笈ヶ岳(日本200名山)〜深田久弥久恋の山〜
Junjapa
その他1人 - GPS
- --:--
- 距離
- 13.1km
- 登り
- 1,690m
- 下り
- 1,686m
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05:00 中宮温泉ビジターセンター着
05:40 同 発
07:40 ジライ谷ノ頭(1250m)着[2:00]
07:50 同 発
08:50 山毛欅尾山(ぶなおやま)-冬瓜(かもうりやま)尾根合流地点着[1:00]
09:00 同 発
10:15 シリタカ山頂上 着[1:15]
10:30 同 発
11:50 笈ヶ岳 頂上 着[1:20] 計5:35
<復路>
12:10 笈ヶ岳 頂上 発
12:50 国境稜線[三角岩]-シリタカ山コル着[0:40]
13:05 同 発
14:15 冬瓜山-山毛欅尾山稜線直下着[1:10]
14:25 同 発
15:45 ジライ谷ノ頭肩 着[1:20]
15:50 同 発
17:00 ジライ谷出合 着[1:10]
17:05 同 発
17:40 中宮温泉ビジターセンター着[0:35] 計4:55
| 天候 | 快晴 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2012年04月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
[復路]中宮温泉自然保護センター=金沢方面=荻町(猿ヶ馬場山登山口へ) |
| コース状況／ 危険箇所等 |
<�ヾ靄楞�備> ・連休のこの時期の入山であれば、ピッケルorストックのみ。スノーシュー、輪かんじきは不要。アイゼンは念のため持参したが使用しなかった。アイゼンを使っている入山者もいたし、状況によっては下りで不安が解消できるだろう。 ・陽射しが強く午後は雪が腐るので、極力早朝の出立を心がける。 ・長時間の行動となるため晴れの日は日焼け止めが欲しい。 <��中宮温泉ビジターセンター〜ジライ谷出合)> ・遊歩道は駐車場の奥から始まる。よい道。 ・数分歩くと左に道を分けるがそのまま直進。 ・トンネルはヘッドランプ不要。トンネルを出ると行き止まりの柵があるがこれを越えて遊歩道を進む。 ・次の沢は、適当なところを徒渉する。上流側が良いようだ。 ・防雪ブロックで作られたトンネル道を抜けるとしばらくで野猿公園。 ・休憩舎があるが開いていない。またそこで道は終了。指導標などの類は一切ない。 <��ジライ谷出合〜冬瓜山> ・目の前の沢を徒渉する。下流側の壊れた石垣伝いに降りて大岩を使うと容易だろう。(水量による) ・渡ったところから左上に上がるとトラロープが現れる。フミアトは明瞭。すぐに木の根・岩角を伝う急な登りとなる。 ・イワウチワが群生していて綺麗。 ・要所にはトラロープがあり使うといいだろう。 ・大岩が尾根上に現れそれを左側から巻く。 ・ジライ谷の頭(1250m)は休憩に適している。 ・フミアトは尾根上に続くが、少しずつ雪が現れ雪上を行った方が楽な場合にはそちらを取るようなトレースとなる。 ・・1271頂上自体は樹木が繁茂していて休憩できない。手前の肩が休憩適地。また頂上を少し過ぎたあたりでも休憩できる。 ・ひたすら尾根上を進むと100%雪の世界となり冬瓜山から降りてくる雪稜に導かれる。 ・冬瓜山直下は垂直な壁があるが緊張感なく越えられる。トラロープあり。 ・途中、雪が途切れている場所が数か所ありヤブ漕ぎや空中遊泳を余儀なくされる。 ・冬瓜山頂上はナイフエッジの雪稜。ただし連休は多くの人が入りトレースがばっちりついているだろう。この時期、三角点は確認できない。また山名表示板も確認できなかった。 <�づ澑算魁禅茱�岳> ・冬瓜山の下りは問題ない。ゆるやかで広い雪稜がシリタカ山へと導く。 ・シリタカ山の肩からの下りはトレースがない場合には斜面がやや急であり要注意。 ・国境稜線に上がるのには目の前の三角岩を避け、左側の斜面を斜上する。 ・国境稜線上は問題なく笈ヶ岳の頂上に導かれる。 <�サ∀�> ・国境稜線からシリタカ山への分岐はサイン等は全くないので見逃さないこと。分岐点は右側が植生でよく見えず、加えて稜線上にも稜線をたどってきたトレースがあり、そちらに引き込まれる可能性がある。 <��(帰路)冬瓜平ルート> ・シリタカ山とシリタカ山肩ピーク(1640m)とのコルからそのまま斜面を尾根に沿うような形に左斜め方向に標高差にして150mほど下り標高1450m前後の小平地を南東方向へ、そして冬瓜山とシリタカ山の鞍部直下にある1400m〜1450mの急崖の沢を横切って標高差40mほどを登り返す。 ・登り返した場所は冬瓜平。すばらしい景観が広がっていて幕営しているパーティーもいる。 ・山裾に沿うようにしながら左側斜面を斜上して、1490m〜1520mの尾根に飛び出す。目印などは一切ない。ガスの時には迷いやすい。また急な斜面を横切ることになるので雪面の崩落などには注意が必要。 <��日帰り温泉情報> ・中宮温泉「くろゆり荘」に行った。(500円/日帰り湯) 〒920-2324 石川県白山市中宮温泉 076-2567955 泉質:ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉 ・冬の間は温泉は開いていない。昨日より開けたとのこと。お湯は湯の花が混ざっていて茶色をしている。一緒に入浴していた人(温泉関係者)に聞いたら、本来は無色だが、湯の花が入っているためにその色になっているとのこと。 ・お湯は飲むことができ、うすい塩味と硫黄の味がする。従い旅館のお粥を炊くのにこの温泉水を使っているという。そうすると適度の塩味と、硫黄ゆえ卵の味がしておいしいお粥になるとのこと。食べた〜い。 ・谷ごとに3つの温泉があるが、それぞれ泉質は違うとのこと。 |
写真
夜10時15分に静岡を出て仮眠をしながら朝5時ちょうどに中宮温泉ビジターセンターに到着した。すでに明るくなっていて、駐車場には、25台近いクルマが!ほぼ全員が200名山の笈ヶ岳狙いだろう。あらためてその人気に驚いた。
「4/末まで閉鎖中」と張り紙があったのでビジターセンターの真ん前にクルマを停めて出発。下山してきたら「駐車禁止です」の張り紙が…。4/末までとは今日までだったんだ(笑)。失礼しました。
このあたりカタクリの花が群生している。片栗粉はホントはこれから作られなければならない。今の片栗粉は全部ジャガイモで作られている。こんな小さな植物の球根を集めて粉にするとは容易な仕事じゃなかったろう。花ことばは嫉妬・初恋・情熱。下を向く姿は初恋が一番ふさわしいかな。
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広い沢を適当な徒渉地点を探して渡ると少しずつ高度を上げながら四角い防雪ブロックの中を歩く。防雪ブロックも4つおきに沢側に窓が切ってあるのでヘッドランプは不要。
休憩舎のすぐ脇は沢の水量が豊富で渡ることができない。50mほど下ったところにある壊れた石積みをたどり大岩づたいに対岸に渡れる場所がある。
急な尾根にとりつくとイワウチワが群生している。イワカガミの仲間でよく似ているのだが、イワカガミよりも葉が輝いていないこと、花が一茎にひとつしかつかないことがイワウチワの特徴だそうだ。
やがて目の前に岩峰が現れる。このあたり相前後して5人くらいの登山者を抜かす。人のいない山に来たつもりだったが、奥多摩の山のようだ(笑)。
ジライ谷ノ頭(1250m)を過ぎて緩やかに登って標高点・1271のピークで休憩。目の前にはこれから登る尾根とその右に続く冬瓜山(カモウリ山)がはっきり見えた。よし行くぞ!とは思わず、遠いな〜。
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やぶっぽい尾根のフミアトをたどり、山毛欅尾山と冬瓜山の尾根上1490m地点に踊り出る。向こうには鹿島槍に似ていなくもない笈ヶ岳と小笈ヶ岳が仲良く顔をのぞかせてくれた。相変わらず「遠いなぁ」。このピークの下からは基本的に雪の世界となる。ここまで尾根上にはヤブっぽいフミアトが明瞭にある。雪田のあるところはそこを歩き、雪田があっても歩きにくいところは尾根上のフミアトを歩くといった具合だ。
冬瓜山直下1600m地点で小コルがあり、そこから、トラロープに助けられながら垂直に近い壁を登る。足場はしっかりしており木の根などもあり技術的に問題にはならない。
冬瓜山の頂上についた。有名なナイフエッジだが、トレースはばっちりついており、また残雪期ということで雪稜も丸くなっており問題はない。
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頂上の雪稜を渡り終えて振り返る。ほぼ同じ高さでありどこが三角点(△1627・9m)のある頂上かはわからない。ちょうどこの写真の撮影地点(頂上東端)が1/3畳ほどの小平地となっていたのでそこがその場所かも知れない。他のブログにあるような頂上標識などは注意したが気が付かなかった。雪に埋もれているか、積雪で落ちてしまったか。
冬瓜山からの展望。左から笈ヶ岳・小笈ヶ岳そして右手前のシリタカ山。シリタカ山の頂上あたりには7〜8人程度の登山者が見えた。早くあそこに行きたい!
