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ただ冬山や長期縦走となると荷物も重くなるので食材は軽くしたいし、夏の縦走などは更に日持ちのすることが条件に入ってくる。なので最近は山料理のレシピ系の本やブログなどを読み漁り、日々研究をしている。
その中でよく見かけるのが麩の料理。仙台麩丼なんてものを見かけたのだが、読んでみると
『麩とは小麦粉のグルテンを固めたたんぱく質の塊で、それを肉に見立てている』
などと書いてある。でも『それって美味いのかよ!?』って思ってしまう。だって所詮"フッ"でしょ。味噌汁にグッタリと漂うただの輪っか。味もなく、フニャフニャして歯ごたえもないアレ。そんなイメージしかなかったからだ。
しかしある日そんな麩を見直す出来事があった。昼ごはんを食べに近所の商店街に行った時の話である。新しく東北地方のアンテナショップがオープンしており、地方牛の牛丼ランチの看板が出ていた。
『体重減らせ!でないとクライミングでビレイする(ロープで支える)とき吹っ飛ぶ』と相棒から言われていたので、メタボな食事を避けていたのだが、『登山後はたんぱく質を摂らなければならない』と理由をつけて2人でフラフラと店に入った。
店内は明るい木の内装で値段が高めの地方の食品が並び、いかに拘りがあるのかといううんちくが書かれさまざまな説明が書かれている。カウンターとテーブルがあって軽食が食べられるようになっている、いわゆるアンテナショップで、ピュアな感じが漂っている。
カウンターで話をしている
『化粧の濃いお姉さま』と『犬を抱いたおじいさま』を除いて・・・
飲食店のカウンターになんで犬がいるんだというツッコミはさておき、
『きゃっ可愛い❤うんうん❤この子ったら❤そうですよね〜❤』
と明らかに水商売風の接客が行なわれている。絶対おじいさまは、お姉さまと話がしたいがために、犬を連れてきて通っているに違いない。自分はキャバクラにでも間違えて入ったのだろうか?
店のコンセプトとのギャップが著しく、激しく不安になった。
とりあえず、地方牛の牛丼をたのんだが、
『はーいっ済みませーん❤』
とやってきて一言
『はーい❤』
と箸置きを置くのに一言、
『どうぞ❤あっすみませーん❤』と箸を置くのに一言
猫撫で声で"細かく"接客されるので、なんだか緊張する。待っている間もカウンターで行われている異世界の会話が落ち着かず、どんな料理が出てくるのか心配になってきた。
そして・・・出てきた料理はお膳の上にちょっと小洒落た器に盛られた牛丼と漬け物、そして地方のでっかい『麩』の入った味噌汁であった。
牛丼の方は普通である。確かに吉野家の牛丼などとは全然違い、肉もしっかりして、うまいのだが、牛丼にしてしまった時点で、B級グルメの味でしかない。山でさえ3千円の和牛すき焼き(2人前)を作るような私にとってそれは満足のいくものではなかった。
しかし、味噌汁の麩に口に入れると・・・
『じゅわっときた!!!』
((((;゚Д゚)))))))
その本来ほとんど味はないであろう麩に味噌汁が染み込み、噛むたびにジュワッと口の中に広がる麩の甘みと味噌汁のハーモニー・・・オニオングラタンスープに入っている厚切りのフランスパンがヒタヒタになっている状態と言うとイメージが付くだろうか?いままでのイケてない"フッ"のイメージは霧散した。
『これは使える!!!』
テルマエロマエの古代ローマの浴場技師である主人公が、タイムスリップした現代日本で風呂ネタを発見し、新しい浴場のアイデアを膨らませる時のように、頭の中では山料理のイメージが構築されて行った。
店を出るときに一つ買って帰ろうかと思ったが、あまりの値段の高さと、これ以上お姉さまと会話を交わす勇気がなく、結局買わずに店を出てしまった。
で、結局スーパーでそれらしき仙台麩を買ってみた。これは油麩と言って油で揚げてあり、油の甘みとボリューム感があって一般の麩とは違う。中国料理のお粥に油条(ユージャオ)という揚げパンを入れて食べるスタイルがあって、さっぱりとしたお粥にコクと歯ごたえを加えるのだが、それと同じような原理である
さて、麩の味噌汁から思いついたのは
『仙台麩の味噌鍋』である。
特に寒い時期は、テントの中で鍋を作るのだが、大抵は白菜をベースに鶏肉か豚肉の鍋。はたまたおでんとさっぱり系ばかり。スキヤキもいいのだが、愛する山を守るため、最後に余ったタレを『処理』する拷問のフィナーレを考えると、頻繁にはできない。
そんなこんなで似たようなメニューばかりになってしまっていた我が家にとって、仙台麩の味噌鍋は、新境地にして、新食材の山料理だったのだ。
さあ、せっかくなのでレシピを紹介しよう。
材料は
・仙台麩
・鶏肉ぶつ切り
・ネギ
・白菜
・かきゆり(ユリ根をバラしたやつ)
・干し椎茸
・味噌と鶏ガラスープの元
作り方は材料を煮込むだけ。
ただかきゆりは溶けるので後から入れたほうが良い。早速八ヶ岳の赤岳鉱泉で作ってみた。
寒い冬のテント泊であるが、スープと味噌をたっぷり含んだプルンプルンの仙台麩を口に頬張り、じゅわ〜じゅわ〜と味噌と麩の甘みのハーモニーを楽しみながら、鍋をつつくのは最高である。ホクホクのかきゆりもなんとも言えない。そして・・・ここでは日本酒をちびりちびりやるのがいい。
別に料理自体にこだわりがあるわけでは無い。私の場合は登山に対し、山頂を踏むことより、山旅としてトータルに楽しむトコロにこだわりがあって、その一つのピースとして、楽しく美味しく食事の時間を過ごすということを大事にしている。蝶ヶ岳や、常念岳から槍穂高連峰に沈みゆく夕陽を見ながら食事をする時など最高である。
レシピにいろいろと思索を巡らせる必要が出てくるが、それはそれで一つの面白さなのである。
こんにちは
以前のイノキチくんとの山行のお話も大変興味深く拝見させていただき、ありがとうございました
今日は、地元、仙台麩が登場でしたのでコメさせていただきました
グルメなcajaroaさん、さすがお目が高いですねー
いつの間にか仙台麩という商標がついていたんですね。ずっと油麩、と呼んできました。
昨今B級グルメで油麩丼(親子丼の鶏肉が油麩になった版です)が有名になり、今日はヘルシーに行きたいという時にも、非常時の備蓄用食品としても重宝していますよ
肉じゃがや野菜炒め、麩レンチトーストなどもいかがでしょうか?
