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Yamareco

記録ID: 25610
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
甲信越

春の守門岳。雪原をたどって大雪庇に対面

2008年04月28日(月) 〜 2008年04月29日(火)
 - 拍手
tanigawa その他1人
GPS
32:00
距離
16.2km
登り
1,358m
下り
1,307m

コースタイム

28日
 東京西部の自宅 (17時45分発)→圏央道、関越道→小出インター(19時
50分)→入広瀬・道の駅(20時35分着、車に前泊)

29日
 入広瀬・二分(にぶ)の車止め(6時04分発、西沢林道は雪のブロック
崩落で通行止め、猿倉橋の登山口の手前2キロに車を停めて、歩く)→二口
・猿倉橋の登山口(6時25分通過)→二口登山道の取り付き(6時34分)→
護人清水(7時04分、アイゼンを付ける、清水の出る沢全体が雪の下)→谷
内平・尾根上の大きな雪のくぼ地(7時42分)→中間点という標識(8時3
4分、標高1000メートル付近、この少し上で食事)→青雲岳の稜線分岐
(9時48分)→袴岳・守門山山頂(10時16分着、32分発)→青雲岳
の稜線の分岐(11時04分)→鞍部・網張(食事)→大岳(12時01分)
→キビタキ小屋(12時46分)→保久礼小屋(12時51分、ほっきゅう
れ小屋)→登山道を下降、林道終点の堰堤(13時18分)→猿倉橋・登山
口(13時57分)→二分の車止め(14時24分、40分発)→守門温泉
で汗を流す→関越道・小出インター(16時35分)→途中・事故渋滞→圏
央道・青梅インター(19時17分)→自宅(19時28分)
天候 快晴
過去天気図(気象庁) 2008年04月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
 
猿倉橋の登山口まで入れず、2キロ手前に臨時の車止めが設置。
ここから歩く
2008年04月29日 06:03撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 6:03
猿倉橋の登山口まで入れず、2キロ手前に臨時の車止めが設置。
ここから歩く
残雪の内部の空間に、ギシギシの若芽
2008年04月29日 06:10撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 6:10
残雪の内部の空間に、ギシギシの若芽
猿倉橋の登山口。20台分の駐車場は、まだ雪が残る
2008年04月29日 06:21撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 6:21
猿倉橋の登山口。20台分の駐車場は、まだ雪が残る
イワウチワ
2008年04月29日 06:48撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 6:48
イワウチワ
護人清水の手前のブナ林。二口コースの尾根は、下部でも積雪は1メートル 
2008年04月29日 06:57撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 6:57
護人清水の手前のブナ林。二口コースの尾根は、下部でも積雪は1メートル 
ルート中段は、やや痩せた尾根を登る。標高750メートル付近
2008年04月29日 07:54撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 7:54
ルート中段は、やや痩せた尾根を登る。標高750メートル付近
マンサクが見ごろ 
2008年04月29日 08:05撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 8:05
マンサクが見ごろ 
ルート中段。標高850メートル付近。
ルート上の雪が解け、崩れだすと、手間どりそう 
2008年04月29日 08:22撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 8:22
ルート中段。標高850メートル付近。
ルート上の雪が解け、崩れだすと、手間どりそう 
ルート上段の最後のブナ林の登り。標高1100メートル付近
2008年04月29日 08:56撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 8:56
ルート上段の最後のブナ林の登り。標高1100メートル付近
主稜線はもうすぐ。青雲岳の山頂部の雪原の一角に出ます。
標高1250メートル 
2008年04月29日 09:39撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 9:39
主稜線はもうすぐ。青雲岳の山頂部の雪原の一角に出ます。
標高1250メートル 
青雲岳から、主峰の袴岳へ
2008年04月29日 10:03撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 10:03
青雲岳から、主峰の袴岳へ
袴岳から浅草岳。逆光とモヤで展望はいま一つ
2008年04月29日 10:22撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 10:22
袴岳から浅草岳。逆光とモヤで展望はいま一つ
袴岳から青雲岳へもどる。白く広々とした雪原がつづく 
2008年04月29日 10:39撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 10:39
袴岳から青雲岳へもどる。白く広々とした雪原がつづく 
青雲岳から、大岳方面。雪庇の厚い基部が独特の景観
2008年04月29日 10:59撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 10:59
青雲岳から、大岳方面。雪庇の厚い基部が独特の景観
大岳の山頂部から、袴岳
2008年04月29日 12:00撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 12:00
大岳の山頂部から、袴岳
大岳からは、切れ目なしにのびやかな雪上ルートが続く。
下降はとっても楽ちん 
2008年04月29日 12:06撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 12:06
大岳からは、切れ目なしにのびやかな雪上ルートが続く。
下降はとっても楽ちん 
キビタキ小屋
2008年04月29日 12:29撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 12:29
キビタキ小屋
キビタキ小屋の下では、ボブスレー・コースのような
雪の尾根道が始まる。ときどき地面が現れるが、
まだ残雪の道が続く
2008年04月29日 12:34撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 12:34
キビタキ小屋の下では、ボブスレー・コースのような
雪の尾根道が始まる。ときどき地面が現れるが、
まだ残雪の道が続く
保久礼小屋
2008年04月29日 12:50撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 12:50
保久礼小屋
林道に降り立つ場所に、堰堤があった 
2008年04月29日 13:08撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 13:08
林道に降り立つ場所に、堰堤があった 
キクザキイチゲ
2008年04月29日 14:05撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 14:05
キクザキイチゲ
麓からの、守門山群の遠望。中央右寄りの高みが、袴岳。左端が大岳。
2008年04月29日 15:34撮影 by  Canon EOS 20D, Canon
4/29 15:34
麓からの、守門山群の遠望。中央右寄りの高みが、袴岳。左端が大岳。
 GPSトラックログを赤い軌跡で表示。
 国土地理院数値地図を「山旅倶楽部」から使用。カシミール3Dで作図。
 GPSトラックログを赤い軌跡で表示。
 国土地理院数値地図を「山旅倶楽部」から使用。カシミール3Dで作図。
撮影機器:

