白山で最も長い谷、目附谷 （+御前峰）
石川県
岐阜県
alpine3B
体力度について
- GPS
- 23:38
- 距離
- 42.8km
- 登り
- 3,824m
- 下り
- 3,090m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 10:20
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:20
- 山行
- 8:45
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 8:57
| 天候 | 9/2 くもり〜はれ 9/3 はれ〜くもり 9/4 はれ〜くもり→雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2023年09月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
バス 自家用車
下山後は別当出合→市ノ瀬（シャトルバス）、市ノ瀬→白峰（松任行きバス）、白峰→瀬女（金沢行きバス）、瀬女→一里野（白山市コミュニティバス）と4本バスを乗り継いで一里野へ戻った。 |
| コース状況／ 危険箇所等 |
目附谷林道：深谷まではno problem。深谷の左岸で猛烈に崩壊していた 巡視路：立屋谷までは明瞭で良好な道。立屋谷左岸から荒れ始め、終点の沢手前ではザレ斜面の藪とかでわりとダルかった。素直に目附谷を最初から進む方が楽かも。 目附谷：テープとかトレースは基本的にない。水量や雪渓の有無次第ではかなり困難な遡行になるだろう。行程は大きく分けて序盤の河原・大滝帯、中盤の廊下ゴルジュ帯、終盤の連瀑帯に別れる。上流は割とぬめっているのでフェルトソールが良さそう？フェルトで困ったところは特になかった |
| その他周辺情報 | 白峰温泉総湯でバス待ちの間に入浴 一里野温泉はまだ復旧していない。北側での最寄りは瀬女「ヒメの湯」。 |
写真
このキロ数からするに、もともとこの巡視路は取水堰堤まで続いていたわけではない可能性が高い（GPSログでは立屋谷〜終点の沢〜目附谷本流まででほぼ5km）
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手前の少し広いとこで沢靴にチェンジ
河原には様々な種類の岩石が転がっている。砂岩、礫岩は手取層群というやつ、あとは飛騨変成岩という片麻岩がこのあたりには多いらしい。まあ地学素人なので気になるのはどの岩が滑りやすいかとかそういうことだ。
水量が多いとここからも水を出しているんだろうか
河原が広くなって鳴谷出合。1日目の幕営候補地点だったが、まだ13時なので明日を楽にするためにももう少し進んでみる。二つの大滝を越しておくか。
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1日目の幕営候補地点だったが、まだ13時なので明日を楽にするためにももう少し進んでみる。二つの大滝を越しておくか。
ようやく沢登りらしくなってきてエンジンがかかってくる巡視路では推定20kgの背中の重荷に喘いでいたが、その重さを感じなくなってきた
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巡視路では推定20kgの背中の重荷に喘いでいたが、その重さを感じなくなってきた
この斜面（小ルンゼ）、上に行くとなんとなく獣道以下ではあるが何某かの通行の痕跡があるような気がした紅滝右岸の岩壁は意外とそこまで高くなく、小尾根を乗り越えるとすぐ河原であった
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紅滝右岸の岩壁は意外とそこまで高くなく、小尾根を乗り越えるとすぐ河原であった
結局ここを幕営地にしたと思う。平らであるという点では合格だが増水したらあっさり浸水しそうな場所、下の上という感じだがまあ天気は良さそうだしもうここに決めた。