笈ヶ岳に頂上に着いた。11:50.遠かったなぁ。頂上は東西に長く20mほど歩いて西端にも行ける。360度の大展望。白山が圧巻。
帰途、シリタカ山(・1699)と北方肩(1640m)のコル地点から。フミアトが冬瓜平へと続いており、シリタカ山も冬瓜山も登り返しをしたくなかったので、そのまま冬瓜平経由で帰ることとした。午後の強い太陽に雪は腐り、また登頂できたことからくる気の緩みもあり疲労感がつのるトラバースとなった。
感想
H2O氏から5月連休は笈(おいづる)に行きましょうと誘われていた。
関東に住んでいると濃飛・加越の山は敷居が高い。場所が離れている上、山名に馴染みがなく出かけていって登ろうということにならない。しかし笈は人里から離れ登山道もない難峰であることは何かの記録で知っていた。
地図を広げるてみると、確かに白山北方稜線にあってひときわ高く気を吐いている。周辺には、300名山の大笠山、仙人窟岳、三方岩岳などの魅力的な出城を従え、難攻不落の天守閣のようにも思える。頂上からは白山の大展望も期待できそうだ。H2O氏にはぜひやっつけましょう!と答えた。
「笈(おい・おいづる)」とはなじみの薄いコトバだ。笈とは、仏像やお経、数珠・ホラ貝などの法具、衣類等を入れる足のついた箱のことである。くくりつけるような板状のタイプのものもあった。この笈を背負って修験者は、山に入っていった。山へ修行にはいる入峰修行のときには「笈渡しの儀礼」が行われ笈は仏さまが座る場所として神聖な意味を持っていた。修験者が笈を背負った姿も母体に抱かれたありがたい姿とされ、その姿を彷彿とさせる笈ヶ岳がその名を頂いたのも大いにゆえあることだろう。
松尾芭蕉に「笈の小文」という俳諧集がある。旅の道すがら書きためた俳諧を笈に大切にいれて持ち運んだということだろうけれども、「笈」という字に芭蕉がどんな作品も大切に考えているというニュアンスがにじんでいる。
ちなみに、巡礼者は笈で着物が痛まぬよう袖のない薄い衣をその上に着た。これが「笈摺(おいずる)」であり、今でも四国巡礼などで着られている。笈が摺(す)るから笈摺であり、着物を守るためのものだから半袖だった。袖のあるものは白衣(びゃくえ)といって笈摺とは区別されている。明治時代に陸地測量部が登頂したとき、経塚から経筒・仏像・鏡・短刀・鏃などが多数が出土したという。古くから人々の関心を引いてきた山であることは間違いがないことなのだ。
深田久弥は百名山の中にこの山を入れたかった。「日本百名山」のあと書きでこう書いている。
「<略>…北陸では、白山山脈の笈ヶ岳か大笠山を是非入れるつもりであった。これは私のふるさとの山としての身贔屓(みびいき)ばかりでなく、こんな隠れた立派な山があることを世に吹聴したかった。しかしまだ登頂の機会を得ないので遺憾にも割愛した。…<略>」
「百名山」を出す前に登っていたら必ずや百名山になっていただろう。久弥は後年、我々と同じ中宮温泉からこの笈ヶ岳に登頂を果たした。65歳のときのことだ。
あと書きはこう続く。
「<略>…そして今後(「日本百名山」の)再販の機会があったら、若干の山の差しかえをするつもりである。…<略>」
もう少し長生きしていたら、百名山の顔ぶれは変わっただろうか。そのとき笈ヶ岳を百名山として入れただろうが、その時にどの山を外しただろうか。想像するだけでも楽しい気がしてくる。
後年、深田クラブが笈ヶ岳を200名山に選定したけれども「二百なんかじゃない、百なんだよ」と泉下で叫んでいる声が聞こえてくる。登った自分としては同感である。
野猿公園への道はすでに明るい。体が硬直したまま歩き出したような感じだが、まだ自分は車中で眠ってこれた。相棒のH2O氏は徹夜で運転して休みなしの登山だ。ホントウにタフな人である。ジライ谷に出ると雪融け水で沢はゴーゴーと音を立てている。向こう岸にはもう渡り終えて尾根に取りつこうとしている人たちがいる。休憩舎よりも50mほど下が、沢が細くなっていて渡れそうだ。
