岩籠山〜乗鞍岳☆夢に見た花と湖の景色を求めて
- GPS
- 05:58
- 距離
- 17.3km
- 登り
- 1,315m
- 下り
- 1,009m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2021年06月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
数日前のこと、登山道に咲く多くのササユリと出遭う夢で目が醒めた。それ以来、途端にササユリの花が気になっていた。この日は家内と出かける予定にしていたが、娘が少し体調が良くないようで、車で病院に連れていくというので、急遽、公共の交通機関を使ってアプローチ出来る山行を探すことになる。とりあえず京都駅に向かうと湖西線の新快速に乗り込んだ。
近江今津から小浜方面へのバスへの乗り継ぎの良い列車だったので野坂山地の西部の山も候補に考えたが、何と言ってもササユリが期待できそうな山ということで躊躇なく岩籠山に気持ちが向かう。後は野坂岳に向かうか、または乗鞍岳に向かうか山頂に到着した時間と気分で決めることにしよう。
新疋田の駅からはしばらくは舗装路となるが、大型のトラックが頻繁に行き交う殺伐とした国道を離れて、愛発の集落の間を流れる水路沿いの道に入ると、水路沿いには色とりどりに様々な花が咲いておりまるで別世界が広がる。
市橋から北陸本線の高架を潜って林道に入る。登山道に入ると期待通り、早速にも楚々としたササユリの花が出迎えてくれる。沢には次々と滝が現れるので、ついつい寄り道をすることになる。二段の小瀧の手前では紫色の花の蕾が多く見られる。おそらくギボウシだろう。
谷を上流へと進むにつれ、道の周囲には小紫陽花が満開となり、谷間には小紫陽花の濃厚な香りが漂うにようになる。三筋の滝を越えると谷には滝は見られなくなり、代わりにいくつもの堰堤が現れるようになる。コンクリートによるものではなく、石を石垣状に並べて作ったものなのでかなり古いものだと思うが、こんなところにいくつもの堰堤をよく作ったものだと思う。
沢を数多く徒渉することになるが、水量も多くなく、難度の高い徒渉はないように思われる。足元には数多くの立浪草が咲いている。
谷の源頭に至り、踏み跡が薄くなったとかと思うと本来の一般登山道は源頭の左岸の尾根を登るようだが、谷の源頭から稜線へ直接登る踏み跡に入り込んでいることに気がつく。斜面は多少、急傾斜ではあるが、辿るのはそれほど難しくないので、そのまま直登する。源頭の周辺では途端にブナの樹が目立つ。
稜線に上がると明瞭な登山道に合流する。ブナの樹林を歩くと、突然、山頂直下の灌木帯となり、それまでの深い緑の世界から一気に白日のもとに飛び出す。その途端に野坂岳から三国岳、芦原山から乗鞍岳へと至る黒河川源流を取り巻く山々が視界に飛び込んでくる。
山頂に上がると360度の好展望が広がる。乗鞍岳は遥か彼方に見えるが、蛇行しながら乗鞍岳へと至る長い稜線を見ると自ずと縦走意欲が湧いてくる。この稜線を縦走したのは一昨年の晩秋であり、kol-yosiokaさんと家内と一緒の山行であった。その時はブナの樹々はすっかり葉を落とした後だったが、緑の季節はこの稜線は全く地がる表情を見せてくれることだろう。
山頂からインディアン平原を見下ろすと人影が見える。インディアン平原に下ると早速にも三人の若者とすれ違う。登山コースをお伺いすると駄口からの往復らしい。人のいない夢幻的な草原の端にたどり着くと敦賀湾とその左手に西方ヶ岳の眺望が広がる。
インディアン平原を後にするとしばらくは丈の低い笹が林床を覆うブナ樹林となる。鞍部を登り返して東側斜面の大きなガレ場を過ぎると、いよいよ乗鞍岳への尾根に入る。
分岐では踏み跡が見当たらないが、先へ進むと薄い踏み跡とピンク・テープも現れる。p677を過ぎて、テープに導かれるままに尾根を歩く、次の鞍部に降ったところでいきなりウリハダカエデの幼木の濃厚な藪に行手を遮られる。前回はここでこのような藪を歩いた憶えがない。GPSには自分が前回の山行のログをダウンロードしてあるので、それを確認すると尾根芯のわずかに西側をトラバース気味に歩いている。ウリハダカエデの藪をわずかに漕いで左手に進むとすぐにも藪から解放され、歩きやすいブナの樹林が広がっていた。
しばらくは尾根芯には藪が続くがそのすぐ西側は歩きすい樹林が続くので、快適に進むことが出来る。三角点△739.6と思しきあたりで尾根の東側の藪の中に入ってゆく踏み跡があるので、辿ってみると、三角点の柱石があった。点名は西近江である。しばし、東側の好展望を楽しむと再び樹林の中へと入る。