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今日は初っ端から難所の廊下ゴルジュ帯に突入である。
それはそれとして今日もいい天気
ここが先人たちの記録でも難所と記されていた淵。ここを大高巻きしたPTはその巻きに4時間程度を要したとかなんとか。しかし水量が少なめだからか、そこまで険悪には見えない
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しかし水量が少なめだからか、そこまで険悪には見えない
左手のプールを泳いで回り込み左手に取り付く。水面下のスタンスを伝ってクリア。続く小滝は右手からへつってクリア。今回泳いだのはここだけだった
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一番険しい廊下は抜けたのかな
これが赤壁への谷の出合。奥は茶色の壁が広がっているらしい。しかし地形図的には少し登れば大分傾斜が緩くなってそのまま湯ノ谷乗越につながっており、いざとなれば釈迦新道へエスケープ出来そうな気もする。未確認。
しかし地形図的には少し登れば大分傾斜が緩くなってそのまま湯ノ谷乗越につながっており、いざとなれば釈迦新道へエスケープ出来そうな気もする。未確認。
これが草付きはめちゃ滑るし、崩れてきただろう小岩が多量に乗ってるし、岩のスタンスは乏しいしでかなり怖かった。最終的には岩の上に根を張っている草を引っこぬいてスタンスを作って登った。
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この巻きもまあまあ悪い。ルンゼを登ってから斜面を平行移動するわけだが不安定な岩が多い。この谷、複数人で来るなら（とくに源頭部は）落石は超！！要注意である
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そのまま右岸側の草付きを巻く。これも急傾斜。
このへんでビバークできへんかなと計画段階では考えていたが、ここでは平らな場所を得るのも大変だろう
先人の記録に「ハイマツにぶら下がるような」とあったがまさしくそんな感じであった。普段の沢登りよりよほど藪漕ぎをしている気がする。
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少々ハイマツを漕いでついに四塚山と七倉山の間の鞍部に到着。日曜午後ということで土日での登山客は皆降りた頃合いなのか、ここでしばらく燃え尽きていたが誰も通らなかった。
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日曜午後ということで土日での登山客は皆降りた頃合いなのか、ここでしばらく燃え尽きていたが誰も通らなかった。
さて、本来なら加賀禅定道を通って一里野に降りるのが丸いのだろうが、ザックの重さに負け水を1Lしか汲まなかったこと、白山主峰を踏みたいことなどから南に歩を進めることとする。無雪期百四丈滝は今回はお預けにするか。
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霊峰の道で何を言っているんだという感じだが、この辺から便意（大）がだいぶヤバくなってきた。紙は持ってるから人目につかない沢の中でしとけばよかった。
紙は持ってるから人目につかない沢の中でしとけばよかった。
目附谷には残っていなくてよかった。
方々の体で転がり込んだ室堂トイレはよもやよもやの水洗+紙付き。よくあるぼっとん便所の匂いもない。天の助けとしか思えなかった。チップ100円払ってねって張り紙があったが1000円くらい出してもよいと思った。（実際には500円入れました）
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溜まっていたものを放出したところでもう動く気がなくなり、室堂の予約外宿泊ができるか聞いてみるとokとのこと、これ幸いとばかりに本日は贅沢に室堂小屋宿泊に変更した。
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ご来光はどっちでもいいやって感じだったが、御前峰は踏んでおきたい。それならばということで日の出前に登り始める
