『北ALPS 1Dayハイク 最長ルートに挑戦!』七倉から水晶岳
- GPS
- 15:17
- 距離
- 37.2km
- 登り
- 3,070m
- 下り
- 2,857m
コースタイム
- 山行
- 14:00
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 15:50
・タイムは写真から算出
・復路で足親指爪が死亡、靴連れ悪化でペース遅くなりましたが無事に終わって一安心
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
約50台 トイレあり(綺麗) 七倉山荘〜高瀬ダム ¥2200(4人まで乗合い可能) 9/1〜30の場合は6:00-18:00に運行 他の期間は下記参照 http://www.kanko-omachi.gr.jp/mountain/qa.php#q2 |
コース状況/ 危険箇所等 |
※私的感想です ◆高瀬ダム〜ブナ立尾根登山口 夜間だとちょっと迷うかもしれませんので事前確認要。 ◆ブナ立尾根 噂通りの急登だが整備もさてるので登り(下り)づらいとは思わなかった。一気に標高を上げ下げするので、タラタラと歩き続ける必要がない分私は好きかもしれない。 ◆烏帽子小屋〜野口五郎岳 巻道天国。しかし復路では登り基調のなるので時間がかかる(萎えた)。 ◆野口五郎岳〜水晶小屋 若干岩場あり。東沢乗越まで標高下げて上げる。 ◆水晶小屋〜水晶岳 想像よりも岩場が多く少々厄介。人が多いので時間かかった。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
感想
「日帰りロングハイクを嗜んでおります」と自己紹介するのであれば、やっぱりそれなりの実績は欲しいところ。黒戸尾根、早月尾根、槍ヶ岳など数多の有名ロングコースがあるが、『日帰り水晶岳』を達成できれば自信を持って”ALPS oneday long hiker”を名乗ることができるだろう(あくまで私調べ)。このレコは、一人の”豆腐メンタル&ヘタレ中年ハイカー”が自れの限界に挑戦した汗と涙の記録である....
いきなりで恐縮だが、本当は黒部五郎岳へ行くつもりだった。先回のコラボ山行で、h氏から「太郎山から黒部五郎の稜線が良かった」と聞いたのが理由。折立へと軽快に高速道路を飛ばしている途中で、登山靴を忘れてきたことに気付く。戻って取りに帰るのも億劫だし、折立への有料道路の通行時間に間に合うかも怪しい。登山靴を買ってしまおうかと思ったが、途中の高山には登山専門店はなかったような気がする。という事で、予定変更しもう一つの候補だった憧れの裏銀 野口五郎岳へ行くことにした。そして、先週の甲斐駒&鋸岳で現在モチベーションUP中の私は、「願わくば水晶岳まで行けないか」と無茶な最長不倒距離を目論むのであった。
時間に余裕もできたので、松本のカモシカスポーツと石井スポーツへ寄った。「どうせなら、以前から気になっていたトレランシューズを買おうか」と物色するも、思ったよりも品ぞろえが薄い。お手頃で気に入ったのも一応あったのだがサイズがない。結局トレランシューズを諦めて門鈴へと向かう。現在のハイキングシューズはモンベル。モンベル独自のアウトソール:トレールグリッパーがとても気に入っている。ところが、購入から1年半で水漏れするようになった(モンベルの名誉の為に言うが、私の扱いが原因の可能性もある)。店舗で相談すると「一度調べさせてもらいたい」と丁寧な対応があったのだが、1ヵ月ほど預かることになるらしい。その間山へ行けなくなるのでどうしようか悩んでいた。まぁいい機会(?)なので、同じ靴をもう一足買って調べてもらおうと思った。ところが、店舗を見て回っていると、アウトレットコーナーにスピードハイク用シューズがあった。正直形と色は微妙なのだが、お試しするにはお値打ちなので購入することにした。
