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朝の体調がいまひとつだった。予定より早く目覚めてしまったので朝の食事をビスケット2枚で済ませのが悪かったらしい。電車の中でどうも胸の気分悪い。心臓でなければいいが、単に胃が調子を狂わせただけかもしれない、自分でも心配だった。
飯能駅の乗り換えで電車待ちの間に朝食用に持参したサンドイッチを食べてみた。気分悪さは大分収まった。やはり食事のせいだったかとひとまず安心した。スタート地点の芦ヶ久保駅に着いてから食べ残したサンドイッチを食べたが、気分悪さは少しぶり返しているようだった。
とにかく用心しながら普段にも増してゆっくりと歩き出した。山道へ入ってからは足を止めては様子を見ながら歩いたのでだいぶ遅れて丸山・大野峠の分岐に到着した。ここでバナナを1本食べて10分間休憩、それからは身体が山に慣れたのだろうか少し力が戻った感じになった。休み休み11時過ぎ無事大野峠に到着、すぐに赤線確保のため丸山・白石分岐点まで足を伸ばし、再び大野峠に引き返し、東屋のベンチに座って昼食とした。
大野峠はいろんな人達が往来して賑やか、登山者、トレラン、自転車、オートバイ、ドライバーみんな連休の好天を楽しんでいる。こうゆう雰囲気はいいなあ、と思いながらのんびりおにぎりをパクついた
12時丁度大野峠を出発し、牛立久保までの尾根道に入る。この区間は舗装林道の横を付かず離れず続くのでなんとなく安心感があり、むしろ詰まらないかなという気持ちだった。途中カバ岳へちょろっと上り返しがあるだけであとは楽勝だろうと予想していた。だけどやはりアップダウンはそれなりにあった、それは構わない、ただ急に恐ろしい岩場に出会って仰天した。このコースに岩場があるなんて全く予想していなかった。カバ岳を過ぎたのであとはラクチンとぼんやりしていたら出会ってしまった(写真1)。
正面の岩を右から回り込むようにしてルートはあるのだが、その際に岩場をちょっとだけ降りなければならない、ただ降ろした足の置き場が狭くて先が絶壁、そして段差があって降りにくい、バランスを崩したら真っ逆さまだ、老人は足の支えが弱っている、踏ん張れない、最近とみに自覚している、どうしよう、右から回り込んで正面の岩のあちら側に出ればいいのだから、岩場を上がってその先へ直進してみてはどうだろう、それが可能ならこの恐ろしい脇道を回避できるのだが、そう考えて実際岩の上に上がってみた、この岩の上り下りは容易だ、観察するとその先へ進むことはなんとかできそうだが果たしてルートへ無事下れるかどうかは怪しい、先がわからない、もうちょっと先へ進んで様子を探ってみたいがやはり危なっかしい、ウームと唸っていたら後続者が現れた。若い女性で、「こっちに道がありますよ」と声をかけて脇道をスイスイ通過して行った。老人がなにをうろうろしているのかと思ったことだろう。仕方ない、大持・子持ルートでもこんなことがあったなと決心し、目をつぶって(という覚悟で)1センチづつ移動するようにして何とか危機を脱出することができた。いや実際のところ真面目に怖いです。いま思い出しても背中が寒くなってきます。北アルプスの岩場より怖い。それからは岩場がありませんようにと祈りながら無事牛立久保に到着できた。
ここから旧正丸峠までの区間を歩けば、以前歩いたその先のルートと合わせて吾野駅まで赤線が繋がる。ただこの区間の尾根の様子はわからない。ちょっと調べてみたがはっきりしない。地図を眺めているとなんとなく展望の良い尾根歩きで、アップダウンはあるだろうが大持・子持ほどではないし、まあ、自分でも苦労しないだろうと予想を立てた。わからないほうが楽しみが増えるというもの
最初の下りは広い林の中で踏み後は鮮明でないが、ピンクリボンがしっかり枝に目立って迷うことがない。途中から舗装林道に合流し楽々虚空蔵峠に到着した。ここにも東屋があったが、大野峠と違ってバイクも自転車もなく、人影がなかった。寂しい雰囲気だった。
ここから登山道に入り、アップダウンが多いだけで展望のないところをやれやれと思いながらもたんたんと進んで行くとサッキョ峠の看板に出会った。峠でも何でもないただの登山道の横に道標が立っていた。立ち止まって小休止し眺めているうちなんとなくサッキョといえば岬の方が似合うな、サッキョ岬か、北海道にもありそうないい名前だな、など関係ないことを連想し、ああ、これはいかん、ちょっと気が緩んできた、放心状態の始まりかもしれん、気を引き締めねば、と思い直し、地図をひらいた。
親不知・・・目の焦点が合った。北陸にある難所で有名なところと同じ名前だ、そうそう、地図を調べているとき見たのだがすっかり忘れていた、さっきのような岩場だろうか、嫌だな、そうでなければいいが、いろいろ心配したが、その前にとんでもなく長い激しい急坂を登ることになってしまった。壊れて役に立たない階段の横に長い長いロープが3本も地面に横たわっている、掴まらないと到底上がれない、上を見てあそこまでかと思って上ると、そこでは終わらずまた先のほうに続く、あれと思って頑張ると、さらに同じくはるか上のほうに続き、本当にうんざりした。登り切ったときは本当にほっとした。これが親不知というわけでもないだろう。
前方にきれいな花が咲いていた。自分は花の名前が全くわからない、山レコではたくさん花を目にしているがわからない。ただきれいな花だということがわかる程度だ。あれは山つつじというものだろうか(写真2)。
近づいたら岩場が始まるようなそんなムードになってきた。地獄への入り口を花で飾ったか、敵もさるもの、用心しなければいけない。なんかこれって女性が男性を誘い込むのと似てるんでないか、美しいのに惹かれて迷い込むと怖い思いをする、今の自分か、などなるべく余裕をもって入って行ったら果たしてそうだった、両側が切り立ったやせ尾根だが大きな岩が行く手を阻むわけでないし、両側に樹があるので絶壁が目に入らない、足元が切り立っているわけでもない、岩岩した道を用心しながら足を進めたが、恐怖感はあまり湧かなかった。この程度なら自分も大丈夫と思い込むようにして無事通過できた。これで一件落着、旧正丸峠に降り立って尾根歩き終了となった(写真3)。
旧正丸峠から正丸駅までは、ずっと以前の歩き始めの頃に通っている筈だが全く記憶にない。渓流沿いの谷底のさみしいルートだった。朝の胸の不調とは反対に昼食後は歩くほどに元気が出て、旧正丸峠からの下りでは足がどんどん速くなってCTを短縮して正丸駅に着いてしまった。不思議なことだ、我ながら身体のことはわからない。
さあ、次回の尾根は、牛立久保から関八州見晴台まで、今度こそ楽勝だろう。
写真1 ここが怖かった岩場(だったと記憶するが違うかも)
写真2 親不知の入口(きれいな花に誘われて)
写真3 寂しい旧正丸峠(右から降り立った)
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