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Yamareco

記録ID: 28949
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
日高山脈

ピリカヌプリから楽古岳(計画では襟裳岬まで)

1996年03月13日(水) 〜 1996年03月21日(木)
 - 拍手
saito1987 その他3人
GPS
200:00
距離
45.9km
登り
3,438m
下り
3,757m
アクセス
コース状況/
危険箇所等
上豊似→豊似川→トヨニ岳⊃ピリカヌプリ→野塚岳→双子山→十勝岳→楽古岳→札楽古川(計画では襟裳岬まで)

1996/3/13〜21(7-2)



3月13日 快晴→晴れ:大場牧場(9:05)→瑞雲橋とその手前の橋の欄付近(9:40)→早ヶ瀬トンネル入口下(11:15)→Co760 C1(13:00)

大庭牧場にてCoをした。朝御飯をご馳走になり、しばらくストーブを囲んで茶を飲みながら、ばっちゃんと歓談する。外はいい天気で、縁側の窓から入る朝の日差しが暑いくらいだ。居心地が良く、これから入山するというのにまるで下山してきたような気分だ。とてもこれから山に入る雰囲気ではないが、そうも言ってはいられない。日高の山々が俺たちを呼んでいる。「頑張るんだよ!」とばっちゃんが手を振って見送ってくれる中、後ろ髪を引かれる思いで大庭牧場を後にする。

工事のため道路は除雪されており、アスファルトが完全に姿を現している。5分も歩かないうちに工事のトラックをヒッチする事が出来、荷台に乗せてもらう。瑞雲橋手前で道路は二手に分かれており、一方はポン三の沢沿いに、もう一方は野塚トンネルヘと続く新しく出来た道路である。我々はここで降ろされトラックは沢沿いの道の方へと去っていった。我々は新しい方の道路を行くことにする。新しい方の道路は除雪されていなかったが、スキーのトレースがあり、豊似トンネルを抜けるところまではラッセルの必要はなかった。博清橋の下で工事をしている音がしたが、そこまでトラツクに乗せてもらえば良かったと後悔する。早ヶ瀬トンネルの入ロの上を通って沢に降りた。沢に降りてみると、またまたスキーのトレースがあり、入山で楽をした分、後でつけがまわってくるのではないかと不安になる。しかし、あるものは仕様がない。利用させてもらおう。

トレースをたどり、上二股からトヨニ岳へと上がる尾根を登り、Co760に夏天を張る。天場はカンバの疎林でタンネは生えていない。稜線上は雪煙が舞っており、風が強そうだ。テント内でのこと。メンバーの一人がザックに手をつっこんだまましばらく固まっており、こいつ何か忘れやがったなと思いきや、シュラフカバ-を忘れたとのこと。おまけにウンペも大庭牧場に忘れてきたそうな。やれやれ。翌日未明まで風強く夏天に不安を賞える。

3/14 曇り→ガス→曇り:C1(6:30)(-4度)→トヨニ岳東峰(10:20)→トヨニ岳の北Co1480 Ω2(11:00)

稜線はガスっていて風もありそうだが、最悪の場合はトヨニ東蜂に穴を掘る方針でC1を発つ。しばらくスキーで登るが、Co1060あたりにスキーが 2本シーデボしてあり、そこから先はツボのトレースが'あったので我々もシートラに切り替える。シートラをしているとブッシュがうっとうしく、メンバーは、はまりまくっていた。Co1250あたりからカンバが薄くなりガスってくる。東峰直下で、下山してくるワンゲルの4人とすれ違う。彼らは野塚から上がって昨日ピリカをアタックしてきたとのことだった。トヨニ東峰とトヨニ岳の間は、いやらしい雪稜状になっていることもあるのだが、今回は状態が良く、しかもワンゲルのトレースもあり、なんの問題もなかった。視界は50-100m。トヨニ岳で山スキーOBの伊藤銀次夫妻と出会い、熱いお茶、ドラ焼き及びゼリーをご馳走になる。先日来利用させてもらったトレースは、彼らのトレースであった。感謝。稜線上はガスと風。トヨニ岳から少し北に下ったCo1480付近に穴を掘る。雪が少なく、すぐにブッシュが出てしまう。仕方がないので、入り口側の壁をブロックで作る変形雪洞となる。穴を掘っている最中にガスが晴れるが、ピリカはずっとガスの中でこの日ピリカを拝むことは出来なかった。同夜AL酔っぱらいと化す。

3月15日 -5度・晴れ→ガス・カゼ→曇り: Ω2(6:00)(-5度)→トヨニ北峰(7:00)→1512ポコ(8:00)→ピリカヌプリ(10:15)(0度)→Ω2=Ω3(15:00)

