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Yamareco

記録ID: 64132
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
白馬・鹿島槍・五竜

高天原

2008年08月09日(土) 〜 2008年08月12日(火)
 - 拍手
GPS
77:00
距離
46.7km
登り
3,373m
下り
3,375m
天候 9日晴時々雷雨、10日晴、11日晴時々雷雨、12日晴
過去天気図(気象庁) 2008年08月の天気図
アクセス
撮影機器:

感想

9日早朝。
15キロの荷物と重い質問を背負いながらおでの挑戦が始まった。

今日は新穂高温泉の登山口から双六小屋のテント場まで約10時間の道のり。
つか、今書いてて思ったけど、そんなに時間かかったんか・・・。
写真の時間だと5時に出発して15時過ぎに着いてるし。

天気は快晴。妹は相変わらず露出の高い格好をしている。
途中休んでいたらおっさんに
「そんなかっこ山じゃだめだ」
と窘められる。

昼過ぎ、鏡平の山小屋に着く。
槍ヶ岳が見え始めた。
この時既に雲行きがあやしくなり、雨が降り始めてしまった。
雷も遠くから聞こえている。
『焼きチキン』を作って食べたけど、相変わらず雨はやみそうにない。
結局なんだかんだで1時間半近く足止めをくらってしまった。
この山小屋はテントを張る場所がないのでどうしても次の双六小屋までいかなければならない。
雨具を着込んで雷の鳴る中出発した。

出発してすぐ、休憩をしていたおっさん達に
「後ろに槍がきれいに見えてるぞ」
と後ろを振り向かされる。
確かに槍ヶ岳、でかい。
「大キレットも見えるなぁ」
とおっさん。
大キレットっつうのは、槍ヶ岳と北穂高岳の間にある、
切り込み具合がハンパないV字の岩稜地帯であり、
9月の連休はここをファイト一発ばりの気合いで登ろうと計画していたところだった。
「大キレットは一番に登らないと、次に続く人は落石で危ないんだよ」
とプチ情報。
って、先頭以外落石じゃん。
あぶねーじゃん。
登れないじゃん。

ちょっと大キレット、ヤだな・・・。

そんなおっさんの微妙な情報を聞き流し、気持ちを引き締めて双六小屋への道をひたすら登り始めた。

登りは心拍数が高くなる。
おしゃべりをする余裕がなくなってくる。
おでは質問について考え始めていた。

山に登るようになってから、まだ1年もたってないけれど
どうしても死というものを意識してしまうことがある。
自分では気を付けているつもりでも、たまたま起きた落石で頭を打って死ぬことだってある。
一応けじめとして山岳保険には加入した。
元ワンゲルの人が下で待ってる人のためにも入れと助言をくれた。

クライマーの山野井泰史は山で死ぬのはかまわないが、誰にも知られず一人で死ぬのだけは嫌だと言っていた。

おでも嫌だ。
一人で山に登ることはしないから、その可能性は低いし、
山野井泰史のようなクライミングはしないから危険性も低い。

せめて好きな人の傍で死にたいもんだ、
と思う。
そんなことをうだうだ考えていたら、
双六小屋に着いた。

おでは小屋に幕営料(一人500円)を支払い、
妹とテント設営した。

今日の夕飯はピラフとうどん。
乾燥ほうれんそうを入れて少しは野菜を取る。
下界で食べたらおそらくまずいのだろうけど、
山では何でも美味しく感じるから不思議。

夕飯を食べている時は、雨もあがって晴れていたのに
7時くらいにはまた落雷を伴ったにわか雨が降り始めた。

後で聞いたけど、この先にある三俣小屋では雹が降ったらしい。

雨があがったのを見計らって、歯磨きとトイレを済ませた後、
おでは耳栓をして就寝した。

下界では熱帯夜に苦しめられているので、涼しい山では爆睡。

明日は3時に起きて、目的地高天原へ出発です。

10日早朝。
山に入って2日目の朝。
今日も快晴で予定通り高天原につくことができそうだ。

今回はとにかく山頂には登らない。
巻き道を使って一番楽な方法で高天原を目指すのだ。

おでは目撃しなかったけど、前を歩いていた熟年夫婦が
今ちょっと前を熊が横切った!
と興奮していた。
あともう少し早く歩いていたら、遭遇するところだった。
くわばらくわばら・・・。

双六小屋のテント場を出発して約2時間後、
次の山小屋の三俣山荘に着く。

ここでは軽く行動食を食べて、すぐに出発。
これからは沢の脇を歩いて行く道になっていく。

黒部川の源流らしきところを通過。
でもこの石の近くにわき水らしき場所はなかった。
恐らく毎年変わるのかな?

