雷鳥がいきなり!絶景の北岳【白峰三山縦走】
- GPS
- 35:25
- 距離
- 24.1km
- 登り
- 2,369m
- 下り
- 3,054m
コースタイム
7:50広河原登山口−9:40大樺沢二俣10:55-(右俣コース)-12:45小太郎尾根分岐12:55−13:30北岳肩ノ小屋
8/15
4:20北岳肩ノ小屋−4:55北岳山頂(御来光)6:00−6:50北岳山荘(朝食)7:40−8:10中白根山−9:10間ノ岳9:25−
10:30農鳥小屋(昼食)11:40−12:20西農鳥岳−12:55農鳥岳13:20−13:45大門沢下降点−15:00川原15:10−
16:00大門沢小屋16:25−18:30広河内登山口−19:15奈良田
天候 | 8/14 晴・のち曇り 8/15 晴・のち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
奈良田駐車場に駐車(無料)。県道37号線は奈良田〜広河原でマイカー規制中。 午前5:30発広河原行きバスに乗車(1,100円)。広河原まで所要50分。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
●広河原〜大樺沢二俣 特に問題なし。沢沿いに登行。 ●大樺沢二俣〜右俣コース 急な登りとなる。至る所に花畑。 ●小太郎尾根分岐〜北岳山頂 特に問題なし。ハイマツ帯が終わる。ライチョウに遭遇。 山頂は肩ノ小屋からは見えない。偽のピークを過ぎてその奥に頂上。 ●北岳山頂〜北岳山荘 山頂までの道はこちらの方が肩ノ小屋経由より急か。 ●北岳山荘〜間ノ岳〜農鳥小屋 中白根山を過ぎると3000mの稜線続く。岩礫の荒涼とした道。 間ノ岳〜農鳥小屋の道は荒涼度がさらに高い。 熊ノ平小屋方面の分岐は、分岐標を見落とすと気づかない可能性高く要注意。 ●農鳥小屋〜農鳥岳〜大門沢分岐点 基本的に岩稜の道。 ●大門沢分岐点〜大門沢小屋 稜線から下りるとハイマツ帯に入る。川原までは基本的に急勾配。 ●大門沢小屋〜奈良田 数か所で水が登山道を流れる場所を歩く、夜間は注意。 三つある吊橋の最下流の吊橋の手前、登山道をダム工事に伴って無理やり 作り変えたようで、急なじぐざぐで足元すべりやすい。 車道に出てから奈良田は思いのほか長い。 |
写真
感想
いつか北岳に登りたいと思っていた。
かつて秋に奥秩父の北奥仙丈岳に登った時に見えた南アルプスの姿が心に焼きついていたが、この時、中でも一番高く日本第2位の高峰・北岳に登ってみたいと思ったのだ。
今年は3,000m級の山に登ると決めていて、今回決行することにした。
深夜に自宅を出て、奈良田に到着したのは朝5:20。広河原行きの始発バスが来る10分前。乗り遅れたら次でもいいと思っていたが、ぎりぎり間に合った。バス2台で、立ち乗りも半分ほどいる混み具合だった。広河原は北沢峠への乗り継ぎや芦安からのバスの客もいて、朝から盛況だった。
あまり寝ていなかったのでゆっくり行くことにした。インフォーメーションセンターで情報を仕入れて、少しうつらうつら寝て、ストレッチなどしていたら、あっという間に8時前に。
川沿いに歩くと、いきなり大樺沢の奥に北岳の頂上が目に入った。かなりの高度と距離。これをこれから行くのかと思うと感慨がある。
吊橋を渡り登山道に入って、大樺沢沿いに進む。夏の朝、高地の爽やかな林間、時々沢水の通り道となっている道を進み、沢を渡る。この道でも下界では見かけない高山の花々を見る。
大樺沢二俣の辺りには雪渓が残り、左俣コース沿いには頂上近くまでそれが残る。自分は北岳肩ノ小屋に泊まることにしたので、右俣コースを行くことにする。
分岐を過ぎて腹ごしらえ&小休止、のつもりが、ここまで2時間弱の登りと睡眠不足もあって、手頃な岩の上でうたた寝してしまった。天気はすこぶる良く、風は涼やかで、あまりに気持ち良かったのだ。急ぐ必要もないし…。
右俣コースは結構な登りだったが、高山の花が至る所に咲き、極めて気持ち良い道だった。初めてトリカブトを見た。その花の色といい形といい、何かとても妖しい魅力があって飽かず眺める。猛毒を持つからこその、妖しい魅力なのだろうか…。