3連休の七倉山荘駐車場はやはり混雑していたが、何とか良いポジションを見つけることができてラッキー。時計は既に21時を過ぎていたので、とりあえず寝てみる。いつも車中泊は眠れないのだが、今回は珍しく1時間半ほど浅い睡眠をとることができた。日帰りハイカーのプライド(?)にかけ、日を跨ぐわけにはいかないので、0:00を過ぎるのを待って出発する。
いきなりの暗闇トンネルでビビる。何度も後ろを振り返り物音にビクつく。とは言え、闇上がり(ミッドナイトハイク)を何度か繰り返してきたのですぐに慣れた。今宵は月がとても輝いており、ヘッデンなしでも歩けるくらい。素敵な夜空を見上げながら、鼻歌交じりで進んでいく。1時間ほどで高瀬ダムに到着し、最後のトンネルを通り抜け吊り橋を渡る。ここから登山口までは、暗闇だと迷いやすいとレコにあったので、注意しながら進んだ。他の方のレコを参考にしたおかげて迷わず辿り着くことができて何より。
ブナ立尾根は噂通りの急登。とは言え、登り難いということはなくペースよく登っていく。ただここで一抹の不安が...先週の鋸岳で”怒涛の超絶ガレガレ下山”で足の爪をやってしまったのだが、それがここにきて悪化。さらに、私の右足踵には異常な突起部位があり、ここが靴擦れをおこし始めている。大事に至らなければ良いが、最悪撤退もありえる。
4:00前に烏帽子小屋到着。既に出発準備をされているハイカーさんの姿もチラホラ。テン場へ行くと暗闇に淡く光るテントが綺麗だった。稜線に出ると、先行されてるヘッデンを発見。ナイトハイクでは先行者がいると安心だ(何せ豆腐メンタルですから)。月夜の美しい稜線歩き。彼方の稜線のシルエットも十分に目視できる。
そういえば、静かな稜線でいきなり「ラークッ!!!(と聞こえた)」というもの凄い大きな叫び声が前方から鳴り響いた。ビックリし過ぎて暫し茫然としてしまったのだが、その後特に音は無い。数十メートル先のハイカーに追いついても特に何もなさそうだったので、そのまま先を急いだ...一体あれは何だったのだろう。未だに耳に残っているほどあの叫び声は恐ろしかった。
三ツ岳とお花畑の分岐に着いた。居合わせた3人パーティさんは「ピークで日の出見よう」とせっせと登られていったが、私は”可能な限り全部巻いていく気満々マン”でしたので、お花畑コース一択。そして野口五郎岳の偽ピークあたりでサンライズ。快晴の空の下、北アの稜線にオレンジの光の束が降り注いだ。本当に今日は最高のコンデションだ。あまりの美しさに何度も足を止めて見入ってしまうが、まだまだ先は長いので急ぐ。ザ・山小屋テイストの野口五郎小屋を通り過ぎ、何気なく進んでいると危うく野口五郎岳まで巻いてしまいそうになったが、引き返してちゃんとピークハントする。
野口五郎岳山頂で絶景を楽しみながらモグモグタイム。居合わせたハイカーさんとも談笑。今年初登頂果たした西鎌尾根と槍ヶ岳。これから向かう水晶岳から赤牛岳。本日登ってたかもしれない薬師岳から立山へつづく稜線。歩いてきた稜線の向こうには後立山の峰々。う〜ん感無量ですなぁ。
【野口五郎岳山頂からの大展望】
準備を整えて再スタート。ピークを巻きまくったおかげか、タイムも巻けている。「これは水晶岳日帰りいけるかぁ」とヘタレのテンションも上がる。噂通りの穏やかで雄大な稜線が続いて行くが所々で岩場も出てきた。とは言え、先週の鹿窓&鋸岳をやっつけた私にとっては児戯にも等しいのである(そして油断してコケる)。
