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2024年12月16日 23:30老人と山全体に公開

負けて嬉しい

白内障の手術を受けてからから1ケ月経った。猛暑が終わってから嫌な歯の治療や軽い腰痛、眼の手術などがあって気分が晴れず、何をするにも動作緩慢、精神弛緩状態に陥っていた。自分もいよいよ老人病に入ってきたような日をずるずる過ごしてきた。

今月6日、術後の診察でベテランの女医さんから「きわめて順調ですよ、これで診察を終了しますね。」と言われ少し気が晴れた。もう山は解禁だろうと解釈し、昨日ようやく登ってきた。2ケ月振りだった。

脚も弱っているので、武蔵横手駅から釜戸山を経て飯能アルプスを天覚山までアップダウンし東吾野駅へ下る計画を立てた。早朝の寒さを避け、駅を11時にスタート、こんなに遅いのは景信山以外ではありえないのだが、血圧など身体に気を配った。

最初の登りではやはりいつもと違い身体のバランスがややぎこちなかった。しかし1時間後に釜戸山頂上へ着いた時には以前の調子に戻っていた。丁度12時、ポカポカ日当りの良い頂上で昼食をとった。飯能アルプスに日当りは期待できないので意外に儲けた気がした。心地よくおにぎりとバナナを食べた。何気に眺めているとここの標識が面白い。右方向は武蔵横手駅、左方向は武蔵横手駅と書いてある、ちょっと待てよ、自分は左右どっちから来たんだっけ、同じ似た雰囲気の道だから昼食後のだらんとした頭で一瞬戸惑った。なんか子供の山のようだ。そこから歩いて30分弱で飯能アルプス縦走路に突き当たった。あら、ここにベンチがあるから次はここで食べてもいいかも、念のため写真を1枚・・

「あんたどこから来た?」
おや、気が付かなかった、縦走路に一人のご老人が立っている。
「はあ、釜戸山から」
「うーむ、・・・」
ご老人の不審な面持ち
「あ、武蔵横手駅から」
「あ、そう・・・いや△□×〇〇山へ行きたいんだけどね、ここへ来てどちらへ行くか迷っているんだが・・」
ウーン、オスタカヤマみたいに聞えたけど、あれは奥多摩だし、いやそれはタカノスヤマだ、なんかカタカナ名みたいに聞こえたなあ、どこだろう、
「えっ? なに山ですか」
「△□×〇〇山なんだけどまだ遠いのかな」
ウーン、・・・あれこれ付近の山に頭を巡らしてはっと気づいた。
あれだろう、漢字と呼び名が全くバラバラの山「多峯主山」のことだ。
「飯能の方にある山ですか」
「そうそう、まだ遠いのかな」
「そうですね、ちょっと遠いですね」
1度しか歩いてないのであいまいな記憶しかないけど、安全策をとってそう答えておいた。
「いや、今日はちょっと歩いたことのないところと思って来たのだがアップダウンが激しく参ったよ、いつもはあっちの方を歩くんだけどね」
あっちの方とは顔振峠のある尾根をいうらしい、あっちとこっちでは雲泥の差がある。かなり疲れたお顔、かなりご高齢だ。
「2年前の猛暑のときここから飯能駅まで歩いたけどバテバテになりましたよ」
「成程、いや、途中に住宅街の上を通るのでそこから下りてバスに乗るつもりなんだがね」
ああ、あの住宅街ね、2年前その家並みを見下ろしながら昼食を食べたことがあった。あそこまで大丈夫だろうか、そんない遠くないと思うけど、大分お年寄りだし、自分とどっこいどっこいだろう、念のためどちらが年上か聞いてみよう。

「いまおいくつですか」
「89歳だよ」

ぎゃふん、これには魂消た、そんな高齢者が本当に一人で山を歩いているんだ。いや驚いた。

改めてしげしげと観察してしまった。上背があるすくっとした背中、ザックも衣服も決まっている、ダブルストックを持ち颯爽と立っている。ただお顔にしわがかなり、それが唯一年齢を表しているようだ。現役の頃はおそらく指導的地位に就かれていたのだろう。毅然とした雰囲気が漂う。

「いやー、すごいですね、本当にお元気ですね」
「まあ、まあ」
「私はまだ85歳ですよ」
「おお、仲間じゃないか」
嬉しそうに微笑んでくれた。
「いやいや、この歳で4歳差は大変なことですよ」

本当にそうだ、4年は過ぎてみればあっという間だが、実際はとても長い、今年は長い1年無事に生きられるだろうか、と心配するほどだ。

負けた、この人には負けた。強烈なフックを食らったようなものだ。負けたけれど嬉しい、上には上がいる、こうゆう人を実際に目のあたりにして本当に嬉しくなった。勇気をもらったような気がした。自分は89歳になってもこんなに颯爽と山歩き出来るだろうか、自分のその姿をイメージしようとしてもどうも難しい。でもコツコツと、何事もコツコツと気張らずにやっていればなんとかなるかもしれない。


話を続けたかったが別れた。その後、ご老人は計画とおり歩くことができただろうか。自分は東峠で時間が迫り、東吾野駅へ車道を下った。まあ、久しぶりの山行としては上出来だったことにしよう。とにかく勇気や希望をたくさん貰った。ありがとうございます。何にもまして貴重な一日でした。


写真1  釜戸山頂上

写真2  その先に山岳オートバイの練習場

写真3  こんな車道をのんびり下った。


※山名は、「トオノスヤマ」でした。
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