「そこよ」
あごをしゃくられた。
そこ流し台には食器洗いの洗剤が。何を考えて返事したのだろう、でも、確かに中性洗剤だ、ちょっと考え、自分の部屋へ引き返して改めてネットで確認した。・・・家庭によくあるエマールがいいですよ、と書いてある。
「エマールは?」
「いつもの棚よ」
最初からこう訊けばよかった。
今日は、出かける前に昨日景信山登山で着用したウールのベースレイヤーを洗うつもり、一昨日買ったばかりの新品なので自分で丁寧に洗ってみたい、買ったとき手触りがとてもよかったので大事にしたい、乱暴な妻に任せたらどうなるかわからない、洗濯でチリチリにした前科もあるし
ネットで教えられたとおりぬるま湯に浸しそっと洗い、丁寧にすすいだ。ビジョビジョのを手に持ったら、「はい、寄越して」の声、洗濯機に入れてぐるぐる乾燥させその辺の竿に引っ掛けておくと言う、「ちょっと、止めてよ、何を馬鹿なことを言い出すの、台無しになっちゃうよ!」とあきれ声で言ったらプイと離れて行った。
何事も登山と同じ、こつこつゆっくり丁寧に行うのが大事だ、厚めのバスタオルに小さなウールを包み外から押しながら水分をとり、さて、次は平干しだ。だがその場所をどこにしよう、困ったあげく乾いた浴槽の底に広げた。我ながらなんか変だなあと思ったが仕方ない。家を出がけに2時間の強制換気ボタンを押しておいた。でも登山着だからきっとこんな手間をかける必要はない筈だとも思う。みなさん上手に洗っているに違いない。今はオフイスでこんな駄文を書いているが、帰ったらどうなっているだろう。楽しみと不安が半々。
(帰宅後もまだ乾いていないので自室の床の上に寝かせてある、同じ毛同士だからなんとかなるのでは)
昨日、景信山へ向かう尾根を登っているときに腕時計がジージーと音を出して震えた。それは街歩きでもよく起こり3回位鳴ると止まっていたので、不整脈を感知したのだろと気にしないできた。しかし、この時はただならぬ震動と音の気配、緊急地震警報のような不気味さ、いつまでも止まらない。あわてて腕時計を見てびっくり、心拍数が167を示していた。そんな数字をかって見たことがない。ああ、どうしたのだろう、正直怖くなった。心臓発作を起こしたんだろうか、さっきから胸が少し痛いような苦しいような気がしないでもなかったけど、そういえば先週登ったとき大分タイムが悪かったので、今日は頑張ったのだが、それが悪かったのだろうか、あわてて立ち止まりじっとした。すぐに下がり始めたが、これだけ上がると低下速度がかなり鈍い、なかなか下がらず風のため汗冷えしてくる、ある程度下がったところですこし歩き、また立ち止まりを繰り返し、ようやく120まで下がってほっと一息ついた。いつもは120を越えないように用心し、丹沢などではよく心拍数をチェックするのに、まさか景信山でこんなことになるとは想像もしていなかった。油断していた。年齢のことをもっとまじめに考えなければいけない。
景信茶屋はすっかり壊されてなくなっていた。ベンチも座る板が外されて使えない。古ぼけたテーブルと残置物で荒廃した感じ、寂しいものだ。まだわずかに残った隅の壊れかけたベンチに年配者がぱらぱら腰掛けて名残惜しそうに食べていた。思い出に耽っているのだろう。25年前はじめて登ったとき、おーい、瓶ビールもあるってよ 、と嬉しそうな声をあげながらトレイにビール瓶とコップを載せ仲間のところへ戻ってきた登山者の姿が今でも目に焼き付いている。年数が経つとはこんなものか
嬉しいことがひとつあった。時間に余裕があったので、先週雪の影響で道がどろどろになったため行かなかった城山へ足を伸ばした。そして城山下の巻き道入り口に設置されていた頑丈な通行禁止柵が撤去されてたことを先月北東尾根から城山へ登った際に気付いていたので、帰りに何年振りかで巻き道を歩いてみた。大きな陥没場所が2ケ所あったが、横に歩ける道が出来ていて危ないことはなかった。小仏峠からのルートが2つあるのはやはり嬉しい。残る未開通ルートはヤゴ沢ルートだけ、ただここも工事準備が整っている様子だった。
写真1 浴槽底に平干ししたシャツ(次はもっと良い方法を考えよう)
写真2 景信茶屋の跡(上方に見えるのは頂上の建物、茶屋の姿はない)
写真3 巻き道の陥没状況(この手前の陥没では少しだけ高巻く)
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