年金と2000万円が話題になって思い出しました。
4月に奥多摩の軍畑駅を降りて青梅丘陵コースを歩いたときのことです。
車道をしばらく歩き、登山口に着いた時、その辺をぶらぶらしていたかなり年のいったおばあさんが近寄ってきました。
「この山はうちの山だ」
「頂上まで全部うちの山だ」
私にしきりに訴えます。
「やあ、そうですか」
刺激しないように穏和に応答しました。
「それなのによ、役所が勝手にこの道を造ってしまってよ」
傍には登山口を示す大きな柱が立っています。
「本当は、頂上へは別の道があるんだ」
私を山へ入らせまいとしているのだろうかと一瞬戸惑いました。
「こっちはちっぽけな年金で苦しいのに」
おばあさんは、なおも訴えてきます。
どうもお金が絡んでいるようです。そこで、
「もちろん役所からこの分のお金はもらっているのでしょう」
と尋ねてみました。
「いや、一銭ももらってないよ」
「だけど、土地を提供してるのだから、使用料を払うのが当然でしょ。役所へ掛け合ってみたらどうですか」
「話したことがあったけど、役所は、そんな金はないと言うだけだ、冷たいもんだ」
「それはおかしいですよ、もっと強く掛け合ってみたらどうですか、弁護士でも頼んで」
と話してみましたが、おばあさんにそこまでやる気力はもうなさそうです。
「ちっぽけな年金なんかで暮らせるはずないのに、ますます年をとるから困ってしまった」
「病気になったらどうすればいい?」
としきりに愚痴をこぼします。老い先短く、心細そうです。
おそらく国民年金でせいぜい月5万円程度でしょう。野菜などは自給できても暮らし向きは想像できます。
しかし、残念ながらここで話していて解決できる問題でもありません。
充分愚痴を聞いてあげたところで、
「ところで、この道を入ってもいいですか」
恐る恐るできるだけここやかに尋ねました。
「ああ、いいよいいよ、構わんよ、行って行って」
気持ちよく手を振ってくれました。心持ちさっぱりした様子です。
こうゆう状況の人達にとって、年金の他に2000万円不足しますよと言われても何のことかというところでしょう。別世界の話しです。
でも、現実は現実です。みなさん準備怠りなく一歩一歩2000メートル峰へ登りましょう。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する