船山十字路〜周回 キレット小屋泊


- GPS
- 32:00
- 距離
- 17.2km
- 登り
- 1,916m
- 下り
- 1,919m
コースタイム
- 山行
- 6:30
- 休憩
- 1:10
- 合計
- 7:40
- 山行
- 6:10
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 6:30
天候 | 一日目:晴れ 二日目:晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
【船山十字路林道通行止め迂回路へ】 鉢巻道路から船山十字路へは、従来の右折ポイント先が通行止め。 迂回路は、八ヶ岳美術館より南側。 |
写真
感想
【プロローグ】
乙事権現講登山を続けて下さるというMさん。
独力で無理なくギボシ岩場の登り降りができるスキルアップのため「一般登山道岩場トレーニング」をすることを約束していた。
ルートは、私が選択肢をあげMさんに選んでもらい決定。
船山十字路〜西岳〜青年小屋〜権現岳〜キレット小屋〜赤岳〜阿弥陀岳〜船山十字路の周回。
東西ギボシ、赤岳キレットルンゼ、赤岳頂上〜文三郎分岐間、阿弥陀東面の各岩場を通ることになる。
さすがにこれだけやっつければ、ギボシの岩場登り降りは「朝飯前」になるだろうという魂胆。
【一日目】
巻き道取り付き〜千枚岩は、蜂のリスクがあるので頭にタオル巻いて黒い色を隠して出発。
例年より踏み跡が多いが、倒木放置は相変わらず。初めて通る人はルーファイが難しい箇所あり。
千枚岩で左折し西岳頂上まで一直線。
頂上では知らないPTのおばさんから山座同定を依頼されたので、片っ端から説明。
源治新道は、隠れた苔の名所。静寂の中、時間が止まったような風景が続く。
道々今日の宿泊を、キレット小屋にするか、赤岳頂上山頂にするか、両小屋の特徴を説明。
Mさんはキレット小屋に泊まってみたいという。
宿泊地がキレットと決まれば時間に余裕があるので、青年小屋で珈琲。
小屋番の青年が顔を覚えていてくれた。
竹内さんはTV取材か、ギターを背負っていた。
ギボシの岩場はMさんに先導してもらう。
ザレ場を避けて、なるべく岩の突起やステップを選ぶルーファイの練習。
東ギボシの岩場では、小さい子2人に先導させ後ろを母親が行くPTが下りてきたため鎖場の下に降りて道を譲る。
2人めの4〜5歳程度の男の子が片手で鎖持ちながら両足スリップ。
「落ちる落ちる!」と絶叫。運よく真下に私がいたのでお尻を持ち上げ救助。
Mさんはまだ丸印や鎖を頼る傾向があったが、何とか先頭でキレット小屋到着。
小屋番のシゲさんは2階で布団の整理作業中。
「今日はどちらへ?」「キレット泊まりです。」と挨拶だけして外で昼食。
Mさんと直した頂上の鉄剣を確認しに行く。
早くもいじられたあとがあり、石碑の位置はかわり注連縄は剥ぎ取られていた。
源治梯子の上から明日登る赤岳ルンゼの説明をしておく。
まだ遠くてMさんにリアリティーがない様子。
梯子はストック仕舞って降下。Mさんも続いてゆっくり降下。
旭、ツルネ通過してキレット小屋へ。
【キレット小屋】
道々話しておいた「日本離れした絶景」を先に見ておこう、とテン場へ向かうと清瀬氏が上がってきた。
K「お久しぶりです。朝、天狗登っている人が見えたので、Aさんのこと思い出してたところだったんですよ。そしたら予約が入って、出合小屋からだと思ってたので『青年小屋から』って聞いて『なんで?』って言っちゃいました。ははは。」
キレット小屋への予約は直通電話でなく、赤岳頂上山荘の電話にするシステムになっているのだ。頂上山荘からキレットに伝言される。この点は権現小屋の予約を青年小屋にするのと同じ。
A「お久しぶりです。(アコンカグア)どうでしたか?」
K「悪天候で結局山頂までは行けずに撤退強いられました。詳しくは後ほど。」