感想

 守門岳(1537・3メートル)といえば、最近は、春の大雪庇探訪が人
気の山です。私にとっては、高校2年の頃に読んだ、深田久弥の「我が愛す
る山々」に登高記が紹介されていて、訪れてみたいと思ってきた山でした。
 登って、この山の独特の魅力を実感しました。
 稜線の大岳、青雲(あおぐも)岳、主峰の袴岳には、地形がわからないほ
どの大量の雪が、広大な雪原となって広がり、稜線の北・北北東側には大雪
庇の基部が厚さ20メートルほどの雪の壁をそそりたたせて、この山の独特
の景観を見せてくれました。

 4月28日。
 28日夜に登山口の旧・入広瀬村の「道の駅」に前泊しました。
 小出と会津とつなぐ六十里越え街道は、春と秋の眺めが楽しめる峠道です。
私にとっては郷里の福島県と東京都を行き来する大好きなルートの一つでも
あります。夜の峠道は往来する車が少なく、道路わきの車で窓を少し開けて
シュラフに入り、静かな夜を過ごせました。
 この夜は8台の車が泊まり、その半数は渓流釣りや山菜ねらいの人たちの
ようでした。

 4月29日。
 快晴のため、冷え込みはきつく、朝には霜が降りました。
 4時30分に起きて、スープを作り、朝食。
 二分・二口の登山口めざして6キロほど移動しました。林道は除雪がすん
でいました。しかし、猿倉橋の手前1キロほどの山の斜面から雪のブロック
が車道に落ちているなど、まだ雪が安定せずに通行止めになっていました。
2キロ手前に臨時の車止めチェーンが設置されて、そこに車を停めて登山口
まで歩くことになります。

