写真2:ナレーションでは「秀峰 爺ヶ岳」と言っているが実際には鹿島槍ヶ岳である
写真3:ナレーション等で撮影場所は流れなかったが爺ヶ岳南峰山頂
この番組は2021年1月に放送されたものであるが、今回見たのは再放送。
内容は日本列島の地質学的な成り立ちのお話で、その中で北アルプスの成り立ちの章がある。穂高周辺と爺ヶ岳周辺の地形は、巨大カルデラ噴火と太平洋プレートによる東西圧縮の影響でできたとの話で、なかなか勉強になる内容だった。今回の話はその中で使われた山関係の映像である。一般的な視聴者なら気にする人はいないだろうが、山を知る者にとっては「これって違くね?」と思う映像があった。
まず最初に空撮映像が出てくる(写真1)。字幕やナレーションでどこの山なのか解説は無いが、これから放送されるのは北アルプスの成因についてなので、北アルプスのどこかの映像だろうと考えるのが常識だろう。
私もそう考えて録画した映像を一時停止して、いったいどこが写っているのか稜線の繋がり方から判別することにした。アルプス級の山は北アルプスを含めてほぼ全ての山を登っており、頭には主要な稜線の繋がりは全てインプット済みで地図を見る必要はない。
雪が付いて真っ白の稜線があるので森林限界を越えた山がいくつもあるが、北アルプスではこれらは少なくとも標高2500m以上と見てよい。映像はどの方角から撮影されたのか全くのノーヒントなので、尾根の繋がりを考える際の難易度はかなり高い。
深い谷があるので最初は黒部川上流部のどこかだと推定して剱岳以南の黒部川源流部の地形を思い浮かべたが、該当する場所は思い当たらなかった。範囲を広げて高瀬川、梓川、蒲田川辺や後立山も頭の中で展開したが、どうしても該当する稜線の繋がりは見いだせなかった。
でも森林限界を越えた山がいくつもあるのだけは確実であり、この数が揃っているのは北アルプスか南アルプスしかあり得ない。そこでまさかと考えつつ南アルプスで該当する稜線の繋がりを持つエリアがないかと脳内サーチをかけること数10分、映像に合致するエリアを発見できた!
なんとこの映像は南アルプスの農鳥岳以南で、北から南方向を見下ろすように撮影されていた。大きなヒントになったのは蝙蝠岳で、山頂の形や塩見岳に繋がる稜線の形状で直感的に蝙蝠岳っぽいと感じることができた。
また、前茶臼山直下の広範囲に真っ白な範囲も決定打に近いヒントとなった。実際の地形ではここはガレで樹林が切れた場所で、南アルプスの峰々からもこのガレは目立つ存在で前茶臼山の同定は簡単である。周囲が樹林で真っ黒なのに広範囲でここだけ白い=木が無い場所で、しかも稜線に近い場所となると南アルプスではここくらいしか無いはずだ。
上記より山頂を同定したものが写真1である。地図と照合したわけではないが、山頂の位置関係は私の脳内地図と完全に一致して矛盾は無い。
次は写真2の話。ナレーションでは「秀峰 爺ヶ岳」と紹介されているのに、何故か映像は鹿島槍ヶ岳。番組の演出上は鹿島槍の方が格好いいのかもしれないが、爺ヶ岳だって西側から見上げれば格好いいと思うのだが。
写真3はおかしな映像ではなく、ただ単にどこから撮影したものか脳内地図から探した出しただけ。背景の蓮華岳や針ノ木岳、スバリ岳の位置関係から爺ヶ岳南峰に早々に確定。念のため実際に私が爺ヶ岳南峰から撮影した写真のサイズを映像に合わせ、両者を並べたのが写真3である。
写真1、toradangoさんの山名が書かれてなければ、南アルプス南部だと分かるヤマレコユーザーが、果たしているだろうかと思います。
写真3、toradangoさんの写真で、針ノ木峠の最奥に見える雪山は赤牛岳でしょうか?
原山智 信州大学名誉教授の解説は分かりやすいですが、立山以外の北アルプスの成因が火山によるものとは目からうろこでした。
番組は見ていて面白かったです。今の穂高や後立山南部では素人目には火山の面影は皆無ですが、周囲に温泉は多いですよね。
今日登った針ノ木岳もカルデラ噴火の堆積物が隆起したものだと思いますが、確かに岩を良く見ると礫岩(岩の中に小さな岩が混じっているやつ)でした。爺ヶ岳にもよく登るので、今度岩の縞々の向きが縦になっているか見てみようと思います。
たかやまさんの同定通り、針ノ木峠の奥に見えているのは赤牛岳で正解です
1枚目の写真。脳内サーチで場所が特定できるとは本当に凄いです!
私は、toradangoさんの山名入り写真をもとに、昨日、Google Earthを使ってほぼ同じ3D画像にたどり着くことができました;;。おっしゃるように撮影した方角が不明だと特にハードルが高くなりますねぇ。
空撮写真は場所の特定に苦労しました(かなり頭を使いました)。北アルプスの話をしているのに映像が南アルプスとは想定外ですので もしかしたら制作会社に北アルプスの適当な空撮映像が無かったのかな?
北アルプスや南アルプスなど限定された高山のエリアだと私の脳内地図で何とか分かりますが、これがもし北海道の山でしたらお手上げです。北海道では森林限界が本州より約1000m低く、標高1500mとか1600mを越えると森林限界で雪が付くと真っ白になりますので、日高山脈なんかだとあの空撮映像のようになりそうです。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する