不動の名に反して、甚ノ助谷などは年に10cmくらい動いているらしい
シャトルバスで市ノ瀬へ。ここから一里野まで戻らないといけない。13：30金沢行きのバスは瀬女に止まるが写真の11：00松任行きのバスは止まらない。ただ、市ノ瀬で待っているよりは白峰で待っている方がよほどいいだろうということで白峰まで行ってしまうことにする。1回行ってみたかったしね。
13：30金沢行きのバスは瀬女に止まるが写真の11：00松任行きのバスは止まらない。ただ、市ノ瀬で待っているよりは白峰で待っている方がよほどいいだろうということで白峰まで行ってしまうことにする。1回行ってみたかったしね。
感想
目附谷、めっこたん、白山で最も長い谷である（地獄谷とかも長いが、まあ本流から分岐してからの長さということで……）。冬季百四丈滝がきっかけで白山エリアに目を向けた自分だったが、加賀禅定道の通う尾根の西に流れるのが目附谷で、地形図を見ると両岸をびっしり岩の記号に囲まれつつ二つの大滝を中流部に有し、源流ではぐんぐん標高を上げ七倉山付近に終わっている。こういう長い谷を遡行できたら楽しいだろうなー、でも無理なんだろうなーと思いつつネットを漁るととある方の単独遡行記録が出てきた。それを見ているとどうやらロープを使った登攀や懸垂下降はいらなかったらしい。ふむそれならチャンスがあるか？と思えば、別の方の記録ではゴルジュの大高巻きで4時間かかって懸垂で降り、降りた先には雪渓が詰まって撤退寸前になったと書いてあったり。参考になる記録はそれら含めて片手で数えるほどしかなかった。
熟慮した結果「条件が良ければ自分でも行けそう」という結論に達した。その条件は�‐�雪シーズンで雪渓が残っていない、��台風などで増水していない、�Ｇ颪泙蠅僚鼎気料�備を背負った状態での滝登りができる である。ということで��はちょくちょく重荷での山行を増やしていた。�，�来たらその時にまた考えるか〜と思っていたら、今年2023年がどうやらそのシーズンであるらしい。そうなればもう今年行くしかねえということで9月頭に夏季休暇を集中して取り、あとは天気次第という状況になった。8月末になってトリプル台風が発生してやきもきさせられたが10，11号とも逸れていき12号は山行中に熱低に変わるという結果になり、�△睫技�クリア、満を持して一里野へ旅立ったのだった。
金曜日の仕事を午前で終え、午後から一路一里野へ。1泊2日での脱渓を目指すので初日は朝早くから行動したいということで一里野で前泊することにした。ゲストハウスに宿泊。一里野高原のライトアップを眺めたりして過ごす。晩御飯にとり鍋という野菜と鶏肉が大量に入った鍋を出してもらったのだが、締めの雑炊と合わせて良いカーボローディングになったのではないか（知らんけど）。美味しかったです、ごちそうさまでした。
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土曜日、天気は少なくとも悪くはなさそうで一安心。眼下の一里野に別れを惜しみつつ林道を歩いていく。目附谷林道の分岐は通行止めの貼られたゲートで封鎖されておりいよいよ白山の奥地へと入っていくという実感が湧く。目附谷林道は封鎖こそされているものの普通の舗装林道ですいすい歩いていく。ひときわ大きな谷にさしかかるとそこが深谷だった。
ここから先、林道をもう少し進みすぐ目附谷に入渓するパターンと、ここから取水堰堤の巡視路をたどる二つのルートがあるが、前者は入り口のスリット堰堤がややこしいらしくそれを避けたいのと、あとは純粋に巡視路とやらに興味があったので後者とした（尤も、深谷より先の林道は大崩壊しているので前者をとるのは骨が折れるかも）。巡視路は深谷を少し奥に入るとすぐに見つかった。道の状態も意外と全然悪くなさそうで、やや谷側に傾いた片傾斜になっていたりするところはあるものの全体には大きな問題なく、トラバース区間などは部分的に自転車でも走れそうなレベルだった。ただ、立屋谷を越えたあたりから怪しくなってくる。立屋谷左岸は傾斜のある藪で足下を掻き分ける必要がある。