先週土曜日、昨年8月の猛暑日にバテバテになったコースにリベンジだぞ、と思って出かけたら、そのコースはトレイルレースの当日だった。
10時に前坂で腰を下ろして休憩していたら、女性2人が駆け下りてきた。胸にゼッケンを付けている。トレイルコースの表示板を眺めながら「これ、日にちも書いておけばいいのにね。」と話しながら水分を補給してすぐ、さあーと吾野駅方向へ駆け下りていった。あっという間に姿が消えた。2人とも高橋尚子選手のようだった。
その後しばらく誰も来ないので、今日が本当にレース当日なのかなと思いながら歩き出したら、そのうち来るわ来るわ、ぞくぞくとランナーが現れて自分の横を触れ合わんばかりに勢いよく駆け抜けていく。斜面に付けられた細い道では崖側に立たされて危ないことこの上ない。山側に退避しようとまごまごしてたら突き飛ばされそうだ。とにかく鼻息が荒い。だけどさっきの女子ランナーに大分遅れをとってるよ、大の男なのに
今更引き返すのもなんなので、まあ運が悪かったと諦め、だけどこちらにも歩く権利はあるからね、遠慮しないよ、道を譲る気はないからね、ちょっと腹を立て用心しながらも威厳をもって進んでいった。
まあ、来るわ来るわ、切れ目がない、危ない急な岩場の下りをポンポン飛んで行く、それ一歩間違えたら完全に骨折だよ、悪くしたら頭を打っておしまいだよ、余計な心配をしてしまう。孫達にはさせたくないものだ、といってもわが息子も中学生のときおばあちゃんに会いに自転車で箱根を越え北陸の海まで走ったことがあったから、あの時は事故が心配で心配でたまらなかったけど、若いときは無茶なことも大事な経験なのだろう。
そのうち妙な変化が起き始めた。ランナーが待ってくれるようになった。老人がエッコラエッコラ登るのを横に退いて待っていてくれる。さっきまでは遠慮なく擦り抜けて行ったのに。あれ、行儀がよくなった、こんな老人のため、邪魔して申し訳ない、団子で来るので先頭が待つと後続も立ち止まってしまう、本当に申し訳ない、かといってこちらが待てばそのまま永遠に立ちんぼだ、気が咎めても進むしかない。
人のよさそうな青年に、「本当にすみませんね。」と声をかけたら、「いやいや、ハイカー郵船ですから。」と情け深い言葉が返ってきた。(優先だね、本当にこのワープロはだめだ)
おお、そうだったか、主催者からそう言われているのか、有難い、少しは気が楽になった。
大高山からの延々と続く急坂を下るときには、山では登り優先だから少し遠慮しようと足を止めて譲ってもそれに応じないランナーが増えてきた。一息つくいい機会になってる感じだ、ちょっとお疲れのご様子で、木に掴まってはあはあ息を吐いているランナーも居る。
いくつかピークを越え、腹も減ったので甲仁田(吾野の頭)で昼食とした。少し支尾根へ引っ込んだところで食べながら眺めていたら、ほとんどのランナーがピークにたどり着いてやれやれとひと休みするか、そうでなくともゆるゆるとして先を急がない。もうタイムなんかは気にしてなくて、完走できればいいのだろう。
雰囲気がみんな平和的で、最初の頃に出会ったグループのように攻撃的でない。お互いおしゃべりなんかしている、ああ、それで結構、人生そんなもんだよ、結局はどちらもお遊びさ、人生もレースも
そんなことを考えながら下って行ったが、あとからあとからまだ大勢走ってくる、このランナーの群れに終わりはないのか、あきれ返った。そのうち娘さんが1人のんびり登ってきたので、
「これ、出発地点はどこなの。」
と尋ねてみた。
「あら、飯能中央公園スタートで、ここをずーっと行ってから吾野駅へ下りて、それから向こう側の山をまたずーっと飯能へ戻るんですよ。」
指差しながら生き生きと教えてくれた。まだ経験が浅そうだが元気だ、どう、そんなコースにチャレンジしてるんですから、わたし頑張らなきゃ、誇らしげに上気した顔が物語っている。頼もしい、心から頑張ってと応援した。
やがて、途中の吾野駅でリタイヤかな、と思わせる疲れ切ったランナーに出会うようになり、ちょっと間をおいてからふらふらのおじさんを見かけたのを最後にランナーの姿が消えた。もう天覚山の手前だった。
まあ、なかなか面白かった。いろんなランナーを眺めて退屈しなかった。おかげで、前坂から天覚山までの間、昨年グロッキーになった鋸の歯ルート、リベンジなったかどうか、環境が異常過ぎて判定できなかった。もう一度挑戦しないと
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