気圧の谷の前面を利用しピリカをアタックすることにする。日高側は雲海が広がっているが稜線から上は良い天気だ。目指すピリカも見えている。トヨニ北峰から1512ポコまでの間、十勝側に1-2m程の雪庇が出ているが尾根が広いのでまったく問題はない。稜線はズボズボでペースが上がらない。1512 の手前あたりで、日高側からガスが上がってくるようになり、気がつくとピリカは既にガスの中に姿を消している。1338で休憩をとる。風も出てきた。しかし、気温は高いし、ガスが途切れる瞬間もある。ルートの判断も出来そうなのでピークを目指す事にする。ここまで来て引き返す手はない。休憩中ほんの一瞬ではあったが、頭上遥か上方にピリカの頂上がガスの切れ間から顔を見せた。遠いナー。最低コルからピリカヘの登りでは、視界が20メートルを切ることもあったが、先頭に立つLの確実なルート判断のおかげで雪稜状(Co1480付近)のところもピーク直下の雪面も特に問題はなかった。ピーク直下から風が強くなる。ガスと風の中でピークに立ち、いつものように握手を交わす。晴れね一もんかな一と思いつつボーとタバコを吸っていると、メンバーの一人がおもむろにパーティー食のミカンの缶詰をザックから取り出し、シュラフカバーを忘れた汚名を挽回する。ミカンを食ってひとしきり幸せな気分を味わうも、ガスは晴れそうもない。仕方がないのでそそくさと穴に戻ることにする。下りは風にとばされた雪つぶてが、もろに顔面を直撃し、なかなかシビアであった。復路AL大いに遅れて点となる。

3/16 ガス→快晴:Ω3(7:30)→野塚Ω4(15:00)(朝-7度→昼0度→夕方-5度)

ガスっていたが、天気だんだん良くなる読みで少し遅く出る。トヨニの下りはガス。トヨニ南峰の肩から核心部までの下りは、晴れていたら高度感があって緊張するだろう。例の核心部(雪稜)はザイル50m1ピッチをフィックス。核心部通過時の視界は50m弱であったが、ガスっており高度感もなく、また、雪の状態も良く特に問題なし。この核心部は傾斜がないので、南下も北上も技術的に差はない。1251の手前のコルに岩が出て来るが、ここは十勝側を捲いた。この捲きの手前からガスが晴れ、1251を越える頃からスカ天へと変わる。稜線はバリズボラッセル。また、2〜3歩毎にアイゼンに巨大なダンゴがつき非常にうっとうしい。途中の休憩時、ポカリスエットでシャーベットを作って食う。来し方を振り返ればトヨニが怪鳥のごとく翼を広げている。トヨニは南から見ると立派な山だ。野塚の北に伸びる尾根を10メートル程下ったところに穴を掘る。この日メンバーの一人が腰の不調を訴え出る。大庭牧場で氷に足を取られ、すっころんだ際、腰を強打したらしいが、そこが痛んで歩くのがつらいとのことだった 。

3/17 高曇り→雪(双子山東峰ピーク直下から雪がちらつき出す):Ω4(7:00)→双子山西峰(10:00)→双子山東峰から十勝岳側に下ったコルにΩ5(11:10)

朝出発しようとするとメンバーのアイゼンバンドの留め金が壊れ、出発が遅れる。この日は楽古岳まで行く予定であるが、低気圧が近づいている為、天気が悪化してきたら穴を掘る方針で先に進めることにする。西広尾川を詰めた稜線上の1188に山行の後半の食料がデポしてあり、このデポ回収までは残り2日の行程である。この山域では2日停滞すれば、2日行動できると天気を評価していたので、行動2日分・停滞3日分(1日分は予備)の食料だけ持って行くことにし、腰痛を訴えるメンバーの荷を軽くする意味もあって停滞用食料2日分を捨てる。この日もバリズボラッセルでペースははかどらない。双子山東峰直下で岩が出てくるのだが、腰痛を訴えていたメンバーがトレースをはずし、これを修正しようと向きを変えようと振り返ったところ、腰を捻ってぎっくり腰状態となり、とどめをさされる。苦痛に顔を歪ませるメンバーをそれ以上歩かせることも出来ず、また、雪も降り始めていたので、行動を打ち切り、穴を掘ることにする。穴は双子山東峰から十勝岳に向けて下った最初のコルに掘る。この一帯はどこでも穴が掘れそうだ。翌日は低気圧が通過する見込みなのと、メンバーの腰の養生の為にも停滞を決めて床につく。

