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今年は奥武蔵・秩父を重点的に歩こうと計画を立てた。まずは外秩父ハイキングコースを全部繋ごうと考え、これまで未踏の部分をこつこつ歩いてきた。最後に残ったのが「和紙の里〜笠山」間のコースで、ここを歩けば全コースが繋がる。そこで先週末に意気揚々と池袋発7時の快速特急に乗った。和紙の里8時30分着、余裕をもってスタート
出だしからいきなり躓いた。山と高原地図に従い和紙の里とお寺の間の狭い道を慎重に入って行ったらなんかおかしい。肌で感じるのだが、登山道の雰囲気が漂ってこない。道を間違ったのかなと地図を確認しても間違いはない、仕方なしに様子を見ながら進んで行ったら分岐に出会った。そこを右へ入る道端に捨てられたように置かれた「外秩父ハイキングコース」の例の案内板を見つけた。古びて土まみれだ。文字が薄くなっている。こうゆう道標って山中ではときどき見かけるけど、ふむふむ・・・
傍らに大きな看板が立っていた。「ここはハイキングコースです、バイクでの走行は止めて下さい・・。」という趣旨の内容、こちらも古びている。
これでこの道が正しいと保証されたも同然、安心して入って行った。だけど進むに従い道の形が薄くなり足元が荒れてきて、また不安が生じてきた。とうとう太い倒木が何本も行く手を邪魔して跨ぐのに苦労し、顔前には大枝小枝が張り出し頭部に当たる、道はほとんど消えた。後ろを振り返ると確かに道筋らしきものがかすかに続いているのだが、歩き踏まれた形跡がない。左手は谷、右手は背の高さの丘、そこに上がってみたが道はない。もうアウトだ、引き返すか・・・どうしよう
しばらく考えたが、引き返してどうする、他のルートを探すか、それは無意味だ、このルート以外に考えられない、それにもう大分歩いたからこのまま上方を目指せば車道に出会うのは間もなくだろう、戻って最初から車道を歩くのも馬鹿らしい、何とかなるだろう、危険な地形でもないし、まだ朝のうちだし、というわけで枝を掻き分け掻き分けしながら先へ進んだ。間もなく上方に木々の間からガードレールが見えたので、直前の急斜面を這いつくばってよじ登り立派な車道に立つことができた。
ほっと安心したのも束の間、地図上では車道を横切り上方へまっすぐ登山ルートが伸びているのだが、その入口が見当たらない。その辺をあちこち探し廻ったが全く発見できない。仕方がない、車道を上方へ向かえばまた登山道と交差するのだから遠回りでもそこまで歩くことにした。しかし歩き出してもやはり諦め切れない、こんな車道より登山道を歩きたい、山中に入れそうな箇所を目にしては試しに進入して藪漕ぎをしたり危ない斜面をずり落ちそうになったりを繰り返し、だらだらと時間を浪費した。今から考えても阿呆な行為だったと思う。
もう車道歩きにうんざりし始めたころ「外秩父ハイキングコース」の新しい案内板を見つけた。今度は大丈夫、やれやれようやく本当の登山口に着いたか、もう安心だ、それにしても地図上では下からこの地点まで登山道が直線状に伸びているのだが、ここでもそのルートの出口が全く見当たらない、地図と現況が全然一致しない、なんかおかしい。
後で出会った登山者に尋ねたら初めから車道を歩いてきたと言う、登山道がある筈だがと言っても妙な顔をされる始末、車道以外にルートはないような返事だった。そうしたら自分の探したルートはすでに廃道となったのだろうか?
