大雪山バックパッキング


- GPS
- 25:24
- 距離
- 42.2km
- 登り
- 2,248m
- 下り
- 3,113m
コースタイム
- 山行
- 1:39
- 休憩
- 0:04
- 合計
- 1:43
- 山行
- 3:08
- 休憩
- 0:02
- 合計
- 3:10
- 山行
- 10:10
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 11:23
天候 | 1日目:晴れ(風強) 2日目:雨→曇り時々晴れ 3日目:晴れ 4日目:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
札幌〜旭川(バス) 旭川〜層雲峡(バス) 層雲峡〜黒岳7合目(ロープウェイ&ペアリフト) ■帰り 東大雪荘〜新得(バス)※季節運行(1日2便) 新得〜札幌(JR) |
コース状況/ 危険箇所等 |
■テントサイトの水場状況 黒岳石室…石室の天水(雨水)が利用可 白雲避難小屋…避難小屋指定の水場が利用可 南沼野営指定地…雪渓の融水が利用可 ※いずれも要煮沸 |
その他周辺情報 | 下山後の温泉は東大雪荘(500円)ビールの自販機あり(400円/350ml、600円/500ml) |
写真
感想
旅の道具の一切合財をバックパックに詰め込み、シンプルな山の生活を楽しむバックパッキングという遊びは本当に楽しい。大雪山の広大なフィールドを旅するのは縦走登山というよりもバックパッキングと呼んだ方がふさわしいと勝手に思っている。大雪山系と呼ばれる地域で未だ歩いていない場所もあるし、同じ場所を何度訪れても飽きない。だから何度でも、人一倍大きな荷物を背負って大雪山を目指すのである…。
【1日目】黒岳7合目〜黒岳石室
旭川から層雲峡行のバスで起こったまさかのトラブルで到着が遅れてしまった。層雲峡にあるセコマで最終の買い出しを終えると時刻は午後1時をわずかに回っていた。ロープウェイとリフトを乗り継ぎ7合目から事実上のスタート。ここから黒岳山頂までは1時間程度の行程である。スライドする登山者に山頂の様子を聴くと口々に「物凄く風が強かった」とのことである。やれ「記念撮影は山頂標識にしがみついた」とか「四つん這いになって歩いた」とか、こういうのは話半分に聴いておくものだが、いやいや。実際に山頂に立つと本当に強風でバックパックが風にあおられて真っ直ぐ前に進めない。まったくもってこれでは立ち止まって写真2、3枚写すのが限界で(これも話半分で聞いておくとよい)山頂を後にし石室へと歩を進める。
石室でテント泊の手続き(1泊/500円)を終えてテントを張ろうとするが強風に難儀する。すると先行してテントを張り終えた外国人が「君の小さなテントならこっちのスペースに張ればいいんじゃない?」と(たぶん、英語でそういったと思う)ハイマツに覆われた二つのテントの間にある僅かなスペースを指差した。傾斜地であったが確かに防風効果はテキメンの場所だ。おまけに設営を手伝ってくれたりして…お礼に下界から持ち運んだ貴重なサッポロクラッシックビール(北海道限定ビール、だ)を差し出すと満面の笑みで受け取り「自分は東京に住んでいるが故郷はドイツ。クラッシックは最高のビールだよ。ありがとう!」(と、いったと思う)ふーむ、ビールの本場であるドイツ人に褒められるクラッシックビールは道民にとって誇り高いことだが、このドイツの青年もなかなか上手いな、と思ってしまったよ。
しかし、ここのテン場はかなり埃っぽい。風が強いとなおさらでテント内も脱いだ靴の中も食べ物も…あっという間に砂埃まみれ。今まで何度か泊まっているが今回は特に酷い。まともに食事さえできないと判断し石室を頼りに中を覗いてみると先のドイツの青年をはじめ常連風(?)の人々が食事をしながら談笑しているではないか。中に入って聴けばこれまで受付カウンターのみだった場所を改装しフリースペースとして開放しているという。管理人に断ってから話の輪に加わるとすぐに打ち解けた。こういうスペース、なかなかイイな。ひとしきり飲んで話して、テントにもぐりこんだのは夜10時頃だったろうか。夜半から降り出した豪雨がテントを叩く音に明日からの旅にわずかな不安を感じながらも、いつの間にか眠りの渦の中に落ちていった。
【2日目】黒岳石室〜白雲岳避難小屋
翌日は大雨の朝。少し小雨になったかなと思った刹那、さらに強い雨足でテントのフライシートを打ちつける。これではなかなか寝袋を抜け出すことができない。とは言えいつまでもテント中に居る訳にもいかない。石室で天気の情報収集をすると午後に向けて空模様は回復傾向とのこと。ならば鳴くまで待とうホトトギス。待機するのも山のうちだ。
やがて予報通りに天気は回復し、遅まきながら大雪山バックパッキングのリスタートだ。ほぼ5時間遅れのスタートは今日の予定変更を余儀なくされたが、まぁ、計画厳守より晴れた大雪山を歩くシアワセの方を取るね、僕は。うん。
