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写真2：「新登山口」から稜線の途中。今は立派な道ができているのだろう
写真3：大佐飛山山頂。黒滝山以降はずっと吹雪で快適な雪稜歩きはできなかった
この話はネットの情報と登山の関係の話題である。
大半の皆さんはこれから登る山の状況は事前に調べるだろう。
昔だと情報源はガイドブックや山岳関係の雑誌など紙の出版物に限られていたが、今はインターネットが主役であろう。今と昔では情報量、最新性に圧倒的差がある。
富士山や北アルプスなど有名な山は、紙の出版物の時代からたくさんの人が登っているが、中には「紙の時代」はほとんど登られなかったが、ネット上での情報登場以降に盛んに登られるようになった山がある。私が知る代表例に栃木県北部の大佐飛山(おおさびやま 1908.4m)がある。
大佐飛山は男鹿山塊の最高峰で、男鹿山塊では男鹿岳(おがたけ 1777.1m)が300名山で最も有名だろう(ただし登山道は無い)。登山道がある日留賀岳(ひるがだけ 1848.9m)もそれなりに名が通っていると思う。それに対して大佐飛山は山域最高峰でありながら登山道は無く、里から最も山奥に位置して藪が深く、栃木県内では最秘境、最難関の山の一つだった。昔はごく一部の藪山マニアが細々と登るくらいで、おそらく年に10人も登っていなかったと思う。昔の大学ワンゲルの世界であった。
当時は今は廃道となった塩那林道がまだ生きており(ただし路面状況は最悪で普通車通行困難だった)、大佐飛山への最短取り付きである瓢箪峠まで車で入って山頂まで藪漕ぎ往復が定番であった。これだと林道から山頂までの道のりは約2.7kmと比較的近距離で済むのが大きなメリットなのでこのルートは常識的判断だろう。林道使用が前提なので強制的に無雪期登山となり、笹中心の強烈な藪漕ぎが必要となる。
しかし塩那林道の廃道化が決定してバリケードが設置されて以降は一般車両の通行可不可能となり、大佐飛山へ登る人は極端に減ったと思われる。この頃、私は大佐飛山は未踏であったため、日留賀岳から藪を漕いで塩那林道に出て瓢箪峠から大佐飛山を往復しようと考えるようになった。日留賀岳への偵察も一度行ったが、林道までの尾根はかなりの藪の濃さで、幕営装備を背負ってこの藪を突破するのを考えると実行を躊躇せざるを得なかった。そうなると藪が埋もれた残雪期にこのルートを行くのが得策だろう。あれこれ考えていたのは1990年代後半くらいからだったと思う。
その後、インターネットが一般社会に普及して個人での情報発信の敷居が下がった時代が到来した。そんな中、2000年代初めに栃木県内の地元の登山者が残雪期に百村山、黒滝山経由で大佐飛山を日帰りで往復した記録が公開された。この記録が現在主流となったルートの最初の例かどうかは分からないが、この記録を起点として栃木県内の複数の登山者が立て続けに大佐飛山日帰りを成功させ、秘境だった大佐飛山が一気に近い存在になった。
この後、情報が県外にも拡散して徐々にこのルートを登る登山者が増えていき、近年では残雪期の週末には悪天でない限りは必ず登山者がいるほどの人気の山になった。年間の登山者数で言えば昔の数100倍くらいにはなっているだろう。ネットが無ければ短期間でこれほど急激に登山者数が増えることは無かっただろう。
この例のようネットの影響力は非常に大きい。ただし、新たなルートの情報が広がったらどんな山でも盛んに登られるようになるかと言えばそんなことはなく、人々が登る意義を見出せなければ登る人はいない。大佐飛山は山塊最高峰でそれなりの標高があったこと、秘境と呼ぶにふさわしい山であったこと、残雪期なら展望が開けた稜線歩きができることなど、人気を呼ぶにふさわしい条件を兼ね備えていたと言えよう。
おまけ
現在、大佐飛山の登山口は「新登山口」と呼ばれる場所である。以前は尾根と林道が交差する地点が登山口で、グラグラする不安定な梯子がかかっていた。私は2008年4月に大佐飛山に登ったが、林道走行が夜中だったために登山口の梯子を見落としてしまい、林道をさらに進んだ箇所で別の梯子を発見してここが登山口だと誤認してしまい、そこから登った。道は無かったが藪も無く、どこでも自由に歩ける状態で稜線に到着した。
この時の山行記録を自分のHPで公開したら、その後に地元の登山者が私が斜面に取り付いた場所を「新登山口」と命名して案内看板を設置し、現在に至っている。「新登山口」は「旧登山口」よりも稜線歩きの距離が1.7�劼曚秒蚕未気譴燭掘⇔啼擦瞭刺�が広い区間が長くて路側駐車の容量が大きいことが、新登山口の利用が主流になった理由だろう。驚いたことに最新の地形図ではこの「新登山口」の道が破線で表記されていた！
自分が歩いたルートが新たなルートとして一般的になるのは格別な喜びである。