それからは気を引き締めて頂上を目指し、雪の急斜面を登り切り2時に笠山頂上に到着、だいぶ時間をロスした。そそくさとカップヌードルを食べ2時15分下山開始、白石バス停までのCTは1時間、バスの発車時刻は3時57分だから自分の脚でも十分間に合う。楽勝気分で急坂を下ったら意外にも車道へ降り立った。
あれ、と思った。地図では車道などなくて登山道がそのまま下へ続いているのだ。しかし現況は車道のガードレールが邪魔をして下山路などどこにも見当たらない。左へ行けば堂平山という外秩父ハイキングコースの案内板と左は堂平山、右は白石という古い案内板があるだけ、どうしたものだろう、この日2回目のトラブルだ。
迷ってしまった。地図を取り出して検討し、下山路は自分の降り立った地点より右寄りかもしれないと思われ、それに右方向は白石だから結局は白石車庫の近くに降りるだろうと判断し、車道を右へ向った。歩きながら注意深く観察していたにもかかわらず下山ルートは一向に現れず、これなら引き返して安全な笠山峠から降りようかとも考えたが、もう大分距離を来ているし、引き返すと遠回りになって時間を食うし、このまま白石に向かって行けば何とかなるんでないか、など曖昧な気持ちでどんどん先へ進んだ。
だがこの車道が歩きにくい、道幅いっぱいに予想外の新雪が積もっている。足首まで積もった雪に靴がずぼずぼ埋まり歩きにくいことこの上ない、だだっ広い道に車輪の細い跡が2本深々と残っているだけ、登山靴の踏み跡がない、急ごうと思ってもなかなか先へ進まない。ミスした、早くこの雪道を脱出しないとバスに間に合わない、気が焦ってとにかく前へ前へとただひたすら前進した。だけど行けども行けども果てしない雪道、スピードが出ない、もう引き返すことはできない、車道は一向に下らないで完全に水平移動、白石集落にたどり着く気配もない、山と高原地図にこんな車道は載ってないし、わけがわからなくなった。心臓が故障しなければよいが
必死にラッセルの真似ごとを続けるうちに気が付いた。そうか、登るときに歩いた尾根はこの車道の右側になるから、この先で車道が右へそれれば登るときに横切った登山道と交差することになる、左へそれればバスの通る道路に下る、いずれにしろそろそろ1時間近く経つから決着がつくだろう、それにしても何で全面舗装の立派な車道を山中にやたら造るんだ、税金の無駄遣いじゃないか、維持費だけで大変だ、などと八つ当たりしながらとにかく頑張った。
果たして登山道との交差点に到着した。もう皆谷に下りるしかない、皆谷バス停のバス時刻はおそらく4時だろう、今は3時10分、ちょっと難しいかも、いつものペースで歩いていては完全に遅れる。駄目かもしれないが頑張るだけ頑張ろう、そう決めて登山道を駆け下りた。急いだ。トレランを真似て走った。転んだらおしまいだ、足元には気を付けよう。
WCのある分岐に3時30分到着、よし、大丈夫、ここから皆谷バス停までのCTは30分だから4時のバス時刻には数字的に間に合う。しかしこれまでCT通りに歩いたことがない。いつも必ず遅れる。油断してはいけない。もう雪のない乾いた舗装路を膝を傷めないよう気を付けながら小走りに急いだ。老いた駄馬に鞭打つような真似をして超高齢者がこんなことしていいのか、走っている自分が不思議だった。心臓はむしろ快調、3時50分無事皆谷バス停到着、よかった、余裕で間に合った。・・・これから下りはトレランしようか
小川町で始発の電車に乗り、やれやれ助かったとコーラを飲みながら煎餅をかじり、今日はふたつの予定外のトラブルに見舞われたが、よくぞ乗り切った、まだ疲労もしてないし、なんか若返った気分だ、小さなトラブルも終わってみれば楽しい、嬉しくなった。そしていつの間にか・・・・
「もしもし、終点ですよ。池袋に着きましたよ。」
車掌にやさしく肩をたたかれてしまった。
写真1 最初に見かけた道端の案内板
写真2 それを信じて藪漕ぎに突入
写真3 登山道の階段を上り、右側の雪の車道から戻ってきた。
コメントありがとうございます。
本当になんか同じですね。
帰りの電車の中で、ああ面白かったという達成感、
心も身体も解放された感じです。
これからも楽しく山歩きをしましょう。
通りすがりの若造の騒音をお許しください。
途中から首を傾げる部分が増えてきたので手元にある2020年版の当該エリア地図と、
ヤマレコで利用できるマップ(らくルート及びヤマプラ)を確認しましたが、
いずれにも『和紙の里とお寺の間の狭い道』が無く(らくルートにGPSのそれと思しき跡はありました)、
『お持ちの地図が古いのかな?』と思って過去の奥武蔵レコを拝見してビックリ!