白根御池からの道との合流点まで上ると、鳳凰三山が目に入った。上の方はすでに雲を被っている。少し急がないと。
程なく小太郎尾根分岐まで出ると、小太郎山、アサヨ峰、甲斐駒ヶ岳が一望できた。甲斐駒ヶ岳の山頂近くは白く(石灰岩?)、今も雪をかぶっているように見える。その山容もまた飽きずに眺めていられる。
写真を撮ろうと雲が切れるのを待つが、山頂にかかる雲がなかなか切れない。
ようやくのことでその姿をカメラに収める。
やはり3,000m級の山だからなのか、2,800mを超えたあたりから、足取りがやや重くなってきた。半年前にペルーのマチュピチュに行き、何の意識もなく3,000mのマチュピチュ山に登っていたのだが、この時は先に富士山とほぼ同じ標高の町に滞在してからのことだったので、あまりきつさを感じなかったが、麓から一気に登ってくると、体に負荷もかかるのだなと感じた。幸い、小太郎尾根分岐から肩ノ小屋までは緩やかな尾根なので、ぶらぶらと歩く。
その道の途中、岩場の手前で、反対からきた人がいきなり道を塞いでカメラを取り出した。訝しく思った間もなく、自分の足元にライチョウが現れた!まさかという感じだったが、目の前で道を横切っていくではないか。しかし急いで逃げる様子もない。
そのまま右手の草地へ入っていった。するともう一羽、やや小ぶりのライチョウが出てきた。母子のようだった。子ライチョウは草をついばんでいた。それを母ライチョウが見守っている。
ライチョウは古来、山の人が「神の鳥」と崇めていたという。その悠然とした姿を目にすると、昔の人が高山でその姿を見て、何か貴いものを感じたのも納得できる。
初めて登った北岳で、野生のライチョウを眼前で見ることができたのは、極めて幸運だと感ずる。
肩ノ小屋は標高3,000m、午後1時半に着く。山頂までいくらもないが、すでに東から雲がかかり、頂上からの眺望はないだろうと思い、この日は登らないことにした。
後は小屋でのんびりと。食事も出る小屋での宿泊は初めてだった。収容150人というが、8割ぐらいの入りか。
夕食は予想以上にうまかった。登山中に何度も間食したが、丼2杯食べられたのも不思議だ。それだけ体力を使ったということか。
日没は雲が西に出てきて見えず。ただし夜空は素晴らしかった。天の川、夏の大三角形が全てはっきりと見渡せた。
【2日目】
この日は長駆となった。朝4:20、前日知り合ったH君、Kさんと一緒に北岳山頂で御来光を見るために、小屋を出発。雲は完全に無くなり、かなり期待できる。
北岳山頂までは岩場の登り。もう着いたかと思ったピークは偽の頂上で、
本物の頂上はさらに奥の岩場だった。頂上は肩ノ小屋からは見えない。
4:55、山頂に到着。360度、目線より上に雲はなし。
朝日が昇ってくると、周囲の風景がはっきりしてきた。目の前に鳳凰三山、右には遠くに富士山が山頂付近だけ雲の上に現れている。甲斐駒の右側には八ヶ岳、仙丈ヶ岳の右肩には北アルプスの山並みがうっすら見えている。
何とも言えない至福の時間。
目を南に転ずると、縦走していく間ノ岳、農鳥岳が見える。間ノ岳には東の谷から雲が上がり、西に流れている様子が見えた。
西に振り向くと、北岳の「影」が雲に映っていた。その様子をじっと見ていると、ブロッケン現象として自分の影もその中に見えたので驚きだ。
3,000mを超えるこの岩場の頂上にも、いくつか高山の花は咲き、朝日の中で一際可憐に見えた。
山頂での一時間は短い時間だったが、極めて多くの体験をしたためか、極めて長く感じもした。
広河原へ下山するH君と別れ、Kさんと縦走路を行く。まずは北岳山荘に下りて朝食。北岳を振り返り見て感じたのだが、肩ノ小屋からより北岳山荘から頂上へ登る方が、きついのではないか。
肩ノ小屋で作ってもらった弁当。天気はすこぶる良く、今しがた登ってきた北岳を眺めながらの飯がうまい。
北岳山荘のバイオトイレはかなりの施設で、ちょっと感動ものだった。
目の前の間ノ岳にとっかかる。岩稜の道を30分ほどで広い頂上の中白根山。ここからは3,000m超の稜線が間ノ岳まで続く。“3,000m超の稜線歩き”とはわくわくする響きだが、岩と石の荒涼とした道を黙々と進む。
