八ヶ岳冬期全山縦走を目指して
- GPS
- 12:33
- 距離
- 11.5km
- 登り
- 811m
- 下り
- 1,697m
コースタイム
- 山行
- 5:40
- 休憩
- 1:45
- 合計
- 7:25
- 山行
- 4:00
- 休憩
- 0:57
- 合計
- 4:57
天候 | 吹雪き、晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
八ヶ岳冬期全山縦走
いつかやってみたいと思っていた。冬期の天候の急変を考えると恐らく3泊4日は必要だろう。いや予備日も更に検討する必要があるかも。
例年クリスマスの頃には大寒波がやってくるが案の定今年も今季最大という寒波がやってきた。仕事も一段落しているし行くなら今だなと22日〜25日で決行することにした。
しかし、ソロでの危険性を感じ、直前に仲間に呼びかけてみると2人が手を挙げ3人で行くことにした。だが、結局一人は家庭の事情で行けなくなり2人となった。
21日20:00、下山口にあたる蓼科山の登山口であるスズラン峠園地駐車場に集合した。ここで前泊し22日の早朝、車を1台置いて、登山口となる富士見高原ゴルフ場の駐車場へ移動。駐車場は我々の車のみ、あたりは真っ暗、マイナス8℃の空気がピーンと張りつめていた。ヘッテンをつけて28kgのザックを担ぎクマザサと灌木の道を歩き始めた。
今回の難所としては青年小屋へ下るゴーロ帯、権現岳前の西・東ギボシの岩稜トラバース、キレットから赤岳への長い岩稜の登り返し、横岳の通過などが考えられる。着雪の度合いによって雪岩ミックスの難度も異なってくるがロープやビレイ器具、更にテントやスコップなどの生活具、雪稜登攀具など、自然と荷物が増える。
編笠山への登山道の始まりは度々林道を横切り間違いやすい。やがて雪が出はじめるがツボ足で行けそうだ。休憩しているとソロの壮年が軽快な足取りで小さなザックを背負い追いついてきた。「大きな荷物ですね!どちらまで?」と聞くので「一応、蓼科山目指して、今日はキレット小屋あたりまで行ければと思っています」と応えると「す・す・す・すごーい!」と、この時期に頭オカシイんじゃね?と言った雰囲気の顔だった(笑)
森林限界が突然終わるとゴーロ帯だ。凄い風が襲ってきた。時折りふらついて立っていられない。岩と岩の間に足を滑らせては大怪我なので慎重に手を使いながら山頂へのルートを見極め進む。観音平からのコースの場合、このゴーロ帯はあっと言う間に終わって山頂となるが、今回のコースの場合は結構ゴーロ帯が長い。突風に煽られながら這う這うの体で山頂に到着した。上空のすぐ近いところは真っ黒い雲に覆われ激しく動いている。権現岳や赤岳をはじめ八ヶ岳の稜線は全て黒い雲が深く被さっていてそこは激しい吹雪であることを知らしめていた。かろうじてこの編笠山だけは強風ながらも視界は保たれている状況だろう。
山頂でショルダーハーネスに取り付けたホルダーからカメラを出すがあまりに低温でソフトがフリーズし開いたレンズが閉じなくなってしまった。仕方なくポケットからスマホを取り出しスマホで撮影する。以後カメラはハードシェルの胸ポケットに収納し防風と少しでも体温が伝わるよう対策とした。短時間で山頂を退散し青年小屋へのルートを森の中に下る。アイゼンを履いていないので結構段差のあるところでは滑り落ちた。アイゼンを履けば良いのだろうがこの直ぐ先から始まる青年小屋へのゴーロ帯での着雪が無い場合の事を考えて敢えて履かなかった。しかし、森林帯を抜けて急坂になるとこれはとてもアイゼン無しでは危険と判断しやっとここで12本歯アイゼンを装着した。どうせ履くならもっと早く履けば良かった(>_<)
第一の難所の青年小屋へのゴーロ帯はやはりアイゼンを履いては足の裏の重心が高くなり複雑に向く岩の表面を下るのは捻挫しやすい、かといって岩の間に溜まった雪もスノーブリッジ状態なのか雪が詰まっているのか判断しかねる。もし雪がただ被さっているだけだとしたら岩と岩のクレバスに落ちることになる。なので、なるべく岩の上を一歩一歩ゆっくりと時間をかけて下っていった。