増水気味の赤石川を渡渉し、例年遅くまで残る雪渓の上を歩き、緩やかな斜面を登りきると北海岳の山頂だ。ここからのお鉢平の景色は最高なのだが、生憎ガスが立ち込めてきた。視界の利かない中、北海平の方向から軽快な鈴の音が聞こえてきたと思ったらトレイルランナーだった。風のように颯爽と大雪の自然を駆け抜けたらさぞかし気持ちだろうなーと素直に感じる。ここ数年でトレイルランナーは本当に市民権を得たなぁ。
北海平を進むにつれガスも晴れ白雲岳のごつごつとした山肌も露わに。その山の基部を回るようにしてハイマツ帯に入ると灌木の切れ目から白雲避難小屋が見えてきた。白雲岳避難小屋のキャンプ指定地には遠目からも数張のテントが確認できたが思ったより数は少ないようだ。テント場は今朝の雨の影響もなくグランドはすっかり乾いている。昨日濡れたテントもシュラフカバーも衣服も見る見る乾いていく…夏のキャンプはこれだからありがたい。雨の影響で出足が遅れ移動距離も短くなってしまったが、その分のんびりテント生活ができるのがうれしい。僕は山道を歩いている時と同じくらい(いやそれ以上に?)テントの中でのんびりすることが好きであり、これが僕の理想とする山の生活なのだ。
【3日目】白雲岳避難小屋〜南沼キャンプ指定地
野鳥の鳴声のサラウンドで目が覚めた。テントから起き出し外の景色を見やると昨日は雲に覆われていた高根ヶ原からトムラウシまでの景色がクリアになっている。これはまさに僕が今日一日かけて歩こうとしている景色の全容であり否が応でもテンションが上がる。モルゲンロートまではいかない控えめな朝の光景の中、夕べ仕込んでおいたアルファ米の五目御飯とスープで軽い朝食を済ませ早々に出発。アルファ米は全部食べてしまわず行動食としてしまうのがいつものパターンだ。
高根ヶ原はアップダウンがほとんどない広大な溶岩台地で晴れていれば最高の見晴しと気分が堪能できる、僕的には大雪山の核心部の一つと思っているエリア。今日のシチュエーションであれば最高の部類だ。青空にハイマツの濃いグリーンや残雪をわずかに纏わせた周囲の山々のコントラストが素晴らしい。足元にはコマクサをはじめとするたくさんの高山植物。大きく切れ込んだ左手にまだ半分くらいは雪の下ではあるが高原温泉の池沼群が広がる…。地形的に荒天の時はかなりヤバいことになるがこの日はハイリターンだった、と山の神様に感謝するしかない。
忠別岳、五色岳と溶岩台地の続きのような山をパスして五色のハイマツ帯を抜けるといよいよ大雪の奥座敷とも言われるトムラウシ山が見えてきた。その山の大きさたるや、他の山を圧倒的に凌駕しその存在感は大雪山の主峰である旭岳よりも大きいのではないかと感じてしまう程だ。五色岳から化雲岳へのなだらかな斜面に広がる花畑とその向こうに聳えるトムラウシとの光景は大雪山ベストショットのひとつ。そんな中を歩くのだからもう堪らない。
木道を歩き、化雲の頂上で休憩していると初日から行程が一緒だったドイツの青年が追いついてきた。彼は天人峡に下山するため今日のキャンプ地はヒサゴ沼だという。僕は初日、二日目の遅れを取り戻すためにもう少し歩を進めて南沼のキャンプ場まで行きたい。ならばここでお別れだ。固い握手で短い国際交流はおしまい。
化雲からトムラウシまではアップダウンの大岩のガレを歩く、思ったよりハードな行程だ。一服の清涼剤はナキウサギの愛らしい鳴声であろう。このあたりは大雪山系でも最もナキウサギ密度が濃いところではないだろうか(といっても2度ほどしか姿を見たころが無いが…)
かれこれ11時間の行動時間の末に北沼までたどり着いたが、頂上まで登りきる末脚は残っていない。素直に巻道を選び頂上の反対に位置する南沼のキャンプ指定地へと直行した。溢れる雪渓の溶け水とお花畑に囲まれた素晴らしいテントサイトなのだがトイレ問題が仇となって「日本一汚いテント指定地」などと呼ばれてい
るのが残念だ。
この日はテントを設営し、虎の子の一本となったビールを開けて(これには脳ミソにガツンときて五臓六腑にジワーンと沁みたぜっ!)簡素なごはんを食してバタンキュウ。明日の晴天に期待だ!
【4日目】南沼キャンプ指定地〜東大雪荘
おとといの白雲避難小屋といい夕べといい、星空の凄さったら無かった。ちょうど新月が近かったため星や天の川が際立ってクッキリと見て取ることができた。
朝は昨日登れなかったトムラウシ山をカラ身で登頂する。ご来光には時間が遅かったがそれでも朝焼けの残像を感じながら大雪山の山々を俯瞰できたのが嬉しかった。山頂からは旭岳をはじめ昨日までに通過してきた白雲岳、忠別、五色、化雲岳の山々の景観が・・・そして十勝連峰の峰々、東大雪の山々、と眺望がバツグンなのだ。ちょうど大雪山と十勝連峰の中点に位置するこの山ならではの景色だと思うのだが、ここから見る大雪山の全容はまさに神々の遊ぶ庭=カムイミンタラと呼ぶにふさわしい。
テントサイトに戻ってパッキングを済ませ、後ろ髪をひかれる思いで下山。東大雪荘まではアップダウンも多く、長く、暑い道のりであったが、下山後の温泉とビールでひと心地つくとじんわり旅の思い出がこみ上げてきた。そして定刻通りに東大雪荘を発車したバスは僕一人だけを乗せて新得の街へと向かった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する