「だいぶ良くなりました。地下鉄の階段の登りで息切れがなくなりました。」
そう言ってズボンの裾を捲り上げて向う脛をさらけ出した。
「あらー、本当によくなったのね。」
びっくりしながらしばしじっと眺めてから、そっと脛をなぞってくれた。
珍しい、今どきの医者が患者の身体に触れることは余りないのに
患者は医者に直接触られると嬉しいものだ。職業柄の行為だとしても本当に心配してくれていると思ってしまう。
若い女医さんなら尚更うれしい(今時こういうことを書いてはいけないが、昭和の男だからつい言ってしまう、見逃してください)。昔は胸や背中に押し当てた手の上からとんとんと叩かれ、聴診器を胸にあてられじっと聴かれるだけでなんか病気が治った気がしたものだ。
「心エコーの結果は届いていないけど、画像を見る限りたいした異常はないようだけど・・・」
報告待ちか、なんとか逃げられるか、心臓が悪化してたらちょっと、と心配していたのだが、検査はついさっき行なったばかりなので正式のレポートが担当医に届いていないらしい。だが電子カルテなのでPCで即時に画像を見ることができるのだろう。何事もなければよいのだが、山行を続けられますように
「利尿剤は飲み続けて貰いますよ。」
「え!・・・」
それは予想外、もう治ったのだからいいのでは?
「飲み続けるとクレアチニン値が少し上がりますからね。」
これまで正常範囲ぎりぎりだったクレアチニンの値が、今回はつま先分だけはみ出している。Hの印の横に赤ペンでOKとサインしてくれた。でもこれでどんどん上昇したらその先どうなるのだろう。
「あのー、結局のところ、人工透析なんかになるんでしょうか。」
「そうね、・・・200歳の頃にね。」
すました顔で告知された。うーん、まあ、いいか
いつもの薬と一緒に2ケ月分を処方された。毎日飲む薬がだんだん増えてきた。高齢になると仕方ない。
でも身体は見違えるように軽くなった。節食しても増え続けた体重が元に戻った。地下鉄の階段もトン、トン、トンと上れる。「俺は本当に83歳の老人?」、思わず自問自答してしまう。
そんなこんなで今月は一度も山へ行ってなかったので、一昨日の日曜日に雨予想も構わず景信山へ出かけた。20日余りのブランクに過ぎないのだが、もう何年振りかという感じだった。森の中で深く深く息を吸い込み、やっぱり山はいいなあ、生きている幸福感に浸った。これなら大丈夫、秋になったら今年まだ足を運んでいない塔ノ岳へ登ろう。
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