11:30頃、青年小屋に到着。このまま権現岳を越えてキレット小屋へ向かいたいところだが権現岳の方を見ると真っ黒の雲に覆われている。猛烈な吹雪が予測できる。仕方ない、今日は青年小屋のテン場でビバークすることとした。森に近いところで風も当たらず快適な夜となった。夜は肉鍋をしたのでシングルウォールのテントの中はまるでサウナ状態。
23日、起床してみるとテント内はびっしり結露が張り付いていた。権現岳方向はまだ雲に覆われている。昨夜は更に降雪があったようですぐそこの針葉樹まで真っ白になっていた。
昼頃まで停滞していると流れる雲の薄くなったところから青空が見え隠れするようになった。腕時計に内在する気圧計も上昇傾向を示している。
「よし!出発だ!」と幕営を撤収し13:30頃スタートした。先行者が二人いるようで靴の足跡が微妙にずれながら先へ伸びていた。しかし西ギボシにかかる直前に雪が深くなると同時にそのトレースは消えた。ルートもよく判らない。真っすぐ行けばハイ松帯に雪が覆い被さっているし左に上がれば岩峰が立ちあがっている。果たしてどうするか。
ハイ松帯へ突っ込んでも下がよく判らない。もし崩落個所に雪が被さっていてはそのまま雪崩れるか転落だ。と判断し岩峰を上がることにした。高さで5m程、アックスとアイゼンで登攀した。上部の岩にスリングで支点を構築してメインロープでカラビナにセルフビレイを取り後続者のセカンドビレイを開始する。激風の中、大声で「登っていいよー!」と叫ぶ。セカンドのセルフビレイを確認し次のルーファイを行う。そんな所をもう1箇所通過した。西ギボシ、東ギボシのトラバースは雪が斜めに被さり足場がよく判らない。一応、二人でアンザイレンしているものの鎖にもセルフを掛けて慎重に通過した。雪煙の向こうに権現小屋が見える。残念だか権現岳を越えて長いハシゴを下った頃には暗くなるだろう。仕方なく今日は権現小屋の脇を借りてビバークすることにした。
そうと決まれば焦りも無くなり、ゆっくりとビバーク地を選定しザックを置いて権現岳山頂へアンザイレンしたまま登った。
山頂では薄くなった雪雲と激しい風の向こうにある太陽が周りを赤く染めていた。俺達は、赤い雪煙りに包まれて不思議な感覚を覚えた。下界では絶対にありえない環境だろう。
その夜もかなり冷え込んだ。テントの外に出ての小用も突風と低温でとてもおっくうになる。本来予定としては夏沢峠あたりでのビバークを想定していたので既にここまでで2日を消費しておりこの時点で蓼科山までの南北完全縦走は無理となった。さて、明日は硫黄山荘あたりまで行ければ最終日は中山峠から渋温泉に下るかなぁとこの頃はまだ甘く考えていた。
24日、快晴の朝を迎えた。7:20ハーネスを装着してスタート。長いハシゴを下る。ハシゴにはびっしりエビの尻尾が出来ている。3点確保を堅持しながら後続の為にエビの尻尾を払いながらゆっくりと下る。その後の稜線歩きは八ヶ岳ブルーを背景に赤岳・阿弥陀岳・奥には横岳や大同心などの眺望が峻厳な雪山の世界へようこそと迎えてくれる。旭岳通過前にアンザイレンする。途中、ノントレースの中に熊の足跡らしきものを発見。足跡は途中から登山道に入り暫くして登山道から離れ斜面をトラバースしていた。下りではテレインビレイをしながら相方を下ろすなど安全第一にゆっくりと進んだ。ツルネを越え暫くして樹林帯に入りキレット小屋に到着。ここでたっぷりとした太陽の光を浴びて日向ぼっこのように昼食としてくつろいだ。キレットの赤岳への登り返し。初めのうちは快調だったが相方がだんだん離れていく。長い岩稜ミックスの登攀に集中力が続かなくなったようだ。赤岳直下になるとハシゴが連続するので後ろに居なくなるとひょっとして落ちたか?風の音が凄くて落ちたことも判らないのではないか?とついつい不安になり後ろを振り返りながら待つこと数回。ロープでアンザイレするべきだったかと思うが日も傾き始めついつい焦りがでて結局ロープは出さなかった。