東沢乗越への下りに差し掛かった。そして水晶小屋へと容赦ない登りが待っている。ここまで巻き巻きで甘やかされ続けてきたので、ここにきての北ア稜線の洗礼は辛い。しかし!今日の俺はどこか違う。いきなりの実践投入で不安もあったが、軽量シューズのおかげか未だ疲れ知らずの足。エネルギー吸収の大切さを知り色々と準備してきた甲斐あって、まだスタミナも十分。結果、水晶岳への登りもなかなか良いペースで登り切ることができた。
疲れもなさそうなので、水晶小屋は一旦スルーして水晶岳へと向う。ピークまでは思ったよりもなかなかやっかいな岩場。訪れるハイカーも多いのでプチ渋滞が発生する。そして、遂に今日の最終目的地 憧れの水晶岳ピークハントを達成した。水晶岳からの眺めは最高。雲ノ平を眼下に眺め、今日登るはずだった黒部五郎岳が見えた。稜線の先には”レッドブル″赤牛岳の姿...多分”北ア日帰りピークハント”の最難関であろう。この先は穏やかそうな稜線に見えるが実際はどうだろうか?山頂標識を入れて記念写真を撮ろうと思ったが、足場が悪く狭い山頂は人で溢れている為、撮影の列がどんどん長くなる。いつもなら遠くから標識だけ撮って終わりにするところだが、流石に今日は喜びもひとしおなので、我慢して並ぶことにした。
山頂から戻って水晶小屋でモグモグタイム。周囲が立て続けに炭酸麦ジュースを飲んでいる姿にあてられてしまい私も購入。一人目標達成を祝って祝杯をあげた(まだ行程の半分なんだけどね)。「北アのこんな遠い所まで来るなんて、皆さんお好きですなぁ」などと自分の事は棚に上げて周囲を伺う。場慣れした感じのハイカーが多く集い、皆とても良い表情をしていた。十分休憩も取ったがまだタイム的には余裕があった。この分なら大丈夫であろうと目算して帰路へと向かう。
しかし、水晶小屋からの下りでとうとう両足親指の爪がOUTになってきた。前荷重になると痛みが走るので気を付けて足を運ぶ。右足踵の靴連れはまだ深刻な状態ではないが、こちらも注意する。まぁ折角往路で貯金もできたことだし、焦る必要もないのでゆっくりと美しい裏銀座の縦走路を堪能しながら歩くことにした。
そういえば、東沢乗越でクライミング装備を付けた二人パーティに出会った。スマホで電話している内容が聞こえてきたのだが、どうやら救護要請しているらしい。内容は「黒部湖から上がってきている途中で遭難者を発見。電波の届く稜線までとりあえず上がってきた」との事。その後、ヘリが飛んできたのだが、安否が心配されるところだ(今のところニュースにはなっていない)。
薄暗かった往路とは違い、晴天下で見る野口五郎岳は真白に輝く美しい山だった。何とも独創的な姿だ。こんな素晴らしい所を歩けていることを実感すると何だか涙が溢れて...久々に出ました!北アの稜線でむさいオッサンが感極まってまさかの号泣。ここ最近は、アルプスの絶景に少々慣れてきた感も否めずモチベーションも下降気味だった。「あぁ俺の心は擦れてしまった...」と思っていたのだが、どうやらまだまだ捨てたものではなかったらしい。
そして、余裕のあった足も徐々に動かなくなってきた。小さな登りも休みながらになる。いつもならこのへんで、ヘタレ故の愚痴「下山長い足痛い」が始まるのだが、今日は違う。憧れの水晶岳まで歩けたという自信、素晴らしい縦走路を味わえた満足感、心が満たされているのである。まぁそんな感じで、何とか本日2度目の烏帽子小屋に到着した。
再度水を補充しつつ目に入ったCCレモンも購入。「どうやったら山小屋でここまで冷やすことができるのか?」というくらいキンキンに冷えており、少し凍ってさえいた。ここまでの疲れを癒す炭酸が五臓六腑に染みわたる...今まで飲んだCCレモンで一番うまかったと言っても過言ではない。さて、ここまで何とかごましてやってきた足の状態が気になる。靴下を脱いで見てみると、「あぁこれは爪死んだな」という状態。右足親指爪の状態が最もひどいが、左足親指爪もなかなか重症。右足踵の靴連れは水ぶくれになっていた。持参したバンドエイドやらで応急手当。何とか下山まで持ってくれることを祈るばかり。