 6時04分発。
 目の下の西川には、幅30メートルほどの大きな堰堤から、轟々と雪解け
水が落下しています。残雪が道の両脇を埋める場所もあり、フキノトウが
やっと顔を出したばかりでした。
 猿倉橋のたもとに、登山者様の案内小屋と20台ほどの駐車スペースがあり
ました。
 橋を渡って、左に舗装された林道を見送ります。中高地沢沿いのこの林道
は、首尾よく予定したコースをまわってくることができれば、今日の午後に下
山してくる道です。
 私たちは、右の本高地沢沿いの右岸(上流から見て)の砂利道を進みまし
た。200メートルほど行くと、行き止まりになって、登山道の取り付きに
出ました。

 急な道を登り出すと、雪解けの林床はイワウチワがそこここに群落をつ
くって、ちょうど見ごろです。ここは、山開きの後には、何段かに分けて補
助ロープが設置される場所です。ブナが主体の明るい森は、芽吹きの季節を迎
えていて、木の芽の眺めも急登の私たちを励ましてくれました。

 登山道の取り付きで見送ってきた本高地沢の対岸は、若いブナの木々が斜面
を被って、幹の周りには雪解けの大穴が開いています。
 夕べ、「道の駅」で一緒だった静岡県の釣り師は、猿倉橋まで私たちに先
行し、そこからこの沢の対岸の除雪もされない作業道を進んで行きました。彼
らは、この沢の中流部の枝沢あたりに向かったのでしょう。雪面に渓流シューズ
ですから、難儀しそうです。

 私たちは、登山道の取り付きから30分ほどの登りで、小さな尾根を乗り越
し、ブナの林の中の小さな沢型に出ました。ここが「護人(ごにん)清水」の
湧き水がある場所らしい。空いた水筒に水を満たしたかったのですが、積雪が
1メートルを越しているため、水を得ることはできませんでした。

 この沢型から、20度ほどの傾斜のブナ林を100メートルほど直上しま
す。アイゼンをここで装着して、いいピッチで取り付きました。
 尾根上まで登り切る途中で、進行右手に踏み跡が出ていました。積雪がもう
少し多いと、踏み跡はわからないでしょうし、山腹のトラバースは危険で
す。でも、今日の条件ならば行けそう。この先、ピッケルは使う場面こそあ
りませんでしたが、用意してきて安心だったと思いました。私たちに先行する
地元の男性が気にしていた区間です。

 右下に、本高地沢の支流のオカバミ沢を見下ろしながら、トラバース道が続
きます。残雪が細い沢型を埋めている場所が連続し、斜度がある場所ではス
リップに注意しながら、地面と雪面のトラバースを続けます。足元に咲くイワ
ウチワや、対岸の美しいブナの尾根に、また元気づけられて、ゆっくり高度を
上げて行きました。イワカガミの冬越しの葉も、赤茶色に色づいて、花芽をつ
けています。

 トラバースから高度を稼いで、尾根のてっぺんに上がりつくと、ひょっこり
と大きな雪面に出ました。野球場が一つ入るかもしれないと思えるほどの、大
きな窪地で、谷内平の名がついています。尾根上にこんな地形ができるなん
て? 夏は笹原に変わるそうですが、この時期はキャンプ地にも使えそう。
 ここまで、私たちをときどきリードしてくれた地元の男性が、食事を終えて出
発しようというところでした。守門岳には、年中、登るとのこと。
 「去年は何回ぐらい?」と聞くと、「体調があまりよくなくて、18回」。
 「今年は何回?」。「12回目だよ」。
 いやはや、驚きました。60歳少し前かな? というご様子でしたが、大好
きなんですね、守門岳が。

 彼は、また、いいピッチで登って行き、すぐに姿がみえなくなりました。
 ここから40分ほどの区間は、尾根がやや痩せてきて、岩の多い尾根と雪庇
の名残のブロック状の雪の上との連続になります。右手のオカバミ沢は傾斜が
きつく、大きな滝も現われてきました(ウワバミ滝)。足場が悪い、気が抜け
ない、登高になります。ここは、下降に使う場合、足場が悪い分、余分な時間
がかかるでしょう。
 そのかわり一帯は、マンサクの花が見ごろ。山桜はもう少しだし、もう少し
立つと、イワカガミも美しいルートです。