尾根を乗り越えトラバースに入ると再び平穏になるが、終点の沢手前がだいぶ状態が悪く、場所によってはけっこうな傾斜のザレ場に藪が生え、その中にかすかに道が通っているだけという状態であった。完全な藪ではないので足はスムーズに前に進むが雨の後とかは滑ってかなり通りにくそうだ。そんなわけで存外時間を食い、終点の沢についた時はやれやれやっとかという感じだった。これなら普通に深谷から目附谷を遡るか、立屋谷が下れるならそこから脱出してもよさそうである。沢靴に履き替え、終点の沢を下り、ようやく目附谷本流の河原に降り立ったときは午前11時、実に出発から5時間が経過していた。ショート沢登りなら終わる頃合いである。
ようやくたどり着いた目附谷。白山最長の谷は最長だけあって行程の中で様々に表情を変える。さながら三部作といったところで、第一部は河原歩き+大滝区間。第二部は圧倒的な廊下ゴルジュ帯、第三部は源流の連瀑エリアである。化石の多産地だという目附谷、様々な種類の岩がゴロゴロ転がっており、緩傾斜のいかにも本流遡行といった感じの歩行が続く。水は少なめだが深いとこでは澄んだ青をしており、かなり大きめのイワナとおぼしき魚影も大滝下まではビュンビュン走っていた。渓流釣りに腕の覚えのある人ならそれも楽しめそうだ。取水堰堤やいくつかの枝谷の出合を越えて進んでいくと鳴谷出合、広く開けており幕営適地だが時間も早いのでさらに奥に進む。こっからはゴーロになり巨岩の中を右往左往しながら進んだり、ようやく沢登りらしさが出てきて次第にエンジンがかかってくる。荷物の重さを忘れてきた頃合いで前方右岸に大きな壁が現れ、おやっと思う間もなく唐突に紅滝が出現した。遠くから見ていると意外と小さいな？と思えるそれも接近していくと直下では猛烈な水煙を飛ばしてくる圧倒的な30〜40m級の直瀑であり見事のひとこと。
紅滝は右岸の斜面を登る。ロープを要するような岩壁ではないもののかなりの傾斜で植物とか灌木を掴まないとずり落ちそうな斜面を強引に登っていく。途中で振り返る紅滝が一番全体をすっきりと眺められる姿だった。さてこの斜面、下はともかく上に行くと獣道よりグレードは下だがなにかしらかが通った跡のようなものがあった。岩壁自体も奇跡的にほぼ滝の高さ分しか発達しておらず、ひょいっという感じでわりとすぐに乗り越えることができた。
しばらく小滝を超えながらの河原歩きが続く。カブト谷を越えるとひときわ前方が狭まって架かるは二重滝。下段の釜はまるで海面のように揺らめき青い水をとうとうとたたえていた。こちらもかなりの壁なのだが右岸に一部岩が切れているところがあり、そこを小尾根の乗り越えまでよじ登り灌木に絡まりながら降りると落ち口付近に出た。だいぶ余裕を持って上流側に降りたつもりだったのでここはしっかり大きめに巻く方がよさそうである。
さて、二つの大滝を超えたのでそろそろ幕営地を探す。先人の記録では1500m付近の河原に幕、というのがあったので進んでみる。二重滝の先のこの区間は思っていたより長く、そろそろいい場所を見つけないと……と少し焦りつつ進んでいくと何やら視線を感じる。近づいてみるとそれはシカでもクマでも、よもやヒトでもなくゴリラだった。このゴリラ岩、勝手に顔が上流を向いていると思っていたので遡上しているときに見つめられるとは思わず、一人でウケてしまった。なるほどこれはかなり完成度の高いゴリラ、なんなら背後から見てもゴリラ、今にも振り返ってきそうなゴリラだった。その少し上のところで妥協の幕営地を選定。雨の恐れがあるなら絶対に避けるべきところだったが天気は良さそうだったので地面が平らにできるという点で妥協した。
その後は一人で設営し、一人で晩飯を作って食べる。ある程度有名な関西の沢登り地であれば設営して自分一人しかいないつもりでいると他の遡行者が通ってきたりすることもあるがここは人の気配などみじんもない。そういえばピンクテープとかお助けヒモの類いも巡視路以降一切見ていない。今までに登った谷の中では最も原初の姿に近いかもしれない。他人の視線がないのをいいことに自分もヒトとしてより原初の姿に戻って過ごした。日没くらいに少しガスが出てきたがすぐに晴れ、夜中は星とひときわ明るい月がツェルトを照らしていた。
