赤ワインと白ワイン

今年に入ってから老人の身体に目覚ましい変化が起こった。
タイトルで連想するロマンチックな話ではありません。

（最初は尾籠な話）
１， 夜間頻尿
２， 便秘
この２つは、高齢者の多くが抱える悩みのようで、新聞では、スッキリ、とか快眠とかの字が躍って毎日ぶち抜き広告が出ている。それだけ患者（？）が多いらしい。自分もその例にもれずバッチリ当て嵌まる。悩みの種だ。

それでも、夜間頻尿はここ３年くらいで歴史は新しい。夜間３回位トイレに立つ。その合間に眠れればいいが、眠れないときはブラックホールへ落ち込む。嫌なものだ。
便秘は、歴史が古く、もうベテランの域だ。血圧の薬と一緒に便秘薬を処方してもらい、常用はいけないと言い聞かせながら常用してきた。時には最後の手段、イチジクなんとかの厄介になるときもあった。

ところが不思議なことに、年が明けた途端この２つの悩みが解消してしまった。正月からなんか狐につままれたような、夢を見ているような気分が続いている。何だろう、何が原因だろう、いろいろ考えても思いつかない。仕事、山行き、ストレス、食事など日常生活はこれまでとなんの変りもない。

（日記）
１月１日（金）　昨夜は１２時過ぎに就寝し、一度もトイレに立たないまま、今朝７時半に目覚めた。ぐっすり寝た。
１月２日（土）　夢も見ないでぐっすり眠った。２日連続は珍しい。
１月３日（日）　昨夜もよく眠れた。１２時就寝で６時過ぎに目覚めた。そしてまた眠って８時過ぎに起床、この正月は、よく眠れる。

喜ばしい現象だが、身体の妙な変化だから気になる。ひょっとしていよいよ終わりが近付いたので神様が最後のお恵みを与えて下さったのかと悪い想像もしてしまう。

（ここからワインの話）
最近、白ワインを飲みながら、はたと気付いた。そうだ、これか、赤ワインから白ワインへ、この変化が原因か、昨年と今年で変わったことは、これ以外に思い付かない。

３０歳台半ばから健康診断のたびにコレステロールが高いと言われ、６０才から血圧と合わせて薬を処方されたのだが、その後テレビや新聞で赤ワインはポリフェノール効果でコレステロールを抑えると盛んに喧伝され、それなら自分もと慣れない赤ワインを飲み始めた。それまで酒はあまり飲まなかったので、いわば養命酒代わりのようなものだった。

それ以来段々と深みにはまり、あれこれいろんな銘柄にも手を出し趣味にもなって楽しんできたところ、昨年終わりごろから急に赤ワインが飲みたくなくなった。新しいワインが届いてもいそいそと開封しないし、開栓の際にも心が弾まない。以前ならつい２杯目に手が出てしまうイタリアワインを口にしてもなんか美味しいと思わなくなった。

一方、白ワインは、たまに飲むことはあってもなんかジュースみたいだし、コレステロールと関係がないのでほとんど飲むことがなかった。しかし、赤ワインが駄目となると、止むを得ない、白ワインに移行するしかない。もう晩酌の癖が付いてしまった。量的には取るに足りなくても、日本酒（糖尿など）、ビール（腹膨張）、ウイスキー（喉頭がん）、焼酎（ワケあり）、それぞれ難点がある（と考えた次第）。

それで正月から毎日白ワインばかり飲んでいる。飲み慣れるとこれはこれで結構おいしい。安いものでも間に合うのが助かる。アルコールだから飲み過ぎはよくないが、少量ならリラックス効果があるだろうと自分に言い聞かせて楽しんでいる。殺菌作用が強いという話は聞いたことがあるが、頻尿と便秘に有効だなどとは、そんなわけのわからない話は聞いたこともない。

殺菌作用‼、その力だろうか。大腸のなかで悪い腸内細菌を退治する、白ワイン独特の作用で膀胱をのんびり休養させる。そんなことって冗談話みたいだ。

なにはともあれ喜ばしい現象であることは間違いない。山へ行くときに便秘の心配をしなくて済むようになった。便秘のまま山へ行くと苦しいものだ。かって槍ヶ岳から下山の折、トイレ、トイレと探しながらもいざ見つけると成功せず、結局高速道に入るまでそのことで頭がいっぱいだった。槍ヶ岳＝トイレの思い出だ、だから登山のときは前日に排便できるよう便秘薬を使用していたのだが、その必要もなくなった。夜のベッドで眠れずに老いの行く末を案じるのは暗いマンホールの中に落ち込むようなものだ。しかし今やぐっすり眠れる。目が覚めたら朝の６時、一瞬のうちに朝が来た感じだ。なにか晴れ晴れしい。

これは現在進行形の本当の話だが、ただ自分だけの一時的な現象かもしれない。一般的に通用する話とも思えないが、同じ悩みを抱える高齢者は試してみる価値があるのではないだろうか。量は少しだけ、ランチワイン程度が限度で・・・

医師「ああ、それね、老化現象が進んだだけですよ。そのうち自分でも気付かないうちに漏れてくるし、朝になっても永遠に目覚めなくなりますから。ご心配なく。」

自分「・・・・　・・・・　・・・・」