お疲れさま

あれ？
うう、痛い、
なかなか外れないな、
ギﾂ、ギﾂ、ギギギﾂ
もう、エイッ！

ああ、やっと外れた、フー
いつもより痛かったなあ

今日は山へ行かないので久しぶりにパスタをつくり、食後の歯磨きをしようと義歯を外したところ

あれ、なにこれ？
金具の間になにやら余計なものが挟まっている、
この金具は、１本だけ残っている左奥から３番目の上歯（第一大臼歯）に引つ掛けているのだが、食べ物の残滓にしてはおかしい、

何だろう？
ひっくり返しながら目に近づけて眺め、
「ギャー！」
思わず悲鳴を上げた。

歯だ！　歯だ！　歯だ！

大事な大事な最後の１本、それが挟まっている、この歯を心の支えにしてきたのに、抜けてしまった。なくなってしまった。
散々に侵食された生歯の無惨な有様、その先に輝くセラミックの被せ物
ああ、どうしよう
ベロンと舌でなぞっても上顎には１本も歯がない。
血がドクドク流れ落ちてくる。

「大変！大変！」
妻のもとへ駈け込んでも如何ともし難い。
同病に悩む妻は、ただ
「ああー、あらー」
と憐れむのみ

まあ、仕方がない、いつかはこうなるとわかっていた。
明日になったら歯医者へ電話しよう。
それにしてもいま下の歯を治療中でその費用に悩んでいるのに、さらに義歯を作るとなったら一体どれだけお金が出て行くのだろう。

やがて出血も止まった。
義歯を上顎に当ててみた。
おや、いけるじゃない、ピッタリ口蓋に嵌るぞ、金具のところに隙間はあるけど。
おっと、落ちてきた、それはそうだ、支えがないから、
それじゃポリグリップでも塗ればいいんでないか、ガッチリと
それで当座は間に合わせるしかない。くよくよしても始まらない。

それにしてもボロボロになってしまったなあ、私の生歯君
よくぞ頑張ってくれた、本当に有難う。
丁寧に供養させてもらいます。