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映画史上には、脱獄・脱走映画というジャンルの傑作が数多くあるのだが、それは、「自由の希求」といった大上段のテーマを越えて、「脱獄・脱走」という行為自体が人々を惹きつけるからではないか(例えば『穴』の主人公たちなど、捕虜でも政治思想犯でも冤罪被害者でもなく、感情移入などできそうにないただの犯罪者なのだが、この映画を観る者は、彼らの脱獄の成功を願わずにはいられなくなる)?
この「脱獄・脱走」という社会的?な行為と微妙に重なる「地下に潜る」という純粋に肉体的?な行為(非合法組織の地下潜行といった意味合いではない)にもまた、人を本能的に惹きつけずにはおかない力があるに違いない(そのものズバリのタイトルのアンジェイ・ワイダの『地下水道』はもちろん、名作『第三の男』もクライマックスの舞台はウィーンの地下水道だった)。
人を惹きつけるのは、地下世界の魅力というよりも、「地下に潜る」という行為そのものだろう。「山に登る」という行為が、山の魅力以上に人を惹きつけるのと同じように。ある種の人間には生まれつき、高いところに登りたい「登高欲」とともに、地下に潜りたい「潜行欲」といったものがあるのかもしれない(「登高欲」が高所恐怖症とは逆の「高所嗜好」に、「潜行欲」が閉所恐怖症と逆の「閉所嗜好」に結びついていることは想像に難くない)。
子供の頃、木登りの次に好きだったのが、家の床下を探検することだった(厳密に言えば地下ではないが)。高校の時には、山岳部の部室から学校の地下に潜り込むことができたので、時々そこから“地下通路”?を這って廊下に出たり、他の教室や進路指導室の下まで行ったりしては無邪気に楽しんでいた。
しかし、大人になって久しい今、「登高欲」は登山で満たすことができているが、「潜行欲」は長らく満たされたことがない。合法的に満たす機会もそれほど多くないように思われる。ケイビングが数少ない方法の一つなのだろうが…。そういえば、ケイビングを題材にしたホラー映画があったけど何てタイトルだったかな?
そういえば、私も小学校の頃は学校の床下探検、高校生の頃は防空壕潜入して、かまどうまの大群に驚いて逃げて来たことがありました。テレビの探検シリーズもついつい見てしまいました。最近はやってないけど
ブームになった(のかな?)廃墟探検とか、軍艦島に行ってみたいとか、さらには墓場の肝試しも、似たような衝動、欲求なんでしょうかね?じゃあ、これは地下とか高所とか、そういう重力と関係した話ではなく、探検願望でもなく、単なる知りたがり屋というか野次馬というか怖いもの見たさ?
探検シリーズって、川口浩隊長がカメラさんと照明さんの後に洞窟に入るやつですか?川口浩没後、藤岡弘、が二代目隊長?になったのを一度だけ見たことがあります。
防空壕といえば、北海道は艦載機によるもののみでほとんど空襲を受けなかったので、防空壕もあまり残っていないのですが、我が家の近くの神社山(237m)には、旧日本軍が大戦末期に地下壕を掘ろうとした痕跡の掘りかけの洞窟が幾つも残っているようです。今度、踏査してみようかな? 我が家の裏の奥三角山(354m)の裏側には、昭和30年代末まで操業していた鉱山の跡(といってもごくごく小規模のもの)がありますが、坑道は既に埋まっていて入れません。
はじめまして。
ケイビングの映画、ニール・マーシャルの『ディセント』でしょうか?後味の悪さが残る、優れたホラー映画でした。。調子の良くないときに見るとトラウマができそうでした。いろいろな意味で。
廃墟探検の魅力の一つは、郷愁というような要素もありそうな気がします。サウダージといいますか。
廃線跡を歩く、とかになると郷愁要素が強く、廃坑跡や廃村探検は怖いもの体験願望が強く出るのかもしれませんね。
冒険心の奥にある欲求の形、なかなか奥深いテーマですね。熟慮してみたいです。
totoruruさん
『ディセント』そうそう、そんなタイトルでした。女性たちが主人公の映画ですよね。しかし、まさに今回のテーマにピッタリのタイトルですね。Disire for ascentとDesire for descentでしょうか(この英語、間違ってないですか?自信ありません)?
そうか『ドッグ・ソルジャー』の監督でしたね、そういえば。
永遠に失われてしまったものへの郷愁ですかね。
廃墟は、その建造物が“現役”だった過去の姿を否応なく想起させるタイムマシンみたいなもので、その過去と現在との落差に、時の流れの無常さとか、万物流転とか、形あるものはいつかは壊れるとか、そういったことを考えさせる力を持っていますね。
山でも、その山に登るのが何十年ぶりかだったりすると、いろんなことを思い出し、様々な感情が交錯します。その山の“姿”が昔と変わっていたりすると、なおさらのこと。
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