1999年版をお使いではありませんか?だとしたらいくら何でも古すぎます。
道なんか変わってて当たり前です。
こう申し上げると返ってくる大体のお言葉は、
『新しい地図を買う金がない』
『アプリの使い方が分からない』
だったりしますが、それらを惜しんで怪我すれば地図を買うよりも高くつきますし、
最悪の場合は次の山行は2度とやってきません。
また地図が新しくとも、コースによってはヒドイ道でも赤実線で掲載されています。
昨年末、同じく奥武蔵でそれを体験しました。
私が歩いた道ですと、一部は自治体の公式情報すら全く無く探しづらいものではありましたが事前の調査は十分ではなく、
『帰って来られたのは、たまたま運が良かっただけ』と自身の準備不足を大いに反省しております。
『また妙なトラブルに陥った』と冒頭で仰っていますが違います。
ご自身が進んでトラブルに向かって行っているようなものです。
nibinさんの悲報が我々の糧になったりしたら悲し過ぎます。
ご自身が楽しく山歩きを続けるためにも、今一度振り返っていただきたいと思います。
長文失礼いたしました。
ご忠告ありがとうございます。
次の山雪は2度とやってこない、
おお、怖いですね、
実は、私も途中で気づいていました、
まあ、子供の冒険ごっこですね
不謹慎ながら面白かったです。
私も山頂まで登山道1本だと思ってたコースで途中で林道にぶつかったときは軽くパニックになったことがあります。
前日に地図を眺めていて意味がわからない水平移動区間があったので何でだろうと思ってたのですが、それが林道でした。
それにしても後半のズボ雪は御愁傷様です。私なら間違いなく半泣きで言い訳探しにキーッてなってます(笑)
でも不思議なものでそういうのって良き思い出になります。実際は大変な思いをしたのに、あのときは楽しかったな、「良くやった俺。」ってなりますものね。
まったく同感です!
奥武蔵は林道(いや車道)との戦いですね。
車道の雪道には本当に腹が立ちました、まだこんなに雪が残っているなんて!
おかげでアドレナリン全開になり、
その後のトレランにつながりました。
この楽しい思い出は絶対忘れませんよ。
私も奥武蔵は好きなので興味深く読ませていただきました。
ジオグラフィカの地図を確認したところ、nibinさんが歩かれたコースが特定出来ました。
笠山から白石車庫へ高度差約100m下ると林道萩平笠山線に出ますが、その林道を北へ延々と歩かれてしまったようですね。
ヤマレコ・ヤマップに白石車庫から笠山へ登った最近の記録が載っていますので、雪のために林道から白石車庫へ下る道を見落とされたのかなと思います。
奥武蔵などの低山は林道工事・伐採などで変化が激しく、私も予期せぬ林道に出て驚く事がしばしばあります。
今はネットで最新の地図が閲覧出来ますので、お手持ちの地図に林道を書き込んでから出かけるのも一つの対策かなと思います。
コメントありがとうございます。
萩平笠山線に降り立った時に、笠山峠経由で下山しようとも思ったのですが、山歩きを始めた当時に白石車庫から直接登ったルートが懐かしくなり、それに拘ってこんな結果になりました。
1個所これかなと思った下山口があったのですが、わびしい感じなので間違っていたら引き返しの登りが大変だと思いパスしました。
ご指摘の山行き記録を探してみます。
笠山からの下山は以前歩いたコースだからと下調べをしていなかったのがまずかったかなと反省です。
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