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登山をやる以上、避けて通れないのがクマ対策だ。幸い、今のところクマと鉢合わせした事は無いが、マーフィーの法則に照らし合わせれば「起こり得る事はいつか起こる」。
特に2023年はクマのニュースが多かった。自分のクマ対策は熊鈴のみ。もっと抜本的な対策をと思っていた時に本書に出会った。
アイヌ文化に造詣の深い片山龍峯さんが、65年にわたり北海道でヒグマ猟をしてきたプロの狩人である姉崎等さんにインタビューする形で進む。
インタビューは何故クマ撃ちになったのか、狩人はどんな服装で山に入るのか、どんなものを食べ、どこで寝るのか、クマという生き物について、アイヌ民族とクマとの関係性等と広がって行くが、核心部分はやっぱりタイトルにもなった、「クマにあったらどうするか」を突き詰めた第5章だ。
姉崎さん曰く、本来クマは山に住む生き物ではなく、人間とテリトリーが重複していた。人間が里を作りクマを山に追いやった。群れで行動し、道具で大木を切り倒し、毒矢で仲間達を射止める、そういう人間の所業を垣間見てきたクマの遺伝子には、「人間は強い生き物」だと刻み込まれていると言う。クマにとって人間は怖い。だから、基本的に人間を避けて暮らしている。と同時に自然界ではクマは強い生き物だ。人間は怖いけどやたらに逃げない。これが鹿や兎なら誰に対しても弱い生き物なのでとにかく逃げる。クマは強いので怖い人間を見ても踏み留まる。実際の所、人は一人ではさほど強くないし、特に銃がなければクマに勝てないのだが。つまり、縄文時代からの先人達のお陰で「はったり」が効いている。一般ハイカーは銃も毒矢も持たないが持ってるかもしれないとクマは考えるのでむやみには襲ってこない。
童謡の通りに森の中でクマと出会ったとする。視線を逸らして背中を見せて逃げ出す行為は、人間がクマを怖がっているとクマに伝えてしまい、「あ、こいつ実は弱いんだな」とクマに悟られてしまう。はったりが破られてしまう。大変だが、じっと睨みつけ、時に大声で威嚇して、クマに気圧されないようにしないといけない。
尖った棒をクマに向けてはならない。攻撃されたと勘違いされてしまう。攻撃されたらクマも腹をくくって反撃に出る。枝葉のついた木々をお祓いのように振るのは自分を大きい存在に見せるので効果がある。ベルトのようなものを振り回すのも良い。クマは何故かヘビが嫌いなので、ベルトがヘビに見えて少したじろぐ。
出会ったクマが人食いクマだったらどうなのか。その場合、ハッタリは既に見破られていて、人を餌と認識してるので一目散に近寄ってくる。だから人食いクマは倒しやすいと姉崎さんは言うが、我々は鉄砲を持ってないので、この場合は万事休す、諦めるしか無いが、せめて抵抗するなら上述した事を試すしか無い。
つまり、人を襲ったクマは絶対に殺処分せねばならないと言う事だ。人は意外に弱いと他のクマに教えるかもしれない。いとも簡単に人を襲うのを他のクマが見てしまうかもしれない。昨今のクマ問題では、クマを殺すのは可哀想と言う論調があるが、もし本当にそんな事をすれば、人間は気楽にハイキング出来なくなる。それは困る。もっと真面目に書くなら、林業や山里に住む人にとっては死活問題である。
仮に、登る予定の山域でクマが出て人が襲われた、そのクマがまだ捕まっていない、そういう状況ならその山域の登山は控えた方が無難だ。
自分はストックを武器代わりにしようと考えていた。あぶないあぶない。素人の浅知恵って怖いね。他にも参考になりそうな情報がてんこ盛り。良書な気がします。
とにかく、クマと鉢合わせしたら睨みつけて気合で何とかするのが最善だ。機会があればやってみよう
。。。て、やれるか!(笑)
※なお、本書で書かれるクマとはヒグマを指しているので、本州に棲息するツキノワグマでは当てはまらない可能性がありますのであらかじめお含みおき下さい
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