歩くだけでも、愉しみが大きくなりそうです。
目下、石岡繁雄氏の「屏風岩登攀記」にはまっています・・・
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