それにしても首が痛くなるような見上げるような尾根---登高欲がそがれたまま出発だ。さっそくトラロープが出現し、岩の根をつかむような急登がこれでもかというくらいに次々と続く。突然、たくさんの爆撃機が襲来して爆弾を落とし始めた。そんな感じが自分のココロの中で浮かんでいる。あたりにはイワウチワが群生していて、頑張れよと言ってくれる。やがて大岩が現れ、何人かの登山者の先を行く。ずいぶん人が多いなぁ。奥多摩みたい?と思った。
ジライ谷の頭はよい休息場所。すでに尾根の右側には白山の大展望が。道がないと聞いていたが、少なくとも尾根上にはハッキリとした道がある。ただし刈り払いが十分でなく両側から突き出た枝がカーウオッシュマシンのように自分の体をいちいち磨いてくれる。暑かったので腕まくりをしていたが、傷だらけになってしまった。
・1271で休憩する。目の前には白山の大展望。快晴なのに霞んでいるのは黄砂のせいだろうか。山毛欅尾(ぶなお)山からの尾根が合するあたりは雪面となる。そしてその尾根からは、笈ヶ岳と小笈ヶ岳の双耳峰が姿を現す。確かに名峰の風格がある。素晴らしい!と声を上げる。ここからは緩やかになった尾根上の道を展望を楽しみながら稜線漫歩となる。冬瓜山と書いてかもうり山と読む。このような山名は他に例を知らない。ここへは急な雪稜がせり上がっているが、直前のコルは垂直な壁となっている。しかし、フィックスロープもありまたホールドも豊富なため緊張感はない。ところどころどういうわけか雪が切れてヤブ漕ぎ泳ぎを強いられたり、太い枝から枝への空中遊泳を楽しんだりするところもある。
冬瓜山の頂上はナイフエッジ。しかし連休のこの時期はステップがしっかり刻まれており心配は要らない。三角点は東端に埋められているのであろうか。山名表示板も見つからなかった。ここからシリタカ山の頂上を見ると多くの登山者がゆっくり動いている。暗いうちから出発したのであろう。
シリタカ山へは自動的に導かれる。そこから急な下りを注意してくだり目の前にある三角岩を右にやりすごしながら斜上する。ナダレが起きそうな嫌な斜面である。そこから3度ほどヤブを漕ぎ、国境稜線に飛び出す。目の前の小笈ヶ岳が目障りだが止むをえまい。
笈ヶ岳の頂上には昼前に着いた。ほぼ同時に着いた単独行者は地元の方。写真をとってもらったり山の名前を教えてもらったりした。すぐ北にあるのは大笠山ですよ、300名山ですがね。笈ヶ岳との間はヤブが出ると大変でね、2つのコブを越えるだけで数時間もかかりましたよ。下の湖にかかる吊り橋の板が冬の間は外されていて登れないんですわ。でも夏道もあり、壊れかけているが避難小屋もありますよ。岐阜の山はこんなヤブ山ばっかりですよ。でもの中にあってやはり笈ヶ岳は特別イイ山、ちろん白山は全国区ですがねと笑った。
帰りはH2O氏の靴の中がびしょびしょとなり、シリタカの手前でスーパーの袋で手作りの即席スパッツを絆創膏で留める。シリタカ山と肩とのコルからフミアトが冬瓜平へと下っている。もう登り返しはイヤだなとここを下ることとする。下の平地には先蹤者も見える。何となく安心だ。最後の沢を渡るとわずかな登りだが、疲れる。尾根にでると気合を入れなおして急な下りをゆっくり下る。「こんなところで何かあったら大変だ。よれているだけに…」と笑う。ジライ谷の水はどういうわけかあまりキレイではなかったがあまりの暑さと解放感に思わずごくごく呑んでしまった。
そこからは駐車場までポレポレでゆっくり戻った。充実感という重い荷物を背負ってたからというとちょっと気取った感じだけれど、でも少しだけそうだった。だから駐車場ではH2O氏としっかり握手をした。握手に相好を崩すH2O氏の足元を見ると即席スーパー袋スパッツはボロボロだった。
こっそり拍手
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