若い時に書いたと思われる「タベイさん、頂上だよ」に比べてかなり晩年に書かれたエッセイ。
生々しく闘病の模様が描かれているが、淡々としていると言うか、年の功か、文章にキレとか余裕を感じる。
印象に残る言葉が各所にある
以下抜粋
山に行く女も病にかかります。しかし、かかっても歩き、登り、歌い、食べ、笑い、故郷のために少しでも力になりたいと思っているのです
庭の桜だって葉が落ちても枝だけで冬を耐え今また芽ぶいているじゃないか。焦るでない。受け入れろ。受けて立て。
太陽を見送りまた迎える。この繰り返しだが自然の中でこの瞬間に立ち会えることはそんなに多くない
わたしも怖い。だが、わたしが怖がっていることを知られてはいけない。皆、顔面蒼白で震えているのだ。ここを乗り越えるまで励まさなければ。焦ってはいけない。落ち着け。皆がパニックになっている時こそ冷静になれ
髪も随分と薄くなってきたなー。なんとなく病人くさい人相になった。これはダメだ。家に帰ったのだから出来るだけ動かなければ。
がん研有明病院に入院した。主治医の先生から手術に関しての丁寧な説明がある。翌日の外出の許可も頂いた。「行先は松山」と言ったら、一瞬先生が絶句していた。
わたしたちくらいの年齢になると、「親の死後の整理が大変だったとよく聞くから身辺整理しておかないとね」と言う話題も出るが私はそうは思わない。そうでなくても限られた時間しかないのだから、生きているうちに歩けるうちにいろいろなところに出かけ、いろいろなものを見ておくために時間を使いたい。家にこもって身辺整理する時間がもったいない。遺された人、ごめんよ
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