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登山詳細図に載っていて以前から気になっていた「逆沢林道ルート」だ。その林道の終点から尾根を登り、北側から景信山直下の階段の辺りに合流する。
もうこの年齢なので、初めてのマイナールートに一人で挑戦するのは、客観的に考えて顰蹙ものだし、自分の気持ちのうえでもちょっと心細いところがあるので、久しぶりに娘に同行願った。あまり頼りになるわけでもないが、一人ぼっちよりは心強い。
「大下バス停」で下車して、小下沢林道を関場峠に向かって延々と歩いた。こんな良い天気なのに両側を尾根に挟まれて全く陽が差し込まない陰気なジトジト道を1時間半、二人ともうんざりしたころ逆沢林道の分岐に着いた。ここは台風の被害がそのまま残って沢が荒れていた。
緩やかな坂道の逆沢林道を40分ほど歩いてようやく登山口に到着し、ここだけ日が入るなかで小休憩をし、尾根を前にしてようやく気持ちが山登りムードに切り替わった。とっつきの細い道が急カーブのこちら側とあちら側にふたつあったが、どちらも尾根を登って行くようなのでこちら側の細い道を登り始めた。あちら側の道がすぐ横に平行しているがどうも交わらない。こちら側の道がほんの少し尾根の下側に離れているので不安になり途中から尾根の背中にあるあちらの道へ移動した。こちら側の道はどこへ行くのだろう。
それはともかく快適に登って行った。そう、こうやって坂を登らないと山へ来た甲斐がないというもの、斜度もきつからず穏やか過ぎず適当だ、脚に手ごたえを感じ気持ちよい。自然林の紅葉がそこかしこに美しく、雰囲気がとてもいい。誰とも出会わない。
ああ、ここへ来てよかった、大した冒険はできないが、近場でちょっとした挑戦をしてみるのは楽しいものだ、毎度お馴染みコースも安心で楽しいが、やはり新しい冒険をして精神に活を入れないと老け込むばかりだ。
なんてことを思っているうち「逆沢の頭」に到着、老人の足で30分掛からなかった。雰囲気のよい木立の中でひと休み、地図上でいつも眺めてあれこれ想像していたピークがここなのか、あたりを見回し納得した。人の気配のない静かな空間、冬枯れ近い自然林がひっそりとしている。
部屋に居て「地図を眺めてあれこれ想像する。」これほど楽しい時間はない。やがて好奇心を抑えられず実際にその場へ足を運ぼうと準備する。そのときのわくわく感は堪らない。そして思い描いたとおりのピークに出会っていささかの満足感に浸る。山歩きの醍醐味だ。
ピークからは一旦下って、コルからの登り返しがすごかった。転げ落ちないよう四つん這いになって必死に登った。ずるずると滑るので、このルートを下りにとるのはかなり危険そうだ。
あれ、誰か降りてくるよ、と娘が声をあげた。前方に全く素人っぽい若者3人の姿が見えた。これは警戒警報を発しておかなければと思っていたら、なに、そこはもういつもの登山道だった。必死の登りもあっけなく終わった。終わったけれども・・・
ピークにいた頃からしきりにヘリコプターが轟音を立てて周囲を飛んでいたが、自分たちが登山道へ合流した時には、すぐ先の階段の上空あたりでホバリングしていた。登山道では登山者が列をつくって停止していた。やがて現れた隊員の説明によれば、けが人は担架に乗せたがすぐ釣り上げるのは無理なのでしばらく様子を見る、それまで待ってほしいとのこと、ヘリコプターは離れて行って遠くで旋回をはじめ、辺りは2時を過ぎて寒々しくなり始め、子供連れや若い二人連れなど行列の人達も次々と引き返して行った。自分たちも今日は頂上を目指したわけではないのであっさり下山することにした。
途中に娘曰く「ああ、やっぱりこの道は気持ちが楽になるなあ。」、たしかに身体に馴染んだいつものルートだ、これはこれで心底ほっとする。
高尾駅始発の特快に乗れたので、乗客がいないのをこれ幸いと取り損ねた昼食用のおにぎりをそっと食べた。
写真1 逆沢林道分岐(沢が荒れていて林道入口は途切れていた)
写真2 途中の紅葉(人気のない山中のはかない紅葉はとても美しい)
写真3 逆沢の頭(ピークに立つと気分がいいのはどこも同じ)
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