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1953年にエヴェレストが初登頂されたときのメンバーの一人であるノイス(1917-1962)が個人的な視点で当時の様子を正直に記載したもので、ノイス自身は、サウス・コルまでしか登っていません。しかし、解説(解題)にもそのように記載されているように、登頂に成功したヒラリーやテンジンとは違った視点で困難な状況でどう感じたかを一人の人間として述べられているところに面白さがあります。具体的には、高山病の症状で疲れもあり、何もかもが面倒くさくなっている状況で、他のメンバーがやってくれれば良いなぁと思って自らはサボるような場面がたくさん出てくるなどです。一方で、ちょっとした貢献(ノイスがこの隊としては最初にサウス・コルに到達しました)があると、とてもハイになって、他のメンバーに熱くおしゃべりをしてしまう(聴く方はやや迷惑?)なんて人間味が詰まっているのです。
ところで、1953年5月29日に初登頂に成功したヒラリーとテンジンは第2アタック隊であって、第1アタック隊のトム・ボーディロンとチャールズ・エバンスは、5月26日に南峰(8650m)まで達したところで引き返したのですが、もし第2アタック隊も山頂に到達できなかった場合には、ノイスとジョン・ハント(=隊長)を第3アタック隊とするハントの考えだったことも明かされています。
全編を通じて、酸素吸入装置(開放型か閉鎖型かで議論が現地でも最後まで続いていた)の話題が多いのも、当時は無酸素ではエヴェレストは登れないという理解だったことから、装置の故障が最大の恐怖ネタだったことが分かります。また、高所では精神分裂症になって、怠け心の自分と客観的な自分と二人の人間が会話しながら行動を共にすることも多数の人が経験しているとのことです(メスナーほかもそうでした)。さらに、シェルパのテンジンも登頂できたことが、どんなに良いことで重要な意味をもっていたかにも触れられています。
なお、この本には、他に「アイガー北壁の初登攀(ハインリッヒ・ハラー著、横川文雄訳)」「ジャヌーへのたたかい(ジャン・フランコおよびリオネル・テレイ著、近藤等訳)」が収録されています。そして、最後の付録的な小文「登山家の死」(深田久弥著)を読むと、これら3編の時代背景やそれらに登頂する登山家たちの相関、さらには、お国による気質の違い、そして、高名な登山家たちの山での死についての情報がまとまっていて、大変参考になりました。
【読了日:2014年11月15日】
のもしんさん
ちくま書房の現代世界ノンフィクション全集て、すごく面白いラインナップですよね。よく古本屋で一冊300円以下でバラで売られているのですが、今は出ていない面白いノンフィクションが山盛りです。目録がネットにあるとおもいますけど、タイトル見ているだけで面白いですよ。
1953年イギリス隊では、隊長のハント、登頂者ヒラリ、とノイスの記録を読みましたがノイスが一番おもしろかったです。
前にこんなの書いてました。
http://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-17534
コメントとご紹介ありがとうございました。
・フリッチョフ・ナンセン「フラム号漂流記」
・福島安正中佐の「単騎遠征」
は是非読んでみます!
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