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私は卒論のテーマが日活アクション(と宍戸錠)だったくらいで2本とも学生の時に見ているのだが、かなり憶えていないシーンも多く、面白かった。
舛田利雄監督と裕次郎の名コンビによる前者は完成度が高く、『第三の男』をかなり意識して下敷きにしていることが改めてわかったし、渡り鳥シリーズの第1作である後者は、荒唐無稽化、紋切型化したシリーズ後半の作品とはちょっと異なるものが感じられた。
それはさておき、今回気になったのは2本の映画のロケ地である。というのも、今回の上映は、「北の映像ミュージアム」推進協議会主催による「シネマの風景フェスティバル」という、北海道でロケされた映画のイベントだからである。この2作品はいずれも函館で撮影された映画だというのだ。
しかし『赤いハンカチ』の方は、ニューグランドホテルが出てくることでもわかるようにメインの舞台は横浜で、北海道がロケ地と考えられるのは、失意の裕次郎が北へ流れて肉体労働に従事するダムの建設工事現場と漁港のシーンしかない。飯場はロケではなくセットだろう。
漁港の方はともかく、ダムの方は、実際に建設中のかなり大きなダムで撮影されていることに、今回初めて気がついた。「北の映像ミュージアム」推進協議会編の「北海道 シネマの風景」(北海道新聞社刊)には、工事の年代が合うので横津岳麓の新中野ダムではないか、と書かれているが、調べてみると、中野ダムのかさ上げ工事が始まったのは1975年で、新中野ダムの完成が1984年。「赤いハンカチ」は1964年公開だから、全く年代が合わない。古い中野ダムは1955年着工で1960年完成。こちらはちょっと早すぎる(当時のプログラムピクチャーが制作に何年もかけたはずがない)。
それに、映画に出てくるダムはアーチダムに見え、重力ダムの新中野ダムとは型式が異なる。また、映画では両岸が急峻な岩壁になっており(アーチダムは両岸に固い岩盤がないと建設できないらしい)、かなり深い渓谷に見えるが、これも新旧中野ダムの地形にはまったく合致しない。
では、いったいこのダムはどこなのか?
北海道にはアーチダムは2つしかない。日高の奥新冠ダムと札幌の豊平峡ダムである。しかし、豊平峡ダムは1965年着工、1972年竣工なので除外。奥新冠ダムは1958年着工、1963年竣工なので年代的には合う。映画のダムが北海道なら、奥新冠ダムしかないということになるが、映画のダムよりは小さいように思えるし、ここはかなりの奥地で、わずか1シーンの撮影のために、しかも冬が迫る季節に、裕次郎も連れて撮影隊一行がここまで入ったとは考えにくい気もする。北海道という設定だとしても北海道で撮影する必要はない。
では、いったいどこなのか?と、ここでまたふりだしに戻る。
北海道という設定のところを1シーン撮影するのに、東京から九州や四国までロケに行ったとは考えにくいので、場所は関東周辺ないし甲信越あたりに限定されるだろう。それでも、続々ダムが造られていた時期なので、当時建設中だったダムもたくさんあり、これという決め手がない。その一つとして考えられるのが、1956年着工、1963年竣工の黒部ダム。後に裕次郎は、このダム建設のドラマを描いた『黒部の太陽』に主演することになるが、それは4年後の68年のこと。この段階ではまだ企画前だったはずだが、何か関わりがあるのか? 『黒部の太陽』と関わりはないとしても、世紀の大工事と言われて注目を浴びてたこの工事、関西電力が?PRのために『赤いハンカチ』ロケに便宜を図ったとは考えられないか?でも、そうだとすると、裕次郎主演のヒット作のロケが黒部ダムで行われたと何らかの宣伝をするはずで、どこかにその話が出てきてもよさそうなものだが、今のところ私はそういう話はネット上では見つけられていない。
というわけで、この『赤いハンカチ』のダムがどこかは謎のまま。これはDVDを買って改めてよくよく観てみなければならないか。
最近いるらしいダムマニアに訊けばわかるかな?
『ギターを持った渡り鳥』のロケ地については改めて。
※1枚目の写真は『赤いハンカチ』のダムのシーン。
2,3枚目は30年ほど前の奥只見ダムで、文章とは何の関係もありません
kennさん、こんにちは。
私もダムマニアですが、仰るとおりに映画のダムはアーチ式ですね。
画像のみでは確かなことは言えませんが、天竜川水系の小渋ダムの様な気がします。
間違ったごめんなさい
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