尾根は大きく東に向きを転じ、p646の鞍部への下降に入ると尾根上はユズリハが密生しているが、おそらく以前、切り払いが行われたことがあるのだろう、薄い踏み跡が続いている。p705にかけては尾根は基本的にはなだらかだが、いくつもの小さなピークが連続する。
尾根上には倒木が多い。ふと気がつくとリュックの後ろにかけていたはずの熊鈴の音が聞こえない。リュックを肩から外してみると、熊鈴をかけているカラビナが広がっており、熊鈴がなくなっていた。どこかの木の枝に引っかかってカラビナが変形してしまったようだ。大きな音で鳴るので重宝していた熊鈴ではあったが、探すために戻る気にはなれない。この日は国境でのバスの時間の制約もあるので、諦めて先に進むことにする。
p705を過ぎると尾根芯上はリョウブの濃密な藪が繁茂するようになるが、いよいよ尾根の
問題は次の三角点ピーク△786.6への登りだ。この北東尾根は濃厚な藪が広がっているところだ。前回歩いた時とは異なりリョウブの樹々や藪の中は葉が生い茂っているので、通過は相当難儀することになるだろう。
まずは藪を避けてトラバースしながら北尾根に回り込む。やはり北尾根も尾根芯は同様に藪が繁茂してはいるが、その周辺のなだらかな斜面は下生えも少なく、トラバースするのに問題はない。尾根を西側から南下すると呆気なく山頂直下までたどり着くことが出来た。後はわずかに鹿道と思われるトレースを辿って三角点の柱石ある小さな山頂広場に立つことが出来た。
ピークからは久しぶりに南側の展望が広がり、いよいよ乗鞍岳と
ここからはリョウブの藪の中に切り払いがされており、ほぼ5mほどの間隔で頻繁にピンク・テープが現れる。鞍部に下るとそれまでの藪が嘘のように広々としたブナの樹林が広がるようになる。なだらかに登り返して送電線鉄塔に到着すると、途端に明瞭な巡視路が現れる。
後はわずかに歩いて国境へと下る高島トレイルと合流する。2本目の送電線鉄塔に至るとようやく岩籠山から延々と歩いてきた尾根を俯瞰することが出来る。岩籠山の山頂は樹林がないので遠くからでもそれとわかりやすいが、2時間と少々の距離には思えぬほど遠くに感じられる。
送電線鉄塔を越えて次のピークca840mに至ると一気に竹生島と共に琵琶湖の大きな眺望が広がることになる。空気が霞んでいるせいなのだが、湖の彼方は茫洋として、果てしなく見える。長い尾根を縦走する場合は歩いてきた尾根を振り返った時に充足感を感じることが多いのだが、この縦走路においては海のように壮大な湖の景色を目にした時の感動の方が大きいように思う。
後は乗鞍岳までわずかの距離なのだが、乗鞍岳周辺は凡庸な低木の林が続く。東の横山岳や金糞岳、伊吹山の展望を望むが、この展望はこの日の午後、何度も目にした景色である。
再び高島トレイルの分岐に戻ると掘割の古道を辿って尾根を下る。尾根は下るにつれ、こちらでも小紫陽花が多く咲いており、酔いそうなほどの香気が漂っている。
気がつくとスキー場へと下る登山道の分岐を通り過ぎて尾根を直進してしまっていた。送電線巡視路なのだろう。かなり幅広い道が続いているのでそのまま尾根を直進する。この乗鞍岳〜岩籠岳は雪の季節に辿るもの魅力的に思われるが、スキー場が営業している季節はこの道を辿るのが良さそうだ。
尾根は下部にまで明瞭な踏み跡が続いていたが、平坦になりすぐ目の前に国道が見えるようになると途端に踏み跡が消える。湿地帯が広がっており、流石にその中を歩くのは躊躇われる。樹林の中を適当に南に歩くとスキー場の北側の広地に出た。
以前、家内と長男と共に赤坂山から縦走して来た時は目の前でバスが行ってしまったのだったが、この日は十分に余裕がある。15分ほど待つとマキノ駅に向かうバスが到着した。
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敦賀のトレラン愛好家がここに道を作ると聞いていましたが、ほんとうのようですね。例のピークが切り開かれ、容易に通過できるようになれば、山集落から三国山・乗鞍岳を経由して黒河川を周回する長い尾根コースを楽しめることになります。
三角点ピークの藪が切り開かれて歩きやすい登山道が整備されるのは歓迎すべきことなのでしょうが、野坂岳〜芦谷山〜三国岳の稜線といい、この乗鞍岳〜岩籠山への稜線といいブナの壮麗な森を包み込む深い静寂こそが魅力なのですが、トレイル・ランナー達が頻繁に走り抜ける尾根になってしまうのはそれはそれでこの山域の魅力が損なわれてしまうようにも思われて、複雑な気分です
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