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外秩父ハイキングコース歩きも完了したので、あとは奥武蔵の他の地域を自由に歩けることになった。解放されたような嬉しい気分で、さてどこにしようかと毎日楽しく地図を眺めてきた。まだ歩いてないコースがいくつかあるうち、元気なうちにやっておかないといつ何がおきるかわからない年齢なのでちょっとハードなやつに挑戦した方がよいかと思い、武甲山〜小持山〜大持山を歩くことにした。下山は20年前に歩いた妻坂峠〜名郷バス停を予定した。
池袋を5時59分発の準急に乗り、所沢駅始発6時44分発の特急ちちぶに乗り換え、秩父駅には7時41分に到着し、登山口の一の鳥居までタクシーを利用した(3020円)。途中、横瀬駅から徒歩で向かう登山者の姿がおおぜい目にしたが、老人には真似ができない、1時間半も車道を歩けばそれだけでくたばってしまうよ、とてもとても、とその時は運転手と笑い合ったのだが・・・
武甲山は20年前に1度登ったことがある。同じ登山口からだから何となく気やすい気持ちだったが、見通しのない杉林だけの道が頂上まで変化なく続いているので途中で嫌になった。登山者はものすごく多く、今日は塔ノ岳もさぞやとつい馴染みの山を思い浮かべてしまった。まあ、今日は武甲山が目的ではないからそれはそれでトレーニングだと考え、頂上を踏んだ後、手前の広場で靴を脱いでゆっくり昼食をとり、その先の歩きに備えた。おにぎり、ぶどうクルミのライ麦パン、お汁粉パックはどれも美味しくて元気が出た。
ハードな予想はしていたが、これ程とは、多少甘く見ていた。アップダウンが激しいうえに急坂で難所も何か所かあって老人向きではない。武甲山からシラジクボまで238m下り、小持山まで207メートル上る、そこから大持山までにもアップダウンが思いのほか多い、危ない岩場で途方に暮れた時もあったが、幸いそんなときに限って登山者が偶々来合せてルートを確認できたり、どうにかこうにか大持山へたどり着けた。
最近は、急斜面に付けられた細いトラバース道が本当に怖い。道を踏み外せば谷底へ真っ逆さまに転落、落ちてゆく自分の姿が目に見える、どうもバランス力が弱くなってきた気がして仕方がない、それでそんなときは必死に丈夫な木の根っこ等を握りしめバランスを失わないよう神経を使っている。今日もそんな細道が半分崩れかかった怖い場所に差し掛かった。その先も非常に細くなってカーブしているのでここはルートではないかもしれないと思い、少し引き返して目の前の長めの岩場をよじ登るのだろうかと考えたり、それもなんか危険そうだな、やはりあの崩れかかった細道かな、嫌だなあと思案していたら、たまたま岩場の上に登山者が現れた、横の方だよ、と2人連れが声を出しながら、岩ではなくてさっきの細道を下ってきた。岩を登っても道に出るんじゃないの、と気軽に言う、それならと登りかけたがやはり危ない、とっかかりが少ないからずり落ちそう、ここは違う、まだ細道の方が危なくないかも、勇気を出して自分も何とか細道を通過した。このときはマジ怖かった。この恐怖感は自分だけのものかもしれない、以前はこんな程度の道で恐れをなすような臆病者ではなかったのに
道がなくなった。胸の高さの平べったい岩が屏風のように目の前に立っている、辺りを探したが道は見当たらない。さっき先行者の姿がこの辺に見えたし、今は前方を歩いているし、おかしいなと岩の反対側を覗いたら端にロープが垂れ下がっていた。衝立のようになっている。ひやひやしながら薄い岩を乗り越え、何とか反対側の地面に降りることができた。ずっこけて足の骨を折ったらどうしよう、マイナスの連想が湧いてきて困る。
とにもかくにも大持山に無事到着し、心底ほっとした。ここへは20年前に名郷バス停から鳥首峠を経て登って来たことがあり、今日の下りはその時と同じく妻坂峠を経由して名郷バス停まで歩く予定だからもう安心、一休みして元気が出て広い尾根の坂道を気持ち良く下った。妻坂峠に着いたときは4時近かった。バス停までCT1時間半だから5時43分のバスに乗れるだろう、8時前には帰宅できる、妻に怒られないで済むだろう。
さて、ザックを背負い道標をあらためて確認し最後の区間を歩き出そうとしたら、ふと足元に壊れた文字板が目についた。無視しようとしたが重い2個の石で動かないように止めてあるので、何だろうと思ってよく眺めたら、これから向かう道路が通行止めになっているので迂回せよ、との注意書きだった。車、オートバイのほか歩行者もダメだという、半分は千切れてなくなっていたが趣旨はわかった。だけど大事な注意書きがこんな状態で放っておかれるだろうか、ひょっとして2年前の台風の時のが捨てられているだけで現在は大丈夫なのではないか、それとも誰か不届者が悪戯をしているのではないか、強行突破という方法もあるのだが、あれこれ考えてみた。迂回してくれと書いてあるが、迂回路そのものについてはなにも指示していない。適当にやってくれという歩行者任せである。こんな山中に都合の良い迂回路などある筈もない。そうならそうと大持山手前の分岐点であらかじめ注意書きを掲示してくれればいいのに、そうすれば鳥首峠の方へ迂回するという方法もあったのに、まあ、それも大変だが、役所めいたところがやる役所めいたやり方で、もう一歩の親切心がない、などまたもや偏屈老人が腹を立ててみたが、仕方がない、朝の登山口である一の鳥居へ下山する他に方法がない。楽しみにしていた懐かしのロードを凱旋できなくなり、予定外の行動を強いられたのでやはり不愉快だった。
