初めて登山をしたのは2010年の3月頃だったと記憶しています。当時まだ学生でした。
関ヶ原の手前にある垂水にある神社の裏山です。ふらふらと迷い込み、山頂に着いた時には背後に夕陽が沈んだ後で、開けた場所から見下ろす紫色に染まった平地と街並みが印象的でした。
しかし、その景色の美しさが私を山に誘ったわけではありません。
察しの良い人はわかっていると思いますが、山頂にいて日が暮れているのです。
下山する時にはあたりは真っ暗です。
当時はまだスマホを持っておらずガラケーの画面の灯りは道を照らすには頼りなく、一眼レフのAF補助ライトの光を頼りに手探りで下山する事になりました。
その後、小一時間ほど歩いた先に見つけた一本の街灯の光が、今振り返るとその後の私の人生を大きく変えるきっかけとなりました。
その後すぐに社会人になり、仕事の合間の時間を全て山に費やすようになりました。
山は想像以上に楽しいものでした。
山道具屋通い、山行計画、パッキング、
山への道中、山を登る、山を撮る、
山で寝る、山を降りる、山から帰る。
全て楽しかった。
失敗も沢山しました。
グランドフォールして折れた手足を庇いつつロープワークをしながら半日かけて下山。
季節外れに吹雪いた北アルプスでたまたま居合わせた初対面の男と雪洞を掘ってビバーク。
雪面を滑落し、制御不能に陥ったがたまたま木に引っ掛って助かる。
冷蔵庫大の岩がアンカーごと崩れて足元から無くなり宙ぶらりん。
ユマール中に途中のハーケンが折れてフリーフォールを味わう。
フリーソロ中にルートを間違え脆い岩場に迷い込み身動き不能。
視界のない中、適当に歩いて同じ場所をぐるぐる回っていることもありました。
などなど、、
出会いもありました。
山で出会い、アドレスを交換までしたが、結局連絡を取り続ける人は稀でしたが、それでも何人かの友人が出来ました。
ヤマレコを通じて誘ってもらったこともありました。
そして、山を通じた出会いが巡りゞ、偶然と偶然が混じり合い、今の妻と穂高の稜線で出会うことになりました。
数年単位でどれか一つの選択が変わっていたら
今の私はないでしょう。
最近は、もっぱら時間があれば写真を撮っています。山の絶景ではなく、日常風景がメインです。
著名な写真家であるハービー山口氏がインタビューで仰っていました。
人生とは『ネガをポジに変える』ことだと。
ネガとは写真的に言うとネガフィルムの色が逆転している状態のことを言いますが、別の写真家が言った言葉らしいですが、非常に洒落のきいた良い言葉です。
山での失敗は文字通り致命的ではありますが、こうして振り返ると具体的な記憶というのは、ネガティブなものばかりです。
山での行いは大抵ネガティブなものです。
重たい荷物、急な登り坂、寒くて長い夜。
重たい荷物は山行を助け、潤いを与え、
登り坂の向こうには山頂からの絶景があり、
長い夜はやがて明け、1日で最も美しく、暖かい光を与えてくれます。
一本の街灯に感動したのは、暗い山道というネガティブな場面があったからこそでした。
昨年息子が生まれたことがあり、ハードな山行用の道具は手放すことにしました。
かつての相棒ソロイストもフリマアプリに掲載中です。お得なチェストハーネスとのセットです。
山を深く感じ、人生に彩りを与えたいのであれば、ソロクライミングがオススメです。強烈なネガティブな体験を約束します。
以上、長い宣伝でした。
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