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日曜日。朝5時くらいに起床、空に雲は少なく澄んでおりその影響かそれなりに冷え込んでいる。焚き火は面倒くさがってしなかったので、昨日の沢装備も濡れたままでひんやりと冷えている。服を着替えると寒いくらいで（あと汗臭い）、そそくさと6時に出発した。
さて今日はいきなり核心の廊下ゴルジュ帯からのスタートである。河原を少し奥に進むと両岸狭まってきて、二重滝にそっくりな2連滝からスタート。これを左手からひょいと越えると少し開けたいい感じの河原があった。ここで幕営すればよかったなと思ったがあとの祭り、せめてここに記しておく。その後も狭い谷の中に断続的に小滝がかかり、やがて淵が出現。先人たちの記録ではここが難所であり、懸垂を要するような高巻きのできない自分はここを越せなかったら延々引き返すしかないんだろうなという点で懸念していた。問題箇所は水量の少なさもあってか存外あっさりと越せたが、その後も両岸高巻きなど望むべくもない壁が続き、その中をうねりながら流れが続いていく。こんな地形の中を進んでいること自体が信じがたいよな、という圧倒的な景色だった。
地形図Co1580くらいで右岸から枝谷を迎えるあたりで廊下はいったん途切れ、しばらく行くと5m級の小滝を左手から乗り越える。その後はやや傾斜を強めた河原歩きといった様相になる。しかしなかなか谷の中には陽が射さず、薄暗い中を歩いて行くとCo1816の二俣に着く。
ここから一気に傾斜が強まる。右俣に入り最初の10m滝は左岸側から巻いたがこの草付きがかなり滑りやすく、岩くずも埋まっておりかなり通りにくかった。結局草付きの草を引っこ抜いて整地しステップを作って乗り越えた。連瀑帯の出だしから不安にさせられる。その後もどんどん傾斜が強まる中を進んでいく。大きめの滝は2つあって、どっちも左岸から巻いたがかなり藪こぎみたいなことを強いられた。あと斜面の石がかなり不安定で、複数人で来るときは落石には相当気を遣う必要がありそう（時間もだいぶん食うだろう）。振り返ると背後には日本海まで見渡せる景色が広がっており、それだけ高度を上げていることを実感する。やがて2100mの谷の屈曲点を迎え第一の連瀑がかかる。下部をすいすいと登ると最上段は日陰の中、数条に分かれた流れがのしかかるように広がっている。直登はできないしできたとしても怖くてする気にならない。右岸の草付きを登り突破する。上はわずかに平穏なナメ区間がひろがっているがその先、2200m地点で第二の連瀑を迎える。遠くから眺めるとイヤ無理やろ……という感じだったが意外と登りやすかった。最上部は先人たちが「飛び出す滝」と評する滝、なるほどたしかにそうとしかいいようのない滝が小さな円形ステージのような場所に架かっていた。左岸のリッジをハイマツ頼りによじ登り越えた。
その少し先にスダレみたいな小滝があり、これを越えたら危険地帯はほぼ越えたようなものということで緊張の糸が緩み、それと同時に歩みも鈍くなる（今思えばシャリバテもあったのかも）。先人たちの写真では源頭は緩斜面でルンルン鼻歌スキップで通れそうなところ、なんなら幕営もできそうなとこかと思っていたが実際には足取り重くそれなりの傾斜の斜面を這い上っていた（まあ地形図的に緩傾斜であることはまずあり得ないのだが……）。なんなら2100mくらいまで来ればそこから左岸側、釈迦新道にエスケープもできるんじゃないかと思っていたりしたが、振り返る景色はそれが空想に過ぎなかったことを実感させる。水も切れ最後には白いガレ場に姿を変えた目附谷、そのガレ場を慎重にのぼり、少しハイマツを漕ぐと待ち望んだ四塚山と七倉山の間の鞍部に飛び出した。最後の登りで時間を食って、時刻は13時となっていた。
