本日、剱岳アタックに成功し無事本峰に登頂できました。
思い起こせば五年前、大腸にがんが発病して大腸半分とリンパ節三個を摘出されました。そして昨年夏、肝臓に転移が見つかり部分切除手術を受けました。
もちろん、心折れそうになりました。術後の五年生存率15%と聞かされて、死刑宣告を受けた気分でした。
しかし、私には山という生きがいがありました。
かつて若く元気な頃、年に百日は入っていた北アルプス。
そこに登るのは、もう無理なのだろうか。
このまま病に倒れ、二度とあの素晴らしき景観をこの目で見ることは叶わぬ夢なのか。
私は、可能性にかけました。不可能を可能にするべく、退院後すぐに歩き始めました。
辛かったです。一月も経たずに、抗がん剤治療が始まったからです。でも、副作用が軽い日は歩きました。
年が変わると、里山から登り始めました。吐き気を催しながら登った日もあります。
しかし、挫けませんでした。副作用ごときで山を諦めたら、がんに屈する事になる気がしたからです。
そして、梅雨頃から本格的に北アルプスを意識しました。最初は、薬師岳のような、穏やかな山を狙いました。
しかし、どうせ登るなら、若き頃庭のように駆け回った剱岳に登りたい。
危険な山であり、困難が予想されました。こんな身体で向かうのは、余りにも無謀ではないだろうか。自問自答の日々もありました。
それに対応するにはどうすれば良いか。
トレーニングしかありません。比良山系武奈ケ岳の基礎登山に始まり、富士山剣ケ峰にての高度順応。上高地まで乗り換えで30kgボッカもしました。
開腹による腹筋断裂と入院生活での筋力低下が懸念されましたので、日々の筋トレもかかしませんでした。
それらの成果が今日の登頂成功要因だと思われますが、それ以外に重大な理由があります。
それは、色々な方々の有形無形の応援、叱咤激励、御心配などです。それらがどれほど力になった事か。
このヤマレコの皆様にも、心より感謝と御礼を申し上げます。
いま、様々な心身の病や怪我で苦しまれている方。
そうでなくても、職場や家庭の事情で悩んでいる方。
悩む事も時には必要ですが、落胆しないでください。
明けない夜は無いのです。夢を描いて、努力すれば必ず叶います。
幸い、このヤマレコの皆様には、「山」という素晴らしきライフワークがあるじゃないですか。
山は、時には厳しいけれど、いつも暖かくあなたを見守ってくれています。
私も少し頑張ったので、山の神様とお日様がご褒美を下さいました。朝からのガスで隠れていた剱岳が、登頂する頃にはすっかり晴れ渡ったのです。
また、11時間歩いて少し疲れた時も、再度快晴になり、ベースキャンプまでの道を照らし出してくれたのです。
下りの雷鳥坂では、富山湾に沈む夕陽を浴びて、立山連峰を見事に真紅に染めてくれたのです。
特定の宗教を持ち合わせていない私ですが、思わずその神々しさに手を合わせました。
14時間もかかりましたが、今私は元気です。冷静な判断力も残っていました。
このような人生最良の日を与えていただいた、すべての皆様に厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。
おめでとうございます。
目標に向かって日々鍛錬されているお姿に敬服いたします。
farineさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
数多く有る山の中で、剱岳一般ルート登頂など、取るに足らない事かもしれません。
しかし、今の私にとっては剱岳こそマッターホルンであり、チョモランマなのです。
まだ登頂の余韻で興奮しているのか、眠たくありません。明日は完全休養日なので、ボーッと空を見ていたら、剱岳方向で雷鳴が轟いています。
雷鳥平は少し冷えてきましたが、ウルトラライトダウンを着たので温ぬくです(^-^)/
sekitoriさん はじめまして
私の父も先日、sekitoriさんと同じ病気で大腸とリンパ節を切除しました。
本人の落胆ぶりはひどく、生きる上でのモチベーションをすべてなくしてしまったかのようでした。
今日、sekitoriさんの日記を読んで、こうして剱岳という日本最難関の山に登られて方もいるんだよということを話してあげたいと思います。
どんなにか励みになると思います。どうもありがとうございました。
sekitori様、はじめまして
私の妹も先日来、別のがんで抗癌剤治療を受けています。
