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写真��蕃上山古墳出土埴輪と奥に百舌鳥古墳群（仁徳陵など）の宮内庁所蔵品など
写真⓷青山古墳群出土埴輪
古市百舌鳥古墳群は5年前に世界遺産に指定されたものの、宮内庁所管の陵墓が多く、その内容は発掘調査が限られているためによくわかっていないのが現状だ。その中で、仁徳陵をはじめ、天皇陵やその周辺の陪塚あるいは周辺遺跡の調査で分かってきたこともある。そうした最新発掘調査からわかることを集めた今回の企画展と講演は注目されてよい。
百舌鳥古墳群の調査の歴史も長い歴史があるものの、主要な天皇陵そのものの発掘調査はできないので、様々な周辺の調査で外堀を埋めつつ探るよりない。堺市がこれまで行った調査に関しては、「百舌鳥古墳群の調査シリーズ」として公開されている。
（参考）堺市の文化財課HPにおける百舌鳥古墳群調査報告書＝
https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/rekishi/bunkazai/bunkazai/kankobutsu/mozu_houkokusyo.html
今回の講演は堺市文化財課の相馬勇介氏が、平成30年以降、仁徳陵の墳丘の崩落個所に対して、護岸整備工事が必要となり、宮内庁と堺市が協力して工事計画を立てるのに先立ち、基礎的情報を得るための調査を行ったことの報告だ。
工事に際しては仁徳陵の第一堤に重機を走らせる必要から、関連個所の基礎情報を獲得して連続しない数か年をかけて工事を実施することにしたという。
平成30年、まず仁徳陵の中に入り、第一堤を観察、斜面崩落個所とその周辺を観察し、表土掘削（現代遺物含む遺物観察）→流土・浚渫土掘削（中近世遺物観察）→遺構検出（石敷き・埴輪列など）→検出状況の図面作成→土層断面観察用のトレンチ掘削→土層断面図作成→埴輪列の断ち割り掘削→埴輪の取り上げ→埴輪列を土嚢いより養生し、埋め戻す
このような調査を平成30年10月〜12月にかけて、第１〜第3トレンチ調査
令和3年10月〜12月に第4トレンチ〜第6トレンチ調査
今後、これらの調査に基づいて、工事計画を立て、順次護岸工事に入るようだ。
当日の講演のスライドで示した写真は残念ながらまだ非公開で撮影禁止だったが、近い将来、報告書としては公開されるかもしれない。資料には白黒写真は載っていた。ただし報告でもあるように埴輪を復元するような作業はなく、埋め戻しているので詳しくは調査していない。しかしながら円筒埴輪であり、その設置状況は今回の調査から判明している。
このような調査で分かったことは、
1）仁徳陵第一堤の同窓断面、堆積層の確認
2）盛土中の埴輪片の確認→盛土施工の際に付近に埴輪片が散乱していた風景が想定された
石敷き：石の配置に規則性はなく、こぶし大の石を中心に土と混ぜてばら撒いたようだ。
今回の調査から、第一堤の築造過程の推測を行った。
1）草木を刈り取り、土地を水平に造成
2）堀を掘削し、盛土に用いる土と石敷きに用いる礫を選別
3）盛土と埴輪の設置を同時並行で進める＝埴輪は掘って埋めるのではなく置いてその上に盛土をかけて固定
また検出した円筒埴輪列の設置方法について、以下のように推定
1）出土品はほとんどが円筒埴輪、わずかに朝顔形、ついで蓋（きぬがさ）形埴輪のような形象埴輪で円筒埴輪は７条８段が基本
２）堤の内側と外側で円筒埴輪列を検出
これらの結果から第一堤の外側の埴輪列設置位置推定ライン＝約2187ⅿ
内側の埴輪列の設置位置推定ライン＝1913 ⅿ、単純計算では外側に5322本
、内側には3,892本、合計9104本と推定
3）埴輪間の距離は「ほぼ接する」「拳程度」と様々で、決まった傾向は認められない。
4）埴輪の土層断面の観察から、埴輪の基部には「掘方」はなく、つまり盛土の過程で埴輪を設置し。。
5）底部打ち欠き：第二トレンチ＝底部片が盛土中から出土、現場で設置する際に打ち欠いたと推定
第6トレンチ：底部打ち欠き、小石を絡ませた
埴輪内部にも様々な造作を確認
第3トレンチ＝玉砂利95個出土
第4、第5トレンチ：拳大の礫数個出土
第6トレンチ：異なる3個分の埴輪片出土＝他の場所で欠損した埴輪を入れたか？
これまでの百舌鳥古墳群の調査から各古墳の埴輪の設置方法には差異があることが分かった。
１）堀方なし＝A3類＝履中陵、仁徳陵、ニサンザイ陵古墳など
２）壺掘り＝B1類＝かぶと塚古墳、寺山南山古墳、善右衛門山古墳
3）布堀＝B２類＝大塚山、陵南赤山、収塚古墳
A３類は２００�屬鯆兇┐覽霏膰妬�で採用
B1類は埴輪の個体間隔が近づくために採用された
B一類の連続が結果的にＢ三類に変化した（加藤一郎氏の見解）
このような結果から、相馬氏は巨大古墳造営という巨大プロジェクトの実施において、現場作業の省力化が必要とされ、その結果「堀方を掘らない」工法を採用したのではないかと推定した。
