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高尾駅から小仏行きのバスには、登山客は私ひとり、病院前から先は貸し切り状態となった。小仏バス停に着いても人影がない。
雨の降るなか傘を差して歩き出したが、車にも人にも会わず、山中あまりに静かなのでつい物思いに沈んでしまった。ふと気がついたら小下沢分岐に着いていた。そのとき何を思っていたのだろう、いま思い出そうとするがもうわからない。誰ひとり会わないままついに景信茶屋に着いてしまった。
人の姿が見えずひっそりしている。テーブルも椅子もびしょびしょ。頂上へ上がって見たら、雨具で完全武装した登山者が屋根の下に2組休んでいた。
景信茶屋へ戻って、茶屋前の屋根の下に座りゆっくりと昼食をとった。こうゆう日は何となく自分に似合うような気がした。屋根からは雨だれが滴り落ち、地面はもう濡れてしまった。いつもは賑わう広場のベンチにはいくら待っても誰も姿を現さない。
長い時間休憩してそろそろと小仏峠へ下り始めた。しばらくして後方から足音が聞こえ、トレランが追い抜いていった。妙に感心してしまった。いつもは邪魔に思うトレランだが、この日ばかりはそうでもない。そのうち背中まで泥を跳ね上げてまた1人追い抜いていった。こんな日にも走るとは立派な心掛け。
小仏峠に着いてしばし佇んだ。ぬかるみのなか傘を差してぼんやり城山のことを考えたが、相変わらず誰も来ず、結局そのまま小仏バス停へ下った。傘を差して転ばないようかなり気を配って歩いた。コンクリ坂を終えた所の水流が激しく流れていたので、浅瀬に入り汚れた靴を洗った。砂利道をのんびり歩いて行ったら、水場のあたりで登山者とすれ違った。雨具も付けず傘も差していないので、つい振り返って見てしまった。あれではずぶ濡れなんだが、どんな趣向なのだろうと首をかしげてしまった。駐車場に着いたら車が1台とまっていた。あの人のものだろう。戻ってきたら着替えてさっぱりするに違いない。なんとなくその人の気持ちが判ったような気がした。
小仏バス停に着いたらバスが3台並んでいた。こんな雨の日でもいつもの運行体制をとっているのだ。しかし、自分以外に誰も居らず、乗客は自分ひとり。発車時刻間際に乗ってきた近所のおばさんが、運転手に「こんな日でもからっぽで走らなくてはいけないなんて大変ね」と声を掛けていた。民間会社だからちょっと融通を利かせもいいと思うのだが、公共交通機関としてはそうもいかないのだろう。おばさんは摺差で下車し、また自分ひとり。
先月13日雷雨の中歩いた景信山も面白かったが、しとしと雨の降る景信山も、いつもと違った興趣があり、心までしっとりしてきて、なかなか風情があった。
雨の日はみんな足が遠のくようだ。でも奥高尾は自分にとってもう裏庭になってしまった。都心から出掛ければ丁度良い気晴らしになる。傘をさしてのんびり歩けば、見るものも考えることもいつもと違ってなかなかおもしろい。
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