 滝の上部には「中間点」という道標があり、私たちはこのさらに上部まで
登って、しっかり食事をとりました。ここは、「見晴らし台」と呼ばれている
場所の、やや上の地点と思います。標高は1000メートルを超えたところ。
昼前に山頂に着くには、この先はピッチを上げなければなりません。

 難場を抜けると、尾根は再び幅が広がり、厚い残雪の上を快調に高度を上げ
て行けました。
 守門山は、袴岳、青雲岳、大岳の主稜線に向かって、西南ないし西側から何
本もの尾根が、列をなして稜線に達しています。私たちがすすむ二口尾根ル
ートは、それらの登高尾根の、ほぼ真ん中あたりでしょうか。登るごとにどの
尾根もたおやかに雪原を広げて、周囲の景観は広大なものとなって行きま
す。
 私は何度も立ちどまってシャッターを切りました。カミさんはどんどん先行
します。後続の2人パーティーが200メートルほど後を、いいピッチで上
がってきます。

 9時48分、稜線の分岐付近に出ました(標高1300メートル余り)。大雪
原といっていい景観です。
 南から、強い風が吹き付けます。まず全体が真っ白な高みの青雲岳(143
7メートル)登り、そのまま休まず、主峰の袴岳へ向かいます。
 大雪庇は、青雲岳の北側に長く発達していて、本来の地面の上に10数メー
トルの厚い雪が乗っています。北側は縦にすっぱりと雪面が切れ落ちていて、
残っているのは雪庇の基部だけ。規模が大きな異様な景観です。3月の前半ご
ろには、雪庇のうちの、北ないし東に大きく張り出した庇の部分が、主稜線沿
いにえんえんと連なっているところです。いまの時期、巨大な厚さの基部を見
るだけでも、すごさを想像できます。

 足元には、大きな雪原が広がっていますが、この雪が消えるにしたがって、ハ
イマツや潅木帯、湿原など、高低も複雑な地表が姿を現すのでしょう。いまは
まだ、膨大な残雪がそれたすべてを白い世界のなかに、仕舞いこんでいます。


 青雲岳の高みに上がると、袴岳は、予想より遠めに感じました。いったん
下って、また緩斜面をひと登りさせられる高低です。体が休みたいと言ってい
るせいでしょう。でも、ここはがまん。気を取り直して、進みます。

 10時16分、主峰・袴岳に登り上がりました。
 後続の2人パーティーは、すぐ後ろに迫っていました。
 山頂には、地元の例の男性と、私のカミさんが先着していました。
 広々とした高みです。北側にほぼ垂直に落ち込む断崖は、大きな雪田と幾す
じもの雪渓を刻み、早春の色合いを示し始めた小さな尾根を、落としていま
す。古い登山道もほとんど廃道化し、人がほとんど入り込まない聖域のような
場所です。
 守門岳は休火山で、山頂北側のこの断崖は爆裂火口とその崩壊のあとと見ら
れています。穏やかな南側の山容と対照的な、北半面の姿でした。

 すぐそばに見えると思ってきた浅草岳と鬼ヶ面岳は、意外に距離をとって、
そして立派な山容でした。背後にうっすらと会津駒が見えますが、燧ケ岳はも
やの中です。
 越後三山は、空中に浮かぶように白くそびえ、これももやに霞んでいます。
1山ごとに切れ落ちた鞍部は深く、それぞれが独立峰の大きさを感じました。
 その左に荒沢岳は判別できますが、平ヶ岳は今日のモヤではかなり霞んでい
ました。山頂が以外に平らでない、「あの山」かなというぐらいの見え方です。

