中央分水嶺を辿り、地図上で足跡を朱線でつなぐ楽しみを私も持っていますので、この本は読まなきゃとずっと気になっていました。分水嶺モノとしては、私が知っている書籍は次の通りです(発行時期の古いもの順):
(1)「果てしなき山稜 襟裳岬から宗谷岬へ」、志水哲也、1985年5月、白山書房
(2)「日本の分水嶺」、堀公俊、2000年9月、山と渓谷社
(3)「分水嶺ひとりある記」、福田忠、2003年1月、風濤社
(4)「日本の「分水嶺」をゆく 単独初踏破の全記録」、細川舜司、2009年11月、新樹社
この他にも日本山岳会が創立100周年記念事業のひとつとして行った「中央分水嶺踏査」の報告書があるようですが、一般には入手できないようですし私も目にしたことがありません。上記で私が既読なのは、(1)(2)でしたので、今回(3)を手にしました。
まず、タイトルだけを見ると、著者が分水嶺を踏査したのかと思わずにはいられませんし、実際まえがきなどを読むだけだと、あたかもそのようにも思えます。ところが実際は違っていまして、線として分水嶺(=分水界)を踏査したのではなく、本州の中央分水嶺上の主要な山々に登った、というものです。なんだ、看板に偽りありじゃないか、ってのが第一印象です。基本的には登山道が整備された山のみを対象としていますので、存在感のある山でも登山道がないところや、あっても比較的マイナーな山には登っていません(e.g. 男鹿岳、台倉高山、小沢岳、柄沢山、御飯岳、高天原山、小川山、坊主岳、経ヶ岳、茶臼山、大棚入山、…)し、登山道があっても天候や体調等の事情で登頂をあきらめた山もいくつかあります(e.g. 和賀岳、豪士山、平ヶ岳、黒斑山、…)。中身の方も、基本的には個人的な感想を主体とした散文をまとめたものですので、どうというほどのこともありません。あえていえば、自作の句をそれぞれの山行の最後で披露しているのが特徴です。(自慢げなところは全くありません)
このようにみると、読むに値しない本と私が感じたかのように思われるかも知れません。確かに最初はそうでした。個人出版ならともかく…、みたいな。でも、著者のプロフィールをみてみると、貿易会社の役員さんをずっとやられているようです(最後は代表取締役副社長)。そして55歳で山歩き(分水嶺)を始めた、それも運動不足を解消したくて、ということ。そこで、全山行の日付と期間について、統計をとってみました。(そのような表が最初からあれば良かったのですがなかったので手作業で!) すると、分かったこと。1984年から始めて2001年まで18年間で分水嶺歩きに区切りをつけたようですが、この間の山行回数は101回で延べ142日間。年別では1984年から順に回数/日数で表記すると、1/2, 4/4, 4/4, 4/4, 4/4, 5/5, 4/8, 6/8, 6/9, 8/12, 7/9, 6/9, 6/10, 8/10, 9/12, 9/17, 7/11, 3/4となりました。現役役員だった1991年までは、年に4〜6回(最初の1984年を除く)のペースですし、退職後(?)も年6〜9回(最後の2001年を除く)のペースで、ずっと安定しています。また、季節別には、1〜12月で、1/1, 1/2, 0/0, 6/6, 18/24, 10/13, 6/11, 22/31, 9/15, 19/27, 9/12, 0/0となっています。冬は登らず、季節の良い時期、特に、5月(連休)、8月(夏休み)、10月(連休)の3ヶ月で6割近く(58%)を占めています。そして、年末(12月)と年度末(3月)はゼロです。日数別では、日帰り、一泊二日、二泊三日の順に、65回、31回、5回となっています。テント泊はゼロでして、山小屋(有人)か麓の旅館泊まり。
つまり、忙しくて休みがとりにくい会社役員が運動不足解消のために55歳(=今の私の年齢)から始めた趣味でも、18年間ペースを落とさずにこつこつ続ければ、ここまでできる、ということのお手本になっているということなのです。そこにこそ価値があると、納得しました。(但し、それにしてもちょっと残念なのは、校正不足なこと。地名、日付、標高などの事実部分で誤植が結構あるのです。)
次は、いよいよ(4)です…
## 今回はちょっと長めでして、すみませんでした。
nomoshinさんこんばんは。
線ではなくて、点だったわけですね
でもそこから著者の登山を始めた年齢と山行頻度についてのnomoshinさんの考察はなるほどと思いました。
上記で読んだ事のある本はありませんが、日本山岳会の「日本列島 中央分水嶺踏査報告書」は手元にあります。
こちら→http://jac.or.jp/source/bunsuirei.html
に記載のメールアドレスに購入したい旨を書いて申し込むと、振込用紙と一緒に送ってくれたと思います。
それにしても、この「分水嶺ひとりある記」は誤植が多いみたいですね。真ん中の東北地方の写真で真昼岳が真澄岳になってます
長野の名酒好きですね、きっと
長い駄文日記を最後までお読みいただいたようで、恐縮です。
日本山岳会編「日本列島 中央分水嶺踏査報告書」のご紹介ありがとうございました m(_ _)m
その上、真昼岳の誤植をいとも簡単に見破られたところは、tooleさんなら当然かも知れませんが、さすがですね。真昼岳は一度だけですが私も山頂に足を置いた思い出の山ですので、悲しいですし、東北の方からみたら、許せませんよね、きっと
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