そのような経緯で新登山口と名前が付けられ、地図にも記載されたとは嬉しい限りですよね😄
私は2019年の3月下旬に尾根末端の光徳寺から登りました。私の足では日帰りは無理なので、黒滝山頂上から少し降りた鞍部でテン泊。翌日大佐飛山をピストンしました。
新登山口の存在は知っていましたが、ノーマルタイヤで林道の残雪が怖かったので。
また当時の私はまだヤマレコの存在は知らず、新ハイキング誌に大佐飛山の天空回廊が紹介されたのが登るきっかけでした。
登頂当日は前日の強風でトレースが消されていましたが無風快晴の天候に恵まれ、雪も深くても膝ほどのラッセル程度。
そして天空回廊は展望も良く、その名に恥じない素晴らしい稜線でした。
初めてのチャレンジで登頂出来たのは色々な幸運に恵まれたからですが、とても印象的な登山でした。
新ハイとは懐かしい響きです！ ネットが一般化する以前は私もだいぶお世話になりました。色々と面白い山が掲載されていて大いに刺激を受けました。
私が登った当日は黒滝山付近を境にして南は晴れで北側は吹雪で、前夜は林道でも雪が舞っていましたが積もるほどではなく、冬タイヤを履いていたこともあって現在の新登山口まで車で入って登りました。
黒滝山以降は雪雲に入って吹雪＋ガスで視界がかなり悪かったですが、1名の先行者のトレースがかろうじて残っていたため、ルートファインディングもラッセルもかなり楽ができました。帰りに矢板で温泉に立ち寄った時もまだ大佐飛山は雲の中で、この日はずっと吹雪いていたようです。
vt250zさんの時と違って肝心の「天空回廊」で展望が無かったのは残念ですが、長年の念願の山頂を踏めたことは大いに満足でした。でも天気がいい時にまた行きたい山です。
私が大佐飛山(栃木百名山)に登ったのは2008年4月20日(日)でした。
天候があまり良くなく、眺望も期待してなかったのでカメラは携行しませんでした。
新登山口には「黒滝山登山口」と書いた小さな表示板があり、宇都宮ナンバーの車が二台停まっていました。
私がそこへ到着した直後に、矢板から来たという4歳ご年配の単独行が来られました。
私がその人に「送電線巡視路の登山口はどこですか？」と聞くと、「ここです」とのこと。
私が先にスタートし、黒滝山で休んでいるとその方に追いつかれ、以後はずっと大佐飛山まで同行しました。
その方は残雪期に2〜3度、無雪期にはスカイラインから登ったことがあると仰っていました。
登山口発5:00→大佐飛山10:40〜11:05→下山15：30
途中の休憩や他の登山者との立ち話を含めて10時間30分でした。
矢板の方は日本300名山も終了済みと言い、西上州の山にも詳しかったです。
私が登山道のない山で最も参考にしたのはtoradangoさんのHPです。
遅まきながら、大変ありがとうございました。
『等高線の狭間から』も参考にしましたが『激藪の隙間より』の方が詳しく書かれ、とても参考になりました。
ヤマレコに『登った山リスト』なるものが登場し、最近は「日本2500m峰」の硫黄岳に挑戦する猛者が増えましたね。
toradangoさんが登られた頃はこの山リストはまだなかったと思います。
年齢が上がったこともあり、左膝の大怪我以降は以前のような山行は肉体的にも精神的にもなかなかやる勇気が出ません。数年後には定年を迎えますが健康面での心配が大きく、時間に余裕ができてもリスクが高い山行はどんどん難しくなりそうです。
私が大佐飛山に登ったのは2008年3月29日でしたので、たかやまさんより3週間前ですね。たかやまさん登った時にはもう新登山口に標識が出ていたのですね。おそらくこの当時はまだ県外から訪れる人は少数派で、おそらく栃木百名山狙いの県内在住者が多かったと思います。
私の出身は栃木県なので栃木県内の藪山はまだネットが無い時代にあちこち登りましたが、その当時よりもネットで情報拡散が格段に早くなって以降の方が藪山に登る、というか栃木県内で地形図に山名が記載された全ての山の登頂を目指す人が格段に増えたように感じます。
ネットが無い時代は誰が登っているのかは山頂に残された標識くらいしか手掛かりがありませんでしたが、個人では数名程度でした。ネットでつながりができて以降は10名以上はいたと思いますが、もしかしたらたかやまさんが登山口で出会った人はそんな中の一人だったのかもしれません。これらの皆さんは私よりも藪に関しては強者で、私が残雪期に歩いた群馬県北部の激烈藪山を無雪期に歩いたりと、おそらく無雪期の硫黄岳でも登れるくらいの気力と体力の持ち主でした。
今年は硫黄岳が「豊作」ですね。これもヤマレコの「日本2500m峰」のおかげかと思います。よほどの理由が無い限りはあんな山に登る人はいないでしょうから。100名山のように登るきっかけになる理由付けとなるものがあるのはいいことですね。
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