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(1日目)
土曜日は家で休息をとることにした。そして2日目のために一計を案じた。昼食も夕食も自分で作ろう。妻のご機嫌を取っておけば、2日目に山へ出かけても機嫌を損じず、帰宅後ご馳走が待っているかもしれない。いつものさえない山小屋料理風とは違うかもしれない。
「昼食はそーめんにしよう。夏にぴったりだ。」
妻はそーめんが好きでない。だけど貰い物のそーめんが残っているので片付けないといけない。夫がつくれば食べるだろう。
これまでそーめんもそばも茹でたことがない。だけど袋の説明書きを読んだら、あまりの簡単さにびっくり、ラッキー、あっという間に出来上がった。冷やして食べるソーメンは実に美味しい、これから休日はいつもこれにしよう。
「夕食はオムレツにするからね。」
自分の好きな料理だ。作り方はネットで調べた。妻に訊けば手取り足取り付きっきりで教えてくれるだろうが、それでは自分の手で包丁を握れない恐れがある。自己責任でつくりたい。初心者向けの一番シンプルそうなのを選んだ。
「口を出さないでよ!」しっかり念を押した。
まずジャガイモを小さく切って煮る。ああ、簡単だ、皮むきは子供のころから母に褒められていた。玉ねぎを粗く切る。やはり涙が出た。これにひき肉を加えフライパンで炒める、おお、うまくいった、ここまでは順調、さてこれを卵で包むのだが、どうやって包むのだろう、ネットのレシピは「溶いた卵を入れて混ぜる。」と書いてあったが、なんかそれはちょっと好みに合わない、混ぜるのではなく卵で包みたい、その方が上品で美味しそうだ、だけどフライパンの中はすでに具が占領しているし、溶いた卵を入れても包むスペースがない、困った、ついに
「ちょっと、ちょっと、これどうすればいい?」
「もうひとつフライパンを用意すればいいのよ」
あっさり言う。それは当たり前だ、自分だってそう考えたんだよ、でもちょっとした料理に2つもフライパンを使うなんて大袈裟過ぎて違うのでないかと思って訊いたのに
仕方ない、ほかに方法もなさそうなので、小さなフライパンにサラダオイルを入れて、さてと、溶いた卵を半分入れ、半熟になったら具を入れて、次は包み込むか、フライ返しでこうゆう具合に・・あれ・・とっとっとっ・・・大変、具がばらけてしまった、フライパンの中で散らばった、いくらやっても包めない、これは不可能だ
「わあ、大変、メチャメチャだあ!」
妻は待ってましたとばかりに飛んできた。
「大丈夫よ、貸して」
さっとフライ返しを奪い取り、崩れたオムレツを強引にズルズルとお皿に移し変えた。そして皿の上で形を整え始めた。成程そうゆう手もあったかと無知な夫はちょっと感心、仕上がり良好、お礼を言ってそのオムレツを献上することとした。
次は、自分の食べる分だ、ウーン、やはり包むのはうまくゆかない、皿の上で整えるのも道を外れている気がするし、面倒くさい、エーイ、みんなゴチャゴチャに混ぜてしまった、レシピにはそう書いてあったし、どうせ自分が口にするのだからどうでもいいや、栄養はかわらない。
といことで、一日目は昼も夜も妻に感謝されて終了、作戦がうまくいったようだ。
(2日目)
日曜も月曜も殺人的な猛暑予報だ、超異常猛暑のなか超高齢者が山へ行くのは、わざわざ熱中症になりに行くようなものだ。そう考えたが、日曜にやはり出かけた。その代わり一番行き慣れた景信山にした。先週も歩いてきたばかりだ。
小仏バス停を11時過ぎに歩き出した。もう猛暑真っ最中、いつもは渓流沿いの車道でひんやりした空気が流れてくるのだが、それがない。15分車道を歩いてから登山口を登り始めたときはそんなに感じなかったのだが、登るにつれやはり身体が熱くなり汗が滝のように流れ落ちてきた。水分補修に努めたが追いつかない。体温の上昇が自分でも感じ取れるようだ。意識しないが頭もぼんやりしてきて力が出ない。いつもと違う。通いなれた道だから足がひとりでに前に出てしまうが、脳が意識してそう命じているわけではない。身体中が熱い。頭の中も熱い。熱中症になりかかっているのか、ふと考えた。でももう少し様子を見てから、と思いながら水分補給をした。高尾駅前のコンビニで買った冷たいお茶がとてもおいしい。