一の鳥居への下山は40分で済んだからそれは問題ない。そのあとがちょっと迷う。タクシーを呼ぶべきか、万一のことを考えて朝のタクシーで電話番号の入った連絡票は貰っておいた。しかし、登山口では電波が届かないから電波が届くところまで歩いてくれと運転手は言っていた、それもかったるい。第一、帰りもタクシーというのはなんか後ろめたい、軟弱者、卑怯者のような気がする、金を持っている振りをして、だから爺は嫌なんだよ、そう言われそうだ、いやその通り、自分は登山者だ、横瀬駅まで歩こう、大丈夫だよ、平地を歩くだけだよ、お菓子を食べて休んだら元気が出た、さあ、と気合を入れて出発、地図を片手にドンドン歩いた。凄いセメント工場の間を通ってどんどん歩いた。スピードを緩めたらおしまいだ、ガクンと気も緩むだろう、そして老人歩きになる、暗くなる、トボトボと歩く80過ぎの老人が目に見える、哀れな姿だ、そんなイメージを払いのけるべく必死に歩いた。1時間20分で横瀬駅到着、頑張った、ご褒美が待っていた。その8分後に特急ちちぶ号に乗れた。よかったあ、背もたれを倒し、冷たいコーラとお菓子で今日の一日を振り返った。
結果オーライ、こんなことがなければ横瀬駅と一の鳥居間など歩くこともなかった。地図上の赤いサインペンがまた長くなった。久しぶりのハードな山歩きはやはり充実感が半端ない。
次はどこへ行こう・・・とにかく危険なところは回避しなければ
写真1 捨てられたように落ちていた注意書き、気が付いたからよかったが、周りの道標に気を取られ見逃すところだった。
写真2 武甲山から下る途中に眺めた前方の小持山、あの登りが待っているのか
写真3 小持山へ登る途中に振り返って眺めた武甲山、美しい姿だがあの登りが待っているのだ。
こんにちは。
似たような経験はよくありますね。
自分は一つの山域に三週くらい続けて赤線繋ぎをするので、特に初回の情報収集に気をつけてます。
国立公園内の正規ルートであればビジターセンターHPなどで足りますが、そうでない場合は直近のレコを探して、ルートの通行止め、荒廃、迂回路や残雪、泥寧などに備えます。
これからもお気をつけて登山を愉しんでください。
ご忠告ありがとうございます。
今回は、武甲山〜大持山の区間しか調べていなくて、林道までは気が回りませんでした。台風から大分経っているので。
これからは気をつけることにします。
大変でしたね。
確か小持山・大持山の間は以前にトレランで滑落して亡くなった方がいらっしゃいますのでご無事で何よりでした。
妻坂峠から名郷への下りはその先の林道が3年前だかの台風で崩落して通行止めになっています。人間が無理すれば歩けない事もないですが、管理者からしたら無理して事故が起きたら責任問題なので人間も通行止めにしている筈です。以前それを知らないでウノタワ側から下りたら「こりゃ大変」と言う区間に出くわしました。
武甲山一の鳥居からのタクシーの呼び出しですが、時間や日付によりますが、そこをちょっとだけ武甲山側に登ったカフェに有線の電話があってお借りする事が出来ます。無料ですが、どうせ待つのだからとそこでジュースをいただきました。
或いは一の鳥居から少し横瀬駅方面へ下ると延命水と言う場所があって、そこだけはスポットで携帯の電波が入るよとタクシーの運転手さんに教えていただいた事もあります。カフェが開いていない場合はそれもありかと思います。
一の鳥居と横瀬駅の間は長くてしかもトラックも走るので歩いた事がなく、いつもタクシーを利用しています。
いろいろ情報ありがとうございます。
計画段階から場合によっては(疲労困憊)一の鳥居へ下ることも頭に入れていたので、ルート変更そのものにはあまり抵抗はなかったのですが、注意書きの置き方がやや雑で危うく見逃すところだったので、ちょっと腹が立った次第です(いつもの癖で最終段階でほっとして気が緩むという自分の責任ではありますが)。
タクシー呼び出しのことは情報助かります。このコースは、武甲山へ登る区間以外は大変趣があって、もう一度逆回りで出かけてみたいと考えております。その時は、もう横瀬へは歩きたくないです。やはり遠いですから次回はタクシーにします。でも一度は歩いてみるべきかと、日曜日のためか、工場から騒音は響いていましたが、トラックは見かけませんでした。それとも夕方は走らないのかも
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