Mさんには、足元だけ見るようにさせてテン場の端に誘導。
A「はいどうぞ。」
と声をかけ、天狗尾根〜竜頭峰〜南峰と連なる赤岳の絶景をみてもらう。
Mさん大感激でかなり長い時間たたずむ。
小屋に戻ってまずビール。
Mさん2階で着替え中に、清瀬氏にMさんのことを説明しておく。
K「21世紀に『権現講』が続いていたんですね。そのままだと、誰も登らないで麓で年寄りが飲み会やるだけの行事になってしまったでしょう。いい話ですね。」
意外なことに清瀬氏は、乙事周辺がかつて甲斐武田の領地であったのが、諏訪領に編入された話を知っていた。
K「暇ですから色々読む時間があって・・・」と謙遜。
A「今回は色々忘れ物しちゃった。スコッチ忘れてきたからウイスキー売ってください。」
3時前からニッカウイスキー飲み続けていると、いつものようにおつまみ料理を出してくれる。
今日の受付は、他にテント2張りと小屋泊はソロ男性一人。
A「シゲさんとこ寄ってきたんですけど、2階で布団整理してましたよ。」
K「昨夜はシゲさん飛び込みで22人受けたはずです。頂上でて青年小屋に予約していた24人PTで、具合悪い人が出たんですよ。その人と付き添いの二人は『ここで引き受けます』って言って泊まってもらったんですけど、他の人は青年小屋に予約してるからって出発したんです。で、こちらに泊まった二人が携帯で話してるのを聞いたら、結局22人PTは『青年小屋まで行けないから』って夕方権現小屋に飛び込みで泊まったようなんですよ。」
A「夕飯時に飛び込み22人って、よく捌きましたね。」
K「さすがはシゲさんです。だから今日は疲れていたと思いますよ。」
そうか、2階であの時間にまだ布団の整理が終わっていなかったのは、飛び入り大PTのお世話(朝食も!)で大変だったからなのだ。
心なしかうなだれているように見えたのはそのためだったのだ。
A「飛び込まれてから米炊いてカレー増やしてスープとサラダ作ったんですね。凄いの一言。」
多分炊飯は1回では間に合わなかったのではないか・・・
K「権現小屋は大わらわですし、青年小屋は22人分夕食用意したはずですから・・・」
青年小屋の若い小屋番くんもとんでもない目に合っていた事が判明。
お気の毒としか言いようがない。
清瀬氏にアコンカグアでのことを詳しく聞く。
連日のブリザードで、彼が到着した日までにシーズン中登山可能だったのはたった一日しかなかったのだという。
現地でも異例の事態だった様子。
K「5千数百mまでは行ったんですよ。テント張って一日待ったんですが、風速25〜35mのブリザードでそれ以上どうしようもなかったですね。」
Mさんに風速30mの世界をわかりやすく解説。
A「突っ立っていると吹き飛ばされる。顔に雨や雪がブチブチ当たる痛さは、近距離から爪楊枝をほっぺに連続で投げつけられるのと大体同じ感じ。」
Mさんは口アングリで言葉も出ない。
K「あきらめてパタゴニアに向かったんですけど、あっちも雨で駄目でした。連日バスで移動して疲れましたよ。」
A「草野さんには内緒にしておきましょうか?」
K「いえ、全部フルオープンでお願いします。そして『また必ず行きます』とお伝え下さい。今年はネパールに行きますけど、アコンカグアはまた必ず挑戦します。」
いやあ〜男だね〜。
羽釜ご飯のカレーはかなり辛味が増していて、私的には非常に高評価。ご飯が羽釜炊きなのもあり、料理として激ウマ。
ニッカウイスキー2本目に突入。酔っ払って午後7時過ぎから寝る。
【二日目】
朝5時直前に起き、窓を開けて幻想的な富士山を眺めていると、発電機の始動音とともに照明が付いた。
K「お食事の時間です。」と声掛けしてくれる。
温かい朝ごはんは有難い。お弁当もお願いしておいたが、頂上山荘で以前清瀬氏に作ってもらった時とまったく同じ、ちらし寿司ベースのお弁当。懐かしい。