室堂に進むことにしたのは写真のキャプションで述べたとおり。存外ほかの登山者もおらず、もうだいたい降りきった頃合いなのだろうか、稜線も独り占めしつつ進む。ただしこのころから便意（大）がだいぶん警報を発しており、大汝はトラバースしてパスしてしまった。御前峰もちょっと足を伸ばせば踏めるところにあるのだがもはやそれどころではなく、一刻も早く室堂のトイレに駆けこまねば霊峰白山に巻きグソ山を立ててしまいかねない状態だったので顔をしかめつつ室堂に向かう。方々の体で駆け込んだ室堂のトイレはまさかの水洗で、感謝のあまりチップを要求額の5倍も投じてしまった。そして出すものを出してすっきりしたところで「沢登erならここから南龍ヶ馬場に向かってツェルトを建てるのよ」という天使と「もう室堂に泊まっちまえよ、その方が明日御前峰にも行きやすいぞ」という悪魔の脳内会議が開催され、5秒ほどで悪魔が勝利し本日は室堂宿泊の易きに流れた。まあこのくらいの贅沢は目附谷遡行成功のお祝いで許されるだろう。日曜夜に泊まる人は少ないのか、通された立山荘という建物は貸し切り状態でここから日没まで気兼ねなくゆっくりできた。日没時には見事な雲海が南側に広がっており、室堂にいる人たちが皆思い思いに夕日を眺めていた。
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月曜日。ご来光に関してはそこまで強いモチベはなかったが、まあせっかく登るのならと間に合う時間に室堂を出発。足と膝には2日間の目附谷でのダメージを感じる。それでも軽装なので30分ほどで御前峰に到着、これで名実ともに白山に登りましたと胸を張って言える状態となった。ご来光そのものは雲で見えなかったが南側は今日も雲海みたいな感じでいい眺めだった。
室堂に戻り、朝飯を食べ、しばし微睡んだりしてから8時に出発。さすがに荷物を背負うと太ももは震え膝はきしむ（大げさ）が、まあ今日はもう降りるだけなのでずんずん下っていく。今日もいい天気なので景色もよく励みになる。さすがに目附谷と違って登ってくる人も多い。そして道もしっかりしている。甚ノ助避難小屋は勝手にじめじめした臭い小屋かと思っていたが、水も通っているし中も大変綺麗だった。申し訳ございません。その後も無心に下っているうちに調子も出てきて、特に書くこともなく中飯場、別当出合と降りていき最後に長い吊り橋を渡ると10時半、ついに目附谷遡行登山はゴールを迎えた。
さて、登山は終わったが旅は一里野に戻るまで続く。最悪タクシーに5ケタ円落とすことになるかもなと覚悟していたが、以下の行程でバスのみで合計2370円で一里野に戻ることができた。
別当出合10：30→市ノ瀬10：50 シャトルバス 800円
市ノ瀬11：00→白峰11：20 松任駅行きバス 800円
白峰13：55→瀬女14：15 金沢駅行きバス 670円
瀬女15：07（4分遅れ）→一里野15：30 白山市コミュニティバス 100円
（※金沢駅行きバスが市ノ瀬出発13：30なのでそれに間に合えば下に降りはできる。運転日は要確認）
別当出合に着く時間は特に計算してなかったのだが、おそらく自分が乗ったバスが松任駅行きバスに連絡する最終シャトルバスだった。そのおかげで白峰でバス乗り継ぎ待ちの2時間半ほどの時間ができ、1回訪れたいと思っていた白峰温泉・市街地をかなりゆっくり満喫できたので、やはり別当出合側に降りてきて正解だっただろう。最後のシャトルバスが4分程度遅れており最後はえっまさかここに来てタクシー呼ぶ羽目に……？と焦ったがそんなことはなく無事一里野に帰り着いた。最後のバスに乗っているときくらいから山の中では3日間ついに1滴も降ってこなかった雨がポツポツと降りはじめ、一里野に着いた頃にはそれなりの雨となっていた。
☆ここ2.3年ほど、ずっと行きたいと思っていた目附谷だったが、今回ついに好条件の下アタックに成功。夕立含めて雨にも降られなかったのは本当に奇跡的。今回はわりとすいすい遡行できた（それでも1日半かかっている）が、多雪シーズンや多雨シーズンは遡行難易度が跳ね上がるだろう。それこそ通過に2泊3日を要することもあるかもしれない。
いやそれにしてもまさか完全遡行できるとはなあ……途中で撤退とかエスケープの可能性が半分以上くらいあるかなと思っていたので、今でも本当に遡行したのか半信半疑だったりする。なんだかここ数年の目標を達成してしまい逆に喪失感すら感じる。
後日、動画を追加するかも
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