支尾根近くになったところで気分が悪くなってきた。胃がむかつくような感じ、水分の取りすぎか、辺りが何気にゆらゆらするような気もする。フラフラしながら支尾根に上がったところで堪らずベンチに腰を下ろした。ゆっくり休憩して引き返すかどうか決めよう。
高尾駅前のコンビニで買ったフルーツ詰め合わせの小さなパックを取り出した。まだ冷たい。数切れの桃と甘い多量の汁を全部平らげた。もう最高に美味しかった。これは効いた。心身ともにシャキッとした。生き返ったようだ。お菓子を食べ冷たいお茶を飲み、20分休憩して出発した。ほぼいつもの調子に戻っていた。それからは、猛暑と闘いながらなんとか歩くことができた。この猛暑の中、低山にもかかわらず結構な登山者がいた。皆さん元気だ。
城山では久しぶりに今年初めてのカキ氷を食べ、身体の熱気を芯から取り除くことができた。おかげで日影林道をバス停まで途中の渓流で身体を冷やしながら楽しく下山することができた。
帰宅後は、ものも言わず浴室へ飛び込み、シャワー全開、ああ、倒れることなく無事帰れてよかった、あとは冷え切ったビールと・・・
あれ・・チヂミ?・・あまり好きでないけど、まあ、いいや、枝豆と冷ややっこがあるし、それに大好きな3色ご飯だ、美味しい味噌汁もある。昨日の策が当たったね
(3日目)
今日は、昨日山で着た衣類の洗濯を自分でした。結婚して54年、これまで洗濯物は籠に放り込んでおけばよかったが、最近はそうばかり言っておれない、もし妻に何事か起こったら自分でやれないと自分が困る、そこで先月から洗濯機の操作を覚え始めた。マニュアルも読んで最近かなり慣れた。そこで先週から妻の下着まで一緒に洗濯するようになった、干すときちょっとこそばゆい、妻は平気な顔をしているが、夫に下着まで洗ってもらって妻のプライドがそれを許すのだろうか、以前の妻なら絶対「止めて!」と言った筈なのに、それともそう考えるのは古い古い男の勝手な時代錯誤的思考だろうか。脱線してしまったが、現代ではこれで家庭の平穏が保たれればいいとするしかないだろう。
妻は、朝から美容院へ、昔から通っている美容院なので、美容師も客の多くもすでに老人だ。我が家族全員が一番楽しかった頃住んでいた町内の人と一緒になったと言う。その頃のあの人この人の消息をたくさん教えてくれたとのこと、聞いて唖然とした。時の流れは実に速く、状況は激変するものだ。
こうゆうわけで三連休に1度は山へ行けた、夫婦も相変わらずだ、この猛暑と年齢を考えれば、生きていることがなにより、よかった、まだ大丈夫だ。
写真1 日影林道から高尾山を望む 暑そう
写真2 日影林道 ここからは全部日影の道
写真3 作業道下から一丁平を見上げる
あのコンビニのフルーツ詰め合わせパックは私も持っていきますよ。暑いバテバテの時に、持ってきてよかった、といつも感じます。(口を開けてそのまま食べるというお行儀の悪さですが)
次回日記も楽しみにしています😊
おはようございます。
おお、流石! などと言って妻の顔をたててあげるのもひとつの作戦ですね。シンプルハートの妻はまだ夫の真意に気づいていません。といっても料理となるとSOSは必然的な流れなのですが
あのフルーツパック、最高でした、本当に生き返りました。駅前のコンビニで偶々目にしてよかったです。顔を空に向けてパックを振り振り最後の一滴まで喉に流し込みました。あの甘ったるい砂糖汁! 下界では大半残すところですが、もう獣になった感じです。これからの必需品ですね。
猛暑真っ盛り、お気を付けください。
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