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山を歩いていると小さな祠や岩の間や大木の根元に祈りの場を見出します。
私は宗教を否定しますが、手を合わせます。
この小説の主人公も昇る陽に手を合わせます。
第二次世界大戦中の米国で日本人日系人が強制収容所に送られましたが、そこを主な舞台として、戦中戦後の日本、東京、五木、広島、長崎と舞台を移しながら、育ての親としての日本人女性とその女性を「お母さん」と呼び続けた白人の少年を中心に物語が進みます。私は「宗教の欺瞞」が主題ではないかと思いますが、もっと話題になってよい作品だと思います。
非常に描写がすぐれています。
作者は日本文学の研究者で村上春樹の「1Q84」などの翻訳で有名です。
多分著者の最初で最後の小説になるのではないかと思われますが、読んでよかったです。
話の出た「1Q84」、昨日読み終えました。
まだ、余韻に浸っています。
「日々の光」、チェックしますね!
私は2013年の夏に八方尾根から栂海新道を抜けて親不知のホテルまでほとんどの山小屋に泊まりながら「1Q84」を読んでいました。(笑)
読み始めていきなり殺人シーンが出てきてびっくり。
オウム、証人、大地、山岸、赤軍をまぜて、いつも通り食う寝る快楽をしっかり具体的に描いています。
DVを憎み人を殺すことを正当化する婦人。
「あなたは正しいことをしている。」
気がつけば私もその気になっている。
宗教組織から逃げ出した女の子が、しっかり唱えて宗教の本質に戻る。
私は初めに本書「1Q84」を読み、あとから「アンダーグラウンド」と「約束された場所」を読みました。
本来なら発表順に「アンダーグラウンド」「約束された場所」「1Q84」と読めば分かりやすかったでしょう。
1Q84は1984年。この年に麻原彰晃がヨガ道場を開きます。
麻原彰晃を想起する「主」を主人公青豆が暗殺します。
青豆はエホバの証人を想起する組織から子供の時に脱出した女性です。
「主」の組織は「山岸」「大地」、大菩薩峠で壊滅した「赤軍」を連想させます。
スポーツインストラクターである青豆を刺客として送りだす裕福な婦人はDVを憎み、私財を投じて、「あなたのやったことは正しいこと」と青豆を安心させ加害者とされる男を暗殺させる。
青豆は子供のころ覚えた呪文を唱え、それを実行する。
キリスト教もユダヤ教もイスラム教も仏教も簡単な言葉を唱えることで救われると布教します。
読者は思わず「悪」の「主」の暗殺の成功と青豆の逃亡、そして初恋の天吾と結ばれることを願う。
天吾は「主」の娘と交わり、その行為が青豆を受胎させラストに二人で逃避する。
読者は思わず、二人が子供を授かり三人で平和に暮らすことを願う。
宗教組織から逃げ出した一見宗教の対極の存在と思われた青豆が最も宗教の本質を具現化して、読者はその逃避行をはらはらしながら見守る信者に仕立てられる。
村上春樹はサリン事件で宗教について考え、この作品で宗教の本質を、読者を信者にすることで提示したのではないでしょうか。
幼い天吾(我は天成り)を育てた父の職業はNHKの集金人。
ドアの向こうの人を脅かして集金を試みる。
脅しは宗教勧誘の常套手段です。
そして受信料はお布施。
ということは一方的に流す放送は宗教ということです。
村上春樹に座布団一枚。
もうひとつ
少女が語った内容を友人がメモをして、それを文章の達人が一冊の本にして出版されて大ベストセラーになる。
これってホテルの客室の引き出しに入っている例の本と同じ成り立ちですね。
繰り返しになりますが、DVはいけないこと。
しかし一方の話だけを聴き一方的に殺害することはオウムと一緒。
「あなたの行いは正しいこと」とささやかれて実行する青豆はサリンをまいた5人と同じ。
裕福な婦人は麻原彰晃と同じ。
この物語を読んで天吾と青豆を応援した私は、オウム真理教の信者になりうるということではないでしょうか。
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