思えば、アンデスやヒマラヤの高地に暮らす人たちがヤクなどの家畜を追って山を進む映像を目にしているが、確かにこのような荒涼とした風景だった気がする。そのような所を今、自分も歩いている。時々、疎らな緑の中に高山植物が咲いているのを見つけ、何かほっとした気になる。
間ノ岳山頂は、岩と石だけの極めて素っ気ない山頂であった。南アルプス2番目、北岳とほとんど標高も変わらない日本第4位の山なのだが…。
間ノ岳は山容が優れて遠くから見ると美しく、それゆえ日本百名山にも選出されたと聞くものの。
間ノ岳に着いた9時過ぎにはすでに北岳に雲がかかり始め、谷から雲が上ってきていた。尾根に東からの気流が当たり、雲が斜め上にわき出しているのが見えて、興味深かった。天気が悪くなるかもしれない。先を急ぐ。
間ノ岳から農鳥小屋までの道が、一番きつかったかもしれない。農鳥小屋が見下ろせて、何となく近い感じがしたがとんでもなかった。傾斜がきつい上に一番荒涼とした場所で、基本的に全く岩石だらけで岩石砂漠を進むかのようだった。できるなら登りたくはない。ペンキで矢印や「ノウトリ」と岩に描かれていたが(農鳥小屋の主人によると聞く)、これが仮になければ、雲に巻かれたり夜間の場合、道を見失う恐れもある。熊ノ平小屋方面への分岐は、標柱がなければ恐らく気づくまい。
そんな岩石砂漠のような道の先に、赤い屋根の小屋を見つけるとほっとする。ここで昼食。福島県出身だというKさんと福島話に花が咲き、ゆっくりしてしまった。
農鳥岳を見ると登り返しがきつそうで、本当にこんな急斜面を登っていけるのかと思ったが、実際に登るときついが悪い道ではない。若いKW君と一緒になって先を進む。1時間ほどで西農鳥岳を越えて農鳥岳に達す。「白峰三山踏破」したが、すでに農鳥岳は雲の中。歩いてきた北岳・間ノ岳方向も見えず、感慨は今一つなり。
大門沢下降点までは緩やかな下り、花畑もあって目を楽しませてくれる。
下降点にはここで冬山の吹雪の中、下降点を見失い亡くなった若人の鎮魂の鐘が立つ。その事件に思いを馳せると、鐘の音が物悲しい。
稜線から下りると、一気にハイマツ帯が広がり、植生が豊かになる。逆に言えば、稜線上は極めて過酷な世界なのだろう。
大門沢に出る下りは相当な下りで、川原に出て振り返るとどれだけ一気に下りてきたのかが窺える。目の前の水は涼やかだ。
さらに40分ほどで大門沢小屋に着いた。沢沿いの小屋は、稜線上の小屋とは違って水が豊富で、シャワーまであるのには驚いた。KさんとKW君はここで一泊、自分は奈良田まで出ることにした。山旅の連れに感謝。
日没まで2時間。車道まで出てしまえば後は何とかなると、先を急ぐ。沢沿いの下り道は気持ちが良く、足を浸らせたい気分だ。丸木橋を渡り、水路と化している歩道も何か所か進み、道はやがて山に入る。そこは小尾根を巻く道で、樹林の中を進むのは気持ち良い。しかし朝早く発って、疲れも増してきた。上ってくる人3人に会ったが、下っていく者はもう既にいないようだ。
再度川原に出て、吊橋を3つ渡ると、じきに登山口の車道に出た。
ここまで小屋を出て2時間、日没間近だった。
後は車道をとろとろと歩くが、奈良田までは予想以上に遠く感じた。
西山温泉に宿泊し、ゆっくりと湯につかる。
歩き疲れた体に、湯が心地よかった。
帰路、芦安まで行き、南アルプス芦安山岳館に立ち寄った。
北岳周辺に関する資料等が数多くあったのだが、北岳周辺はこちらの芦安方面の人たちが夜叉神峠を越え、野呂川を越えて開発していった場所のようである。川筋に人が行き来することを考えると、奈良田側の方が結びつきが強いのではないかと思っていたが、実際には山仕事のため峠を越えていったようである。だから初期の山岳ガイドはこちら側の人が多いし、今も芦安側が北岳周辺への第一のアクセス地として機能しているようなのである。そんな背景も知り、勉強になった。
急がずにもう1日、山にいても良かったが、大変に感慨深い山旅となった。
(植物については極力調べてみましたが、間違い等があればご指摘いただきたく思います。ご容赦を。)
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