つれー!
ずっと登ってる。
今回ここが一番つらい登りだった。
おでは30分くらいの急坂だったらどうとでもないけど、
これが1時間とかになるともう体力的にダメになるんだということが
よーくわかった。
とにかく辛い。
10分登って5分休憩。
休憩がてら植物も撮ってみる。

コースタイム的には1時間のところを結局2時間近くかかってしまった。
途中、休憩していた団体に
「山小屋の方ですか?」
と荷物のでかさにボッカと間違えられたり。
女子のボッカなんているのかな?

藪の中をかきわけ、虫がわんさかいる道をひたすら降りていき、
2時間後、水晶池の分岐に。
せっかくだから水晶池まで行ってみるかと。

水晶池、涸れてた。

あと50分で高天原につく!
とにかく頑張るぞ、と自分を励まし、藪も切れてきて、登山道も木道になりはじめた。
文明の跡がある!高天原は近い!
と、期待を胸に進んでいくと・・・

急に視界が開けた。
あの森の向こうに山小屋が見える!

こ、こ、が!
高天原!
原っぱだ!
だから高天原なんだ!

ここは幕営禁止なので、山小屋泊。
1泊2食付きで一人8400円を支払い、
2階の部屋へ。
部屋つーても、広いところにただただ布団をひいて寝るだけですが。
なかなか混んでいて2畳に3人(布団2つに3人)で寝てください、
との指示をいただく。
男女入り交じっての就寝。何も起こらないけど。

妹ちんが、じゃぁ昼ごはんを作ろうと提案。
おでがとにかく疲れたからごはん作るのはちょっと後にして、
冷えてて甘くてしゅわしゅわしたものが飲みたい。と提案。

このおでの提案が彼女の逆鱗に触れたのか、
とにかく真相は今になってもよくわからないのだけど、
妹はおでをほぼ完全に無視しはじめた。

でも温泉は二人で行った。

真っ白で硫黄のにおい満載の正に天然温泉掛け流しの
沢沿いにある温泉に入り、
まだ1時間以上はいるという妹を置いて、
おでは一人小屋に戻り、モルツのロング缶を一本購入(800円!)
して高天原を一望できるところでお一人様会を開いた。

いい天気だ。
鳥の鳴き声もあほみたいにきれいに聞こえる。
高天原にはなにもない。
静寂以外にはなにもない。

デジカメで写真をとりまくり、いい気持ちになったところで、
小屋に戻って梅酒を飲んでたら、妹が戻ってきた。
微妙に明日のコースについて話し、夕ご飯。

この山小屋には電気が通っていない。
発電機もない。
照明はランプ。

だから日持ちするようなものを使ったおかずにごはん。
でも美味しかった。

夕食後おでは眠ることに。
妹はまたお風呂に入りに行った。

明日は雲の平というまたすげーところに行きます。
仲直りできるだろうか。


11日月曜日
朝3時半起床。
山小屋の朝ご飯は4時半からなので準備をして食堂が開くのを並んで待つ。
最初妹ちんが並んでいたので、そこに入れてもらったら、
前後にいたおじさんおばさんに
「あぁ、姉妹かぁ、顔が似てるもんな〜」
と早速姉妹ということがバレた。
おでは前に並んでいるおじさんたちと話していたが、
このおっさん達はこれから水晶岳という山に登ってから双六小屋に戻るらしい。

おでたちは雲の平から双六小屋に行きます、という旨を伝えると、
「目的地が一緒なんだから一緒に水晶岳登ろうよう」
とお誘いをうける。

しかし、今回の山行はno flower no peakである。
頂上には行かないのだ。
つかそんな体力使いたくない。
大自然の中を歩けるだけでいいんだ。

朝ご飯を終え、ザックを玄関まで移動して出発。
妹ちんは相変わらずゴキゲン斜めだ。

ほぼ平坦な木道を歩いている時、おでがもう我慢できなくて
妹ちんに何でだんまりなのか問うてみる。

「え、だって、山小屋でおしゃべりしてる人怒られてたよ」

って、またわけわからん理由でかわされた。
それは寝るときにうるさかったから怒られたんだろうが・・・。

もういいや、なんかめんどくせーからおでも黙って雲の平まで行こう・・・。

高天原から雲の平までは約2時間弱。
短いコースだけど、かなりの高度まで登る。
ということは傾斜がキツい。
途中鉄はしごを5個くらい登った気がする。

そしてまたおでは考えていた。

何年か前、3年近くステディがいなかった時、
3回もの冬越えを果たしたおでは悟ったかのように、
これからは一人で生きていこう。
と思った。
そう思ったらいろんなわだかまりが消えてものすごく気持ちが軽くなった。

