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新田次郎 著
■あらすじ
明治28年。正確な天気予報をするために、どうしても富士山頂に気象観測所を設けなければ成らない。
野中到は一人富士山に登り、冬の間気象観測所にこもって、一日12回2時間毎の観測に挑む。
その妻千代子は、一人では無理だという判断と夫への愛情から、自らも夫の後を追って富士山に登り、二人三脚での観測活動をしようとする。
夫のために行動した明治女性の感動的な物語。
■感想
登山すら不慣れな千代子が富士山頂までいき、高山病の体調不良の中、夫をけなげにも支えんとする。
女は黙って家にいろという風潮の強い中、自らよしと思う行動をとった。
千代子さんがいなければ、到さんはもっと早くに死んでいた。誰がなんと言おうが、到さんにとって千代子さんは誰よりもかけがえのない、パートナーになったのです。
野中千代子さんは目標にしたい人です。社会に貢献、や、バリキャリで働く、などしていなくとも、尊敬に値する人だと思います。
自分にもできるか・・・というと、無謀な自分は富士登山まではやってしまうかもしれないけれど、体調不良と凍るような寒さと睡眠不足のなか欠かさず観測を続けられるかというと、無理だなあと思う。
平地にいて頭痛いとか、不眠症が続けば、もうすべて終わりにしたいと思う豆腐メンタルな私。
でも千代子氏のことを思ったとき、辛さをこらえてもう少しがんばってみようと思えるときもある。
千代子さんが経験した過酷な環境に比べたら、と思ってちょっとがんばってみる。
少し勇気をもらった。
作者あとがきの中の話で、到氏が褒章を受ける話があった。
到氏は、もらえるなら千代子と一緒にもらいたい、あれは二人でやった仕事だから、と答えたという。それを聞いて新田氏は、千代子夫人を書けば、気象観測所の大先輩・野中到氏に満足していただける、と思ったという。
到氏が千代子さんにかけた思いがよくわかるエピソードだと思う。
とにかく明治の男の愛国心で、命をささげる覚悟で気象観測に挑んだ到氏と、夫を支えた千代子氏。
二人のかけがえのない絆が伝わってくる本です。
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