今年に入って恩田陸さんの本を何冊か読んでいますが、「常野物語シリーズ」の第一巻、「光の帝国」がとっても面白かったです。10の短編が入っており、ほぼ主人公は違うのですが、読み進めると繋がりが少しずつ見えてきます。ネタバレになってしまうのであまり内容は書けませんが、不思議な力を持つ常野一族の物語です。長く続いている一族で、幾つかの家系が有り、それぞれの家系により異なった力を持っています。こういうとファンタジー系ではわりと見かける設定に思えますが、それぞれの短編が淡々としていて、懐かしかったり、切なかったり、小さな驚きが有ったりして心に残るのです。萩尾望都さんの「ポーの一族」と似た感じでしょうか。
こういうスタイルでは、ダン・シモンズの「ハイペリオン」がとっても面白かったのですが、こちらはそれぞれの短編のテイストがかなり違っていて、全体はSFのカテゴリーだけど、ファンタジーあり、推理小説あり、ミステリーや切ない愛情の話などと異なります。こちらもとってもお勧めの本ですが、残念な事にこのシリーズは巻が進むにつれ、段々と普通に変わりました。でも「ハイペリオン」を読んだら続きはどうしても読みたくなりますが。。。
話は「常野物語シリーズ」に戻って、第ニ巻「蒲公英草紙」ですが、これがまたとっても面白かったです。これは第一巻と異なり、主人公は一人の長編で、その人が若いころから書き綴った日記が「蒲公英草紙」です。第二次世界大戦の前が主な時間で、読み返して平和で若かった頃に思いをはせている今は、終戦直後です。日本の原風景の中で、淡々と過ぎていく物語が懐かしくも切なく綴られています。これもとっても面白かったので、是非読んでみて下さい。
この2巻に比べ、「常野物語シリーズ」の第三巻「エンド・ゲーム」は普通でした。。。「光の帝国」の中の1つの短編のその後だけを扱った長編ですが、「常野物語シリーズ」の良さの、淡々とした味わいが無く、常野一族らしさが無い気がしました。ただ「光の帝国」の中の各短編の主人公を基にして、今後も「常野物語シリーズ」が続けば良いな〜と思います。
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