 10時30分すぎ、袴岳の山頂出発。
 予定通り、大岳から保久礼小屋への周回コースへ向かうことにしました。
 二口への尾根コースの分岐をすぎて、高度差でさらに100メートルほどを
下降すると、稜線のなかで一番、鞍部らしい鞍部に出ました。「網張」という
地名が付いた狭い場所で、ここは、山越えしようとする鳥を網で捕まえたこと
から、この名があるそうです。こんな場所で、獲る方も獲られる方も、たいへ
んです。
 もともと守門岳の「すもん」の名は、野鳥が巣守りする山ということから名
づけられたという説があります。大岳山頂には「巣守神社」も祀られていると
のこと。鳥とこの山とは、縁がありそうです。

 ここ網張の鞍部は、北側から大崩川方面をたどる登山道(廃道化)が、主稜線
に登りつく地点でもあります。
 雪田の上部に縦に深い亀裂が何筋か入っているあたりで、地面と雪の上の大
丈夫そうな場所に腰を下ろし、食事をとりました。風は除けられ、日差しはポ
カポカでゆっくり休めました。例の地元の男性が、袴岳で偶然、出会ったとい
う山友達と2人で通りがかりました。

 25分ほど休んで、大岳の160メートルの登りにかかります。
 近づいて、初めてわかったのですが、この山は遠目には、岩の多い山頂部が
北東側に垂直の岩場をもって、非対称さが際立つ山容に感じさせられてきまし
た。でも、間近に見ると、切り立った崖状の地形のその上、山頂部に、厚みの
ある雪の固まりがドーンとのっているのが本体だったのです。雪の厚さは、
すっぱり切れ落ちた垂直の雪面の高さで見て、20メートルはありそう。しか
も、その雪の壁には、地層のように降り積もった雪の層を数えることもできま
す。
 締まった残雪は、1立方メートルで0.6トン以上の重さがあるといわれま
す。厚さ20メートルなら12トン。大岳の山頂部には、ざっと見て広さ80メートル×100メートルを軽く超えるくらいの雪原がありますから、厚さを平均
10メートルとしても、総重量は数万トン規模。この大岳の山頂部は、中型タ
ンカー1隻分くらいの雪の重みに耐えて、姿を守っていることになります。
 山頂への急登をたどりながら見上げる大雪庇の基部の、スケールの大きさは、
一見に値する迫力があります。

 大岳山頂に12時01分着。
 そのまま左(南南西方向)に直角に折れて、広大な雪面を保久礼小屋へと下
降しました。緩い斜面なので、シリセードを試みたけれど、滑りません。大ま
たで、靴底を滑らせるように、元気に下降しました。

 保久礼小屋へと続く尾根は、途中で「馬の鬣(たてがみ)」のように細く長い
地形をたどります。地図上から読み取れるその地形が、上部からとても明瞭に確
認できます。細い尾根の上にたくさんの雪が積もり、これまた規模が小さいな
がら雪庇が発達するため、5月を迎えようという今の時期に、一筋の雪の道
が、まっすぐのボブスレー・コースのように尾根上に出現するためです。雪の
道の両脇はブナの森なので、雪の細道と、緑の縁取りの対照が鮮やかです。

 そのボブスレー尾根に入り込む手前、広いブナの斜面が、両側の谷筋に細めに
絞られかけたあたりに、キビタキ小屋がありました。野鳥好きの人が名づけた
名前でしょうか。
 小屋は半身が雪に埋まり、湧き水の水場(キビタキ清水)も深さ1メートルほ
どの残雪の下です。

 キビタキ小屋からは、いよいよボブスレー・コースです。細い尾根の雪の道を
たどってゆくと、丸太を固定して、階段とした登山道が、雪の下に見え隠れする
ようになりました。その尾根が広い尾根となり、右手に母川の沢音が響くように
なります。大岳からここまで、雪がない時期は、粘土質の山道は滑って登下降に
難儀すると想像しました。この区間に設置された丸太の階段は、900段以上も
あるそうです。

 保久礼小屋に到着(12時51分)。 
 保久礼小屋の水場も、名水に数えていい湧き水と聞いてきました。しかし、
残念。これまた雪の下でした。もう水筒の水はほとんどありません。