ブナ立尾根の急降下。足への負担が心配されたが、あまりにも斜度がきつ過ぎて、返ってつま先荷重になることが少なかった。階段のように足を下ろしていく感じと言えば分かっていただけるだろうか。勿論、速攻下山とはならないが、何とかそこそこ普通に下ることが出来た。さらに、長い下山には豆腐メンタル故にいつも辟易しているのだが、この尾根は一気に標高下げられるので、膝にはきついかもしれないが、私としてはむしろ嬉しかったりする。そんなこんなで何とか明るいうちに無事下山完了。
ここからの残りは消化試合のようなものなので、どうやら足の痛みも気にならない。多分七倉まで歩き切ることができるだろう。高瀬ダムに着くとタクシーが待っていた。一人だと料金高いし、まぁ歩けそうなのでそのまま通過しようかと思っていたら、運ちゃんが話しかけてきた。少し談笑していると、先ほど下山でパスさせていただいたカップルハイカーさんの姿が見えた。パスした際に少しお話もさせていただいたのだが、とても感じの良い方達だった。結局、そのお二人と相乗りする運びとなったので、ここは無理せずタクシーのお世話になることにする。多くの”日帰り水晶岳”チャレンジャーは、きっと最後まで歩き続けるのだろう...しかし、私はヘタレの自信があるなので¥700なら躊躇することなくタクシーを選択する(ヘタレで良かった)。
タクシーの中でも楽しいひと時(乗って良かった)。お二人はテン泊重装備で初日に三俣山荘まで歩き、二日目は雲ノ平あたりを散策するつもりだったが、何となく気が変わって本日下山したらしい(強者だな)。100名山も既に完了しており、何とも山慣れした雰囲気。ご主人は細マッチョな体躯で、ピタッとしたTシャツの下に筋肉が盛り上がっている。奥様はそこまで筋肉質ではないと思われるが、細身な体ながら体幹はしっかりしてそう。あんなに大きなザックを背負いアルプス縦走できる体の強さと心のタフさには心底感服...私にはとても真似できない。逆に、身軽とは言え一日で水晶岳まで歩いた私を「凄い」と褒めて下さる。あまりにも私の事を持ち上げるものだから、最近の山行についても調子にのって話してしまった。後から顧みるに、何か自慢話しているようで気恥ずかい。七倉山荘前で素敵なお二人とお別れし、すぐさまお風呂へGO。一日の疲れを湯船で癒すしながら、『アルプス・ワンデイ・ロングハイカー』という称号を手に入れご満悦な私。
自分には無理だと思っていた『日帰り水晶岳』を何とか歩き切ることができた(まぁ最後はタクシー乗ったけど)。特にトレーニングしたわけでもなく、むしろ山登りの頻度は下降気味、反面自重は上昇気味...という体たらくさだ。にもかかわらず今回達成できたのは、道具と食べ物のおかげだと思っている。新たに購入した軽量ザック&スピードハイク用シューズは今のところすこぶる調子が良い。スタミナを持続させるために小まめに補給するようにし、その内容にも気を配った。もっと早くやってりゃ良かった。まぁ「今回はたまたま」という事も考えられるので、次回も同じようなパフォーマンスが発揮できることを期待したい。「今度は新穂高から水晶岳ピークハントを狙ってみたいものだな」と、いつもとは違い強気な発言まで飛び出す”ヘタレ&豆腐メンタル返上中(?)”の中年ハイカーなのであった。
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