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妻とはまだ結婚する前。
当時あまり車に興味のなかった妻は『車は乗れれば何でも良い』なんて言ってたけど
私に連れられて、いろんなディーラーに試乗車行脚した中にデミオ、君はいたね。
妻は試乗なんてするのは初めてで
自分でちゃんと選ぶのも初めてで
知識が無いなりに色々悩んで、数ある候補の中からデミオ、君が良いって妻は言ったんだ。
燃費は良くなかったし車体も重かった。
他にも良い車はいっぱいあったけど、それでも妻は君が良いって言ったんだ。
そうして19年前の６月、君は妻の元に来たんだったね。
調子こいてありとあらゆるオプションつけたもんだから、だいぶ高くついたよねｗ
君と行った新婚旅行は鮮明に覚えているよ。
そう、九州。
結婚式の翌日に高速飛ばして13時間、ちょっと正気の沙汰じゃなかったかもしれないねｗ
でも本当に楽しかった。
それをきっかけに長距離も増えたね。
車中泊をするようになってからは更に行動範囲が広がった。
北は青森、南は鹿児島まで、北海道と沖縄を除けば全部の県を制覇したんじゃないかな？
君は覚えていないかもしれないけど、今日現在までに私たちが登った百名山79座のうち
72座は君と一緒だったんだよ。
百名山といえば塩見岳に登った帰り道、妻が君にガリ傷つけてたねｗ
狭い道のすれ違いでガードレールに擦ったんだよね。
でも、後にも先にも妻が君に傷をつけたのはあれ一度きりだから勘弁してやって欲しい。
槍ヶ岳に登りに行った時は
高速道路で前を走っていたトラックのタイヤが外れてドアに直撃したよね。
1秒ズレてたら多分大惨事だったと思うけど、君が護ってくれたんだねきっと。
ここ2〜3年、君からは老いを顕著に感じるようになった。
塗装は剥げ、錆は浮き、どこからともなく異音がする。
一緒に遠くに出かける機会は減ったけど、それでも妻は君と一緒にいることを選んだんだ。
そして19年の月日が流れた。
長いようで短い人生の中で、たった1台の車を19年乗り続ける人がどれだけいるだろう？
妻は君を愛していたし、私も君が好きだったよ。
でもいつか別れの時が来るならば、それは私から言うべきだと思っていた。
ごめんね、その時が来ちゃったんだよ。
昨日妻は泣いていた。
そしてこの日記を読んできっとまた泣くのだろうね。
私はリアリストだから涙は流さないと思うけど
私が本来流すべき分の涙も、私の代わりに妻が流してくれるからどうか赦して欲しい。
親愛なるデミオ、19年間妻を護ってくれてありがとう。
今日君は私たちの元を離れるけど、姿形を変えて今日また私たちの元に来てくれた
そう思うことにするよ。
ありがとうデミオ。
そしてこれからよろしくエブリイ。
敬具