その前は田舎に帰って適当に過ごして行こうとも思った。
でも両親に猛反発を食らい、その時働いていたのが東洋医学系の整形外科だったせいか、
鍼灸師の資格を取って鍼灸院を開くのなら戻ってもいい。
とおではそんなことしたいと一言も言ったことがないのに、
わけのわからない提案を出され、めんどくさくなってやめた。

その時、連れて行かれたハンバーグ屋のハンバーグの味はあんまり覚えていない。


はて、おではどうしようか。
田舎には帰れないし、やっぱり一人で生きていくか。
うーん、でもいいのかなぁ、それで・・・。

とかなんとか考えていたら、雲の平に着いた。

ほんと急に平らなところになった。
湿地帯のせいか蚊の量がハンパない。
妹ちんがすかさず、おでが持っている虫除けと虫除けパッチをよこせと言ってきた。
虫除け対策を万全にした後、まだまだ広い雲の平を歩いていく。

このころからだったか、妹ちんが元にもどった。
虫除けパッチの効力か?
よくわからないけど、元に戻った。

ちょっとした岩を越えると雲の平山荘が!

かわいく見えるけど、水場がないのであまりいい感じじゃない。

山荘で休憩をして雲の平を満喫できる木道を行く。

途中スイス庭園に行ってみると、
昨日いた高天原が下の方はるかかなたに見える!

この来た道を振り返るっつうのも山行の楽しみの一つである。

平坦だった雲の平に別れを告げ、2日目に行った黒部川源流の分岐まで戻る。

そこまでくればもう来た道なので、双六小屋まで戻って着いたのが15時半。

結構時間かかった。

双六小屋にまた幕営の申し込みをした、受付のオネエちゃんに
「貝塚さんて最近来てませんでした?」
と聞かれる。
「おととい来てました。」
と愛想よく返事した。

テントを設営して、隣のテントの夫婦とちょっと話をする。
10歳の子供と穂高岳(なに穂かは忘れた)から縦走してきたらしい。
子供の荷物は5キロくらいだそうだ。

夕食の準備をしているころにまた雨に降られた。
双六小屋は雨が降りやすいのだろうか。

雨が止むのを待っている間、次に目指す山の話を地図を見ながら話していると、
親子の奥にいるテントからにぎやかな声が聞こえてきた。

よーく聞いてみると、どうもスナック(とかクラブ)のママとその常連客のパーティーっぽい。
「奥さんに送っちゃうわよ〜」
とか、「もう全然眠くないから私寝たくな〜い」
とか、なんだか教育によくないような会話がバシバシ聞こえてくる。
笑い声もハンパなく響く。

これ、いつまで続けるんだろう。。。
と思っていたら、近くの人が
「いい加減に寝てください!」
と怒っていた。
ママは
「は〜い、寝ま〜す。」
と見ず知らずの人に返事していた。
さすが上手だ。

そんな会話を聞きながら就寝した。
この日の星空は10月の涸沢の次くらいにキレイだった。


4日目、12日。
今日は双六小屋からひたすら下り、新穂高に駐めてある車で栃木まで帰るというなんとも無謀な計画。

3時起床。
4時出発。
外はまだ暗い。

ヘッドランプを付けて登山道を下る。

4時半くらいになると周りが明るくなってきて、
日の出が拝めたりする。

あとはもう下るだけ。
岩だらけだけど整備されているので歩きやすい登山道を下って行って、
新穂高温泉口についたのは10時半だった。

新穂高温泉には登山者用の無料お風呂がある。
臭いがキツい登山者に、その臭いを消してからバスに乗ってくれという配慮らしい。

しかし脱衣所がバスの中から丸見えだぜ。
ま、そんなもんだ。アルペン浴場。

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