 小屋からは、地形図にある登山道の記述をたどり、進行左手のセイカイ沢(中
高地沢の枝沢)への林道をめざします。東南面の山腹を電光形に下る急坂。雪
は強い日差しですでに半分の地面を被うだけ。これに粘土質の地面と、枯れ葉、
ネマガリダケ、左右から流れ込む雪解け水が障害となり、短い距離ながら手間
取りました。
 行く手に大きな堰堤が見えてくると、踏み跡は夏には草むらになる湿った斜
面に消え、右岸(上流から見て)をさらに堰堤脇まで下降します。
 25分ほどかかって、林道に降り立ちました。

 二口の登山口(猿倉橋)まで、ここから40分ほどかけて、ゆっくり歩き下り
ました。その半分の行程は、砂利道を残雪が埋め、雪の下には側溝や溝状に掘れ
た流水が流れ、危なくてさっさと歩くわけには行きません。薄い残雪を踏み抜
いて、側溝に脛を打ち付けてしまいました。
 でも、フキノトウや、斜面いっぱいに咲いたカタクリ、アヅマイチゲなど、
楽しみの多い道です。山の斜面から落ち込む枝沢の水を見て、乾いた喉を潤す
と、森の枯葉や苔のやわらかい香りがしました。ブナの山肌は、陽を受ける場
所から先に若葉が開きだし、そこだけ明るい緑色に色づいています。まだ冬芽
の暗い森と好対照。残雪の白さも、コントラストを強調しています。

 セイカイ沢が中高地沢に合流し、キャンプ場があるあたりのから下では、林
道は舗装に変ります。道いっぱいに堆積した雪崩のあとを、雪の回廊のように
除雪した区間もありました。この時期、一般車が林道の奥に入るのは、やはり
危険です。
 猿倉橋(13時57分通過)から車を停めた仮ゲートまで、さらに25分を
加え、結局、1時間余りの林道下りになりました。春の眺めに、周回コースを
たどりきった満足感も加えて、充実感のある行程でした。(14時24分、車
止め仮ゲート着)

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コメント

素晴らしいですね
仙人の山登りよりはるかに上のレベルのようですね。仙人は妻との登山なので無理をしません。★8月ころに飯豊山へ大日杉口から登ろうと思ってます。何かアドバイスをお願いしますよ。ホームページも見ました。
2008/7/1 6:53
飯豊連峰
 仙人さんの方が、良い条件、良い山に恵まれていると思いますよ。白神方面、太平山は、早い機会に行きたいところです。

 飯豊連峰ですが、本山をめざすならば、大日杉口は便利そうですね。切合小屋まで上がって1泊。2日目に本山を往復して、下山できそうです。

 本山は、小国側(飯豊温泉など)からは長い縦走になるし、直登ルートのダイグラ尾根はきついので、遠い山になりますね。
 それから、福島県側は、最初の地蔵山までの登りはともかく、次の三国岳は鎖場のある岩場で、とくに下降では私の知り合いも事故を起こしています。

 最初の挑戦でしたら、大日杉小屋からのコースはなかなかいいのではないでしょうか。

 切合小屋の先、山頂手前の高みで小さな岩場があります。短いですが、ここも下降は気をつけてください。

 次にチャンスがあるならば、飯豊温泉→石転び沢雪渓→カイラギ小屋→北股岳→門内岳→飯豊温泉の、周回コースもおすすめです。
2008/7/1 12:58
ありがとうございます
小屋は混みますかね・・・8月の上旬を考えています。
2008/7/1 18:59
切合小屋
 百名山ですし、夏の一番の時期ですからね。福島県の山都からと、大日杉側から、かなり人が入るので、予約が可能ならしておくといいと思います。

 雪渓の水もあり、飯豊ではただ一つ、公認のキャンプ地も、小屋脇にあります。
 ですから、御西岳の花畑も見て、2日めも切合のキャンプ地に泊まり、3日目に下山という、のんびりスケジュールもありますよ。
2008/7/1 20:51
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

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