早速、この素晴らしい日記を教えます、ありがとうございます。
sakura0725さん、1955さん、コメントありがとうございました。予備バッテリーが乏しくなってきましたので、まとめレス失礼します。
まず、お二方のご家族に、心よりお見舞い申し上げます。
同病相哀れむではありませんが、その心痛が痛い程わかりますので、一日も早く全快される事をお祈りいたします。
しかし、私のやり方はレアなケースかもしれません。各個人で病状や基礎体力は違いますし、心が弱い方もいらっしゃるでしょう。
がんで鬱になられる方も多数いらっしゃると聞いております。
言われなくとも皆様頑張っていらっしゃると思います。
くれぐれも、こんな人もいるんだから、もっと頑張れとは言わないであげて下さい。
すべてのがん患者とそのご家族に、幸せが訪れますよう、切望いたします。
本当に感動しました。
私は弱い人間ですので、すぐにくじけそうになります。
少しでもsekitoriさんのたくましさを見習いたいと思います。
DSAさん、まいどです。コメントありがとうございます。
強そうに見せてるだけで、私も弱い人間ですよ。
死の恐怖に打ち勝ち、安らかな最期を迎えるために修行しているだけです。
まだまだやりたい事がそれこそ山のように有りますので、簡単には死にませんけどね。特に、山では(^^)
昔から、「殺しても死なんやつ」と嘲笑されまくってましたので、それを実行していきます(^^;;
ただただ「おめでとうございます」と申し上げたいです。
yamaseiさん、こんばんは。コメントとねぎらいありがとうございます。
昨日はただ無事にテントへ帰り着く事に集中し、登頂の実感が湧きませんでしたが、今日一日中テン場でのんびりして喜びが湧出してきました。
あと三日もしたら、暑い大阪に帰らねばなりません。
北海道はいかがですか?
北アルプスは今日の雨で空気が入れ替わり、寒くなりました。いまテント内なのにウルトラライトダウンとゴアのクライミングジャケットで丁度良いです。
sekitoriさんこんばんは。
ご経験から当然の結果だとは思いますが、再び山頂に立つ夢を追い求められた姿勢、敬服いたします。
只…写真がないのが残念でなりません
sekitoriさんの更新を楽しみにしている多くの皆様も同じ思いかと。。。期待しております
無理せず、安全に写真を持って帰ってきてください
登頂おめでとうございます。
これまでのトレーニングはすごいですね。
私は、初のアルプスで登りの辛さと、こんなにも体力のない自分にショックでへこんでいました。
今までのsekitoriさんの努力を読んで、恥ずかしい気持ちです。
アルプスから帰って、母の病状が少し悪くなっていたのもショックで、
この事の方が辛くて、山を続ける気持ちが折れそうなのも事実です。
何にしても、『続ける事』は大変ですね。
無事のお帰えりを待ってます。
inakabusさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
確かに、剱岳には過去バリエーションからも含めて10回くらい登っているのですが、あの山の危険性を知っているだけに登頂確率は50%くらいだと思っていました。
ただ、ルートを知っているのは強く、ペース配分の点、落石や強風の通り道で休憩しないなど、タクティクスが組みやすかったです。
北斗七星の写真も撮りましたよ(^^)
また観てくださいね。
モモさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
まずは、初の中部山岳登頂おめでとうございます。
私は、上記のトレーニングの他に、出発直前調整として芦屋から有馬温泉へのしゃく熱の六甲山越えを挙行しました。
その暑さで心肺を鍛え抜いたのと、岩場で軽いロッククライミングのおさらいをしたのが大きかったです。
モモさん、焦らないで段階を経ましょうね。
お母様の事が有り、頻繁に山に向かう事は厳しいでしょうが、少しの間を見つけて筋トレや心肺アップはできます。
私は、八階にある自宅まで階段で上り下りしています。これだけでも違います。
一万尺も一歩から、ですよ。頑張ってくださいね。
お母様にお見舞い申し上げます。患者家族ともにお疲れがでませんように。
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