3/18 風雪強し:Ω5=Ω6

低気圧通過及びメンバーの腰の養生のため問答無用で停滞。

3/19 雪混じりの風、視界は50-100m程。Ω6=Ω7

前日の低気圧通過後冬型となり、寒気が入る。天候回復次第出来るだけ先に進める方針で時間待ちをする。3時間も歩けは十勝岳を下ったコルまで行けるだろうということで寒気に酎えながら12時まで時間待ちをするも、天気回復せず停滞とする。南日高は冬型の気圧配置でも寒気が入るとやはり天気が悪い。ナポレオンに輿じる。

3月20日 ガス・風→晴・風→晴・爆風:Ω7(8:30)→十勝岳(11:30)→楽古岳手前Co1320にΩ8(15:45)

昼頃から高気圧に覆われてくる見込みであるが、朝はまだ冬型で寒気も相変わらず入っており風が強い。ナポレオンをやりながら2時間程時間待ち。幸い腰痛を訴えていたメンバーもだいぶ良くなったとのことだったのでこの日は楽古岳を乗越し、出来るだけ先に進めるつもりで、あわよくばデポ地点まで行きイグルーを作る方針でいく。時間待ちをして出発を遅らせるも相変わらず風が強く、ガスっている。十勝岳を下ったコルを過ぎたあたりからガスが晴れて来る。 1285を過ぎ楽古岳に近づくにつれ風は益々強くなり、踏ん張って歩くのに消耗する。行動中、腰痛を訴えていたメンバーに腰の調子を聞くと歩くにつれ痛くなって来ているとのことだったが、山行を続けるかどうかの判断は楽古岳ですることにする。楽古岳を見上げると猛烈な雪煙をあげているのが見える。特にピークから肩にかけては、まるでジェシト気流が流れているみたいだ。肩への登りで、あまりの強風のため楽古岳を乗越すのはやめて時間も遅いので穴を掘ることにする。

穴を掘る場所を決めた後、メンバーに改めて腰の調子を確認する。朝に比べて歩くにつれ痛みが増しており、強風に耐えながら歩くのもつらく、左足に力が入らないとのことだった。メンバーの腰は回復しそうもなく、途中で動けなくなるのも困るので、山行継続を断念し下山する決定を下す。楽古岳に登らずして下山するのも悔しいいので空身で楽古岳をアタックし明るいうちに樹林帯まで下って夏天を張ることにする。しかし、いざアタックに向かってみると、楽吉岳の肩直下の強風はすさまじく、空身といえども耐風姿勢をとったまま身動きが出来ないような状況であった。メンバーの腰もつらそうなので結局アタックは断念する。天気予報によると、翌日は弱い気圧の谷が通過するらしいが、見たところブッシュも生えているし、ほぼ全天で十勝側をトラバースしてエスケープルートの尾根に乗れそうだ。そこで、ここで穴を掘り、翌日風が収まるのを期待して楽古岳のアタックは翌朝に持ち越すこととする。穴を掘っているとやがて陽は落ち、それにともなって広尾の町の灯りが美しく浮かび上がって来た。

3/21 晴・風→曇ガス:Ω8(6:00)→楽古岳(6:50)→Ω8(7:10-50)→尾根末端(11:00)→中楽古(13:30)

朝一番、空身で楽古岳をアタックする。晴れているが相変わらず風が強い。楽古岳ピークから本来歩くはずであった南の稜線を見やると、猛烈な雪煙をあげているのが見て取れた。風がなかったならばしばらくボーっとしていたいところだが、記念写真を撮り早々に穴に帰る。穴の入り口は風が当たらず、つい今しがた歩いてきた強風の稜線とは別世界だ。日高の稜線との別れを惜しみつつタバコを吸い、暫時感傷に浸る。エスケープの尾根は札楽古川へ降りる夏道の尾根の一つ東側の尾根だ。風の当たらない十勝側をスキーでトラバースして尾根に乗る。トラバースしてみると尾根に乗る手前は雪面となっており、降雪後は雪崩を警戒しないといけないだろう。尾根の下りでは、Lのみシールをはずして下る。Lの言によると快調だったそうな。あとは林道をとばして中楽古の最終人家にてハイヤーを呼ぶ。

感想

ルーム山行の最後にスキーを有効に使った日高の縦走を企てた。
1年目も居るので場所は南日高とした。
計画はトヨニに上がってピリカを往復後、襟裳岬近くの庶野へ出る行動9日予備7日の日程だった。
残念ながらメンバーが腰を負傷し、途中楽古岳までの縦走で終わった。
例年にない雪の量で、寒気も入り、気象条件としても厳しかったかもしれない。

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