やっと赤岳山頂に15:30に到着。頂上小屋周辺はビバークする場所もないので展望荘まで下る。16:00頃展望荘に到着し裏に回ってビバーク箇所を物色してスコップでピットを作り始めると相方が展望荘の中に電気が点いているのを発見した。ん?やってないはずだよね?非常灯?と思ったが相方に見てきてもらうと「やってるそうだよ」と!ガガーン!「
こんなところでテント張ったら怒られる!今日は展望荘に泊まろう」となった。
なにやら22日から年末年始に向けて営業再開したとの事。
受付手続きをして食堂で無料のコーヒーを飲んでくつろいでいるともの凄い風が窓をたたく。この風であの場所ではテントも飛ばされるなと思いホントに小屋がやってて助かったと思った。自炊して明日の計画を練る。結局、この足取りでは蓼科山登山口に停めた車の所まで行くことを考えると余裕をもって行動する必要がある。従ってこの先の地蔵尾根を下ることにした。
25日、朝食をゆっくりと自炊し8:00頃小屋をスタートした。天気は良いが風が爆風だ。
地蔵尾根を慎重に下る。果たして下ったはいいが美濃戸口からどうやって車の置いてあるスズラン峠園地駐車場まで移動するか頭の中はその事ばかり考えていた。
行者小屋でゆっくり休憩し長い南沢を下り赤岳山荘の前まで来ると「豚汁500円」の張り紙が目についた。そしてその前にあるベンチに腰掛けていると赤岳山荘のオバちゃんが顔を出した。俺は「ここからの公共交通機関なんてないですよね?」と聞くと、「当たり前だ!この先は美濃戸口まで1時間歩いて行くだ!」と笑いながら答えてくれた。そこでオバちゃんに「豚汁二つできますか?」と聞いてみた。すると彼女は中に入って厨房の人に確認したようだ。暫くして出て来てオッケーとの事。「中に入ってゆっくりしてけ」と中に招き入れてくれた。実は今年の2月にもここに泊まった時、このオバちゃんにお世話になった。ちょっと会いたいなと思っていたのだ。四方山話をオバちゃんとしながら具沢山の美味しい豚汁を食べ終わった時、事件は起きた。ガラガラと入口の扉が開いたと思ったら一人の男性が「駐車料金を払いに来ました!」と。おっ!これはチャンス!料金の受け渡しが終わったのを見計らって「スミマセン、美濃戸口まで乗せてもらえませんか?」と聞いてみた。
すると男性は気前よく「ええいいですよ!」と。ヤッター!と二人で喜んだ。オバちゃんも嬉しかったみたいでいろいろアドバイスをしてくれた。車中聞いてみるとヤマップやってるとの事でフォロワーの関係にその場でなった。美濃戸口に到着するとここからどこまで行くんですか?と聞かれたので「茅野駅まで出てそこからバスで蓼科山の登山口まで行けないかなと思ってます。」と応えるとなんと!「じゃあそこまで送ってきますよ!」との事。ヤッホー!地獄に仏とはこのことだ(笑) 車中で色々会話も盛り上がってスズラン峠園地駐車場に到着。3人で記念写真を撮って解散となった。
この後、我々は登山口に置いてあるもう一台の車まで2人で移動した。途中夕食を済ませて空を見ると美しい満月の月が八ヶ岳の上空に浮かんでいた。
今回のクリスマス山行、目標の全山縦走は叶わなかったが、環境や人に守られ無事故で終えることができ本年最後に相応しい山行となった。
最後まで読んで下さった皆さん、明けましておめでとうございます。本年も素敵な年となりますように💛
※ログは操作ミスにより1日目と2日目が飛んでしまい3日目と4日目のみの記録となっています。
24日に権現岳に登りました。権現小屋付近に真新しいテントを張ったあとがあり、夕べ人がいたんだなぁと。
権現岳から下った踏みあとがなく赤岳方面に足跡がありましたので「この時期に縦走なんて格好良いー!」と叫んでみましたが(本当に)聞こえましたでしょうか?(笑)
先ほど偶然、山行記録を目にしました。まさひさん達だったのだなぁと、当日の山を振り返りました。
お疲れ様でした!
危ない所が多々ありましたがサイコーの思い出を無事に作ることができました。
有難うございますm(_ _)m
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