山の概念は色々だが、その一つに主峰・属峰がある。
今、手元には今年8月に新しく発行された『日本の山岳標高 1003山』がある。国土地理院の資料を基に、日本地図センターから刊行された書籍である。
1003山について基本的な内容は旧版と変わらず、旧版の頃から気になっていた表題の基準について、新版を入手したのを機に、国地院へ問い合わせフォームから照会していたが、一ヶ月近く経って返信があった。
主峰とは単体もしくは山塊の中の最高峰で、属峰とは読んで字のごとく、主峰に属する山、主峰を構成する一ピークということで、1003山にはカウントされていない。
以下、1003山の一覧から気になっている主なものを記すと‥‥
(1)大雪山塊で旭岳に次ぐ高さの北鎮岳や、だいぶ離れた黒岳も旭岳の属峰。
(2)谷川連峰の谷川岳(百名山)や一ノ倉岳は茂倉岳の属峰で、国地院では茂倉岳を谷川岳としている。
(3)甲武信ヶ岳とすぐ北側の三宝山はそれぞれが主峰。
(4)山名からは浅間山の属峰的な感じだが、浅間隠山は主峰。
(5)金峰・朝日・国師・北奥千丈岳は全て主峰。
(6)丹沢山(本峰)、塔ノ岳はどちらも蛭ヶ岳の属峰。
(7)南八ヶ岳の赤岳・横岳・硫黄・阿弥陀は全て主峰。赤岳に属する山ではない。旭岳〜黒岳よりずっと近いのに‥
(8)白馬三山も旭岳も全て主峰。
(9)麦草岳はともかく、山容を異にし、僅か25m低いだけの宝剣岳は木曽駒ヶ岳の属峰。
(10)鳳凰山は三山とも主峰、小太郎山も北岳の属峰ではない。
(11)槍〜前穂高は全て主峰、大天井岳から標高を下げる東天井・横通も主峰。
(12)駒津峰・双児山は何れも甲斐駒の属峰ではないが、栗沢山はアサヨ峰の属峰。
(13)百名山の久住山はくじゅう連山として中岳の属峰。大船山も同じ。
(14)平成新山は雲仙岳として、24m低い普賢岳の属峰。標高の高い山が低い山の属峰とはどう考えても不可解である。
主峰か属峰か、どういう基準で決めているのか、何か根拠になるもの(例えば山の成因など)があるのかどうか、などについて問い合わせていたところ、下記の回答でした(コピペです)。
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主峰から属峰までを1つの山として捉えることについて、全国一律的な判断基準はございません。
理由は、登山、信仰、歴史、生産の場、地形、地質など、対象によって考え方が同一でないからです。
そのため、対象とする山それぞれについて、遠望した時の直感的印象、登山関係者や地元住民の間での慣用などを合わせて取り入れた結果となっています。
(実際のところは、登山関係者間での慣用にかなり重きを置いた結果となっています)
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山も、集合体である山塊も千差万別であり、同じ山でも見る方向によって違い、更には人によっても見え方は違うでしょうから、仕方のないことと言えばそれまでですが、要は判断基準はないということですね。
語弊がある言い方ですが、おおざっぱ、適当に…ということらしいです。
「登山関係者間での慣用にかなり重きを置いた」とのことですが、登山愛好者の端くれとしては、丹沢三山はそれぞれ別個の山であり、宝剣岳は木曽駒とは切り離した方がいいのではないかと思うのです。
尚、表題とは別ですが、塩見岳の標高についても同時に問い合わせていました。
何年か前まで、山地図やガイドブックの塩見岳は三角点(3046.9m)と最高点(3052m)が並記されていました。
ところが、今の地形図では3047.3mの三角点のみ表示され、上記の1003座一覧でも塩見岳の標高は3047mとなっています。
下記は何れもコピペです。
【私からの照会内容】
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通常、山の標高はその最高地点をもって標高とするはずだと思います。
塩見岳は三角点のある3047.3mが採用されていますが、その少し南東側に塩見岳東峰と呼ばれる3052mピークがあります。
北岳は、以前の三角点は3192.4mでしたがすぐ近くに3193mの標高点があることが分かり、こちらが採用されるようになりました。
塩見岳に関しましても3052mに改められるべきではないのでしょうか?
【国地院からの返信内容】
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山の標高は、その最高地点を採用しております。その根拠は、地形図に掲載している三角点や標高点になります。
塩見岳は、ご指摘どおり2つの峰を持つ山で、「地理院地図」の5mメッシュ標高の値で確認できるかぎりでは、三角点の南東に、より高い場所(3051.7m)があるように見受けられます。
そのため、以上の状況が確かなものか再確認し、修正が必要な場合は、国土地理院の地理院地図を更新や国土地理院ウェブサイト「日本の主な山岳標高」に掲載の標高値を修正させていただきます。
国地院でも三角点より高い場所を認知されているようですので、今後は電子地形図及び国地院の資料に基づいて作成される書籍等全てで修正される可能性があります。
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