いつものように玄関で写真撮影。清瀬氏が後日写真はがきで送ってくれるのだ。
Mさんはキレット小屋が大のお気に入りになったという。清瀬氏の人柄、仕事ぶりも、テン場から見える絶景赤岳も朝の富士山も深く心に刻んだ様子。
M「富士山は青年小屋でみたのと全然違いますね。距離が近いのかしら?」
A「距離は大差ないはずです。でもキレット小屋から見る朝の富士山はいつも深い味わいがありますね。『神々しい』という言葉がぴったりで。」
名残惜しいが清瀬氏にお礼を言って出発。
A「すいません。ニッカ数ミリ残っちゃったけど・・・」
K「とっておきましょう。またみえるでしょうから。」
小屋閉めまでにもう一回泊まりに行かねば。
Mさんの岩場トレ核心であるルンゼに向かう。台風接近のためか風が強い。
ザレ場下端に付いた時、おもむろに告げる。
A「ではここでストック1本仕舞ってください。」
ストック縮めながら目の前に立ちはだかる岩場をみたMさんの顔に絶望の色が滲む。
ゆっくり上がるが、Mさんは文字通り必死の形相。
一番恐ろしい斜度の岩場の上端で私から無情の指示。
A「はい、ここで回れ右して『ここから落ちたらこんなとこ転がり落ちる』の写真撮りましょうか。ここでしか撮れませんし。」
Mさんは「ヒエ〜」とか「ェギ〜」とか声を上げ、「回れ右などとんでもない!」といったが、「ザックの腰ベルト持って確保するから大丈夫」と反転してもらう。
こうやって少しでも岩場の急斜面途中での停止に慣れてもらう。
ガレ場終了の急斜面で同様の指示を出した頃には、Mさんはそんなに怖がらずに写真を撮ることができていた。
ガレ場より上の、足の着いていない梯子横の鎖など、そうそうたる高度恐怖ポイントの数々も無事クリア。
昨夜清瀬氏と私の会話に出てきた竜頭峰の「足だけ銅像」を見に、竜頭峰に登る。
すぐ横に南峰、小屋のある北峰が手に取るように見え、Mさん大感激。
頂上には誰もいなかった。一応南峰北峰も踏んでトイレ休憩。ここから先にトイレはない。
文三郎分岐に向けての簡単岩場、キレット超えしてきた今となってはMさんの敵ではない。
キレット超えで、鎖があっても頼るべきでないところ、ハシゴがあっても乗らなくて済む登り方、丸印に従わないもっと滑りにくいルート取り、などすでにたくさんのことをMさんは学んできた。
「朝飯前」で岩場抜けると、イヤラシくザレた九十九折。Wストックを身体の前に突き、重心を前寄りにして尻餅突かないよう慎重に進む。
M「今の岩場よりよっぽど危ないですね。」
成長が見て取れる。
中岳登り降りして最後の岩場、阿弥陀東面に取り付く。
ここは意外に危ないポイントがあるので、良い練習になる。
一般的に難所扱いされている横岳より、こっちのほうが難易度が少し高いと常々感じていたのだ。
Mさんは余裕で?クリア。
頂上にはまたしても誰も居ない。
昨日からの来し方を西岳から追って線でつなぐ確認。
お昼から雨になるかも、という清瀬氏情報があったので、さっさと摩利支天へ。
船山十字路までの下りは、当初御小屋尾根のつもりでいたが、Mさんはなんと先週、御小屋尾根往復自主トレをしたのだという。
見上げたものである。で、下りは中央陵に決定。
他の尾根より短く急なのが特徴の尾根だが、二人共「膝が痛い」とヒーコラ言って下山。
途中、林業用の機械や金属ロープが放置してあった場所の手前、ケルンが積んであるところで木の棒トウセンボ。
そうか、ここは直進じゃなく右折するポイントだったのだ。以前来た時は直進してゴロタ岩の涸れ沢を長距離歩く羽目となりうんざりした記憶がある。
今回は右折して、順当なルートで広河原林道終点に無事到着。
長い林道歩いて12:10に船山十字路着。お疲れ!
もうMさんは単独でも、ギボシの岩場は「朝飯前」で通過できることだろう。
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