「山と私の対話」　最近読んだ山の本

2014年07月07日 22:01山岳図書レビュー（書籍）全体に公開

　山や自然にもっと近づきたいと漠然とした思いを持っている人たちが刺激を受けるのにうってつけの図書かと思います。みすず書房から2005年8月に出版されていますが、「達人の山旅シリーズ１」の位置づけで、同時期に「シリーズ２」も出版されています。
　第1章「Ⅰ．ソロクライマーとして」、第2章「Ⅱ．アーティストとして」の2部構成です。編者である志水哲也氏の「ソロクライマーとアーティスト　―あとがきにかえて」をまず読んでから、他の方の作品を読み、そして、最後にもう一度志水氏の部分を読み返しました。このシリーズ企画がどういうきっかけで誕生したかにも簡単に触れています。
　シリーズ１の本書「山と私の対話」は編者の志水氏が選んだ13名の方に執筆を依頼していますが、本当は14人を選んでいたのかも知れません。というのは、もう一人（南裏健康氏）にも執筆を依頼したが断られたそうだからです。13名とは、本書の登場順に、山野井泰史氏、遠藤甲太氏、菊池敏之氏、田中幹也氏、中嶋正宏氏、鈴木謙造氏（ここまでが第1章）、（ここからが第2章）水越武氏、武藤昭氏、武川俊二氏、岩佐浩幸氏、勝峰富雄氏、松本宜親氏、松本紀生氏です。但し、主役（題材）が自分ではない場合もあって、主役（もしくは準主役）としては、岡田昇氏（武川俊二氏が執筆）、白川義員氏（岩佐浩幸氏が執筆）、門坂流氏（勝峰富雄氏が執筆）、星野道夫氏（松本紀生氏が執筆）が加わります。また、中嶋正宏氏と鈴木謙造氏は、故人なので、ご遺族の了解を得たうえで、編者の志水氏が遺稿集から文章を選んだものだそうです。
　どれを読んでも、その人たちの生きざまがストレートに伝わってきます。甲乙はとてもつけられませんが、私が一番大きな刺激を貰ったのは、田中幹也氏（2013年第18回植村直己冒険賞）ですね。最後の執筆者紹介を見ると分かりますが、実は、山野井氏、田中氏、岩佐氏、勝峰氏、志水氏の5人はみんな生年が一緒（1965年）です。野球の世界の松阪世代じゃないですが、山岳の世界で山野井世代とでもいうべきなのでしょうか？
　ちなみに表紙は辻まこと氏の絵です。みすず書房は、辻まこと全集も出版していますし、本当に良い本を出しますね。
【読了日：2014年7月7日】

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