micremonさん
こんにちは
油麩は、東京でもそこらへんのスーパーで「仙台麩」として普通に売ってまして、昔からあるけど、気づいていないだけなのかと思っていました。山料理の本に紹介されているくらいなので、全国どこでも手に入る食材なんですね。
様々な味付けができそうですので、いろいろ試してみたいです。まずは”肉じゃが”、”油麩丼”からやってみたいと思います!
おっしゃられた麩フレンチトーストって、冗談かと思ったのですが、
ネットで検索したら、本当にあるんですね。チョコレートかけてる人もいる!すごい!
仙台麩のパッケージの裏にはオニオングラタンスープというレシピも紹介されていました。肉に見立てるだけでなく、パンに見立てることもできそうで、活用範囲が広そうです。
このような長文及び、イノキチの話も読んでいただき、ありがとうございました!
m(_ _)m
cajaroaさん、こんにちは。
毎回大変楽しく読ませていただいております。
蝶ヶ岳・常念岳から槍穂高連峰に沈みゆく夕陽を眺めながら、私は大好きな甘酒🍶を飲んでみたいです😋
私の場合、山で過ごす時間は、家事や仕事でのストレスを忘れさせてくれるとても大切な時間なので、日常の家事仕事である料理は一切したくなくて、何とか簡単に済ませる事ばかり考えてます(^_^;)
前回の山旅では、魚肉ソーセージの内袋を簡単に開ける方法を思いつき、外袋に小さな切れ込みを入れ、そこに楊枝を一本忍ばせ、食べるときに内袋の上部半周位楊枝で突ついて、反対側に引っ張るとツルッと剥けて、難なく食べる事が出来1人盛り上がっていました😁
山で美味しそうなお料理を食べている方がいらっしゃったら、cajaroaさんかもしれませんね。
その時には是非イノキチも連れて行って下さい💚
勿論、本人(ん❓本猪かな(笑))の同行は無理かと思われますのでぬいぐるみ🐗で☺
ak0211さん
こんばんわ
コメントありがとうございました。
甘酒いいですね〜。我が家でも企画は上がっていてやり忘れているのを思い出しました。今度やってみようかな。
うちの場合、男の料理は理科の実験であるというノリなので、抵抗が無いこともありますが、テント泊で、1日の行程を短くするので、『すごくヒマ』というのも理由だったりします。
縦走などだと、朝5時に出て、昼前につくことがほとんどなので、寝るまですることが無いんですね。最近は本なんかを持っていくこともあります。
魚肉ソーセージはそんな開け方があったんですね。学生時代は男も女もみんな口で噛み切っていたような気がします。先っちょは潰れてしまったりするので、そのままの形でバナナのように向けるのはちょっぴり嬉しかった記憶があります。
おお、でかいイノキチは連れてですか。ご飯を食べられなくなってしまうので、それこそ魚肉ソーセージの出番かもしれません。あ、チーカマもいいですよね!
いつも読んでいただきありがとうございます!
cajaroa さん
おはようございます。(^-^)/
いつも話の展開が面白くて
ついつい読み込んでしまいます。
可愛いイノキチの出演も嬉しい!
cajaroa さんの日記を読んだ日から
大ファンになりました。(*≧∀≦*)
仙台麩。。。
たかが“フッ”かと思っていたけど
目から鱗です。
フレンチトーストが大好きで
休日の朝はよくやりますが
私も色々試してみますね!
次回も楽しみにしてます。
sionさん
こんにちは
コメントありがうございます。
私の日記はしらない他人が登場するので、
一歩間違えて大変なことにならないようにしているのですが、
やっぱり正直毎回日記を投稿するのにドキドキしています。
でも人間って面白いので書いちゃいます。
(^^;)
イノキチも、
その周りの自分を含めた人間が面白かったりするんですね。
ラッセル泥棒おじさんとか
麸レンチトーストは油麸ではなく、車麸でやる人多いみたいですね。
冷静に考えると小麦粉なのでまあ、たしかにありなんだな。と思います。
まだ、甘い系に踏み込む勇気が持てないので、
まずはごはん系から攻めてみようかな?